写真展『チベット、十字架に祈る』…共存する「マイノリティーの中のマイノリティー」を紹介

Record China    2020年9月20日(日) 16時10分

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東京と大阪で10月末から12月初旬にかけて、写真展『チベット、十字架に祈る』が開催される。「マイノリティーの中のマイノリティー」を知ることが出来る貴重な機会だ。

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あなたは「チベットの人々」と聞いて、どのようなイメージを持たれるだろうか。たいていの人は「敬虔(けいけん)な仏教徒」を思い浮かべるのではなかろうか。もちろん、チベットの人々の多くは仏教を信じ続けてきた。ただし、いかなる民族でも、その実態は多様だ。民族や社会とはどのようなものかと、改めて考えさせられる写真展が開催されることになった。

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『チベット、十字架に祈る』だ。撮影場所は雲南省デチェン・チベット族自治州徳欽県内の茨中村。「雲南省にチベット族?」と思われる方がいらっしゃるかもしれないので、簡単にご説明しよう。

中国は、人口の9割以上を占める漢族以外の55の民族を「少数民族」として認めている。うち、モンゴル、ウイグル、回、チベット、チワンの5民族についてはそれぞれ、「省」と同格の「民族自治区」を設けている。

ただし、該当する少数民族が集まって居住するのは「自治区内」だけではない。そのため、自治区外の省内にも、必要に応じて自治州や自治県を設けている。チベット族の場合には、青海省、甘粛省、四川省、雲南省に自治州や自治県が存在する。この4省のチベット人口の合計は、チベット自治区のチベット人口よりも、若干ではあるが多いとされる。

さて、写真展『チベット、十字架に祈る』についてだが、撮影者の栗田哲男さんに話を伺うことができた。まず、テーマとしたチベット族のキリスト教徒だが、その存在は十数年前の旅行で偶然に知った。少数民族であるチベット族だが、その中でもさらに少数者と言える存在があることに関心を持ったという。

世界各地から「宗教が原因で住民が対立」というきな臭い情報が流れてくる。しかし栗田さんによると、茨中村の状況は全く違う。例えば、クリスマスケーキを食べる際に、仏教徒も集まって一緒に食べたりするそうだ。また、仏教徒の誰かが亡くなれば、仏教式に葬儀をするかたわらでキリスト教徒が食事を作るとの話も聞いたという。キリスト教徒が亡くなった場合にはその逆。葬儀という宗教の影響を強く受ける場合にも、仏教徒とキリスト教徒が互いに尊重しあい協力し合っているわけだ。

栗田さんによると、この写真展の開催を通じて日本人に特に伝えたかったことは、「マイノリティーの中のマイノリティー」が存在することだ。チベットというとチベット仏教を思い浮かべることまでは問題ないだろうが、「チベット=仏教」と考えてしまうのは固定観念であり、その固定観念に埋没している人々が存在することを知ってほしいという。

さまざまな民族の伝統文化や習慣を知ろうと考えて情報を集めれば、だいたいのことは分かってくる。ネットが発達した現代では、それほど手間もかからないだろう。ただ、現地に足を運んで自分自身でさまざまなことを見聞きすれば、ネットや紙から得た情報が「それだけではなかった」ことに気づくものだ。

さらに、現地に運んで経験を積めば積むほど、それまでに現地で知った知識すら「それだけではなかった」と改めて感じたり「見ていたはずなのに見えていなかった」ことに気づいたりする。中国の“奥地”に足を何度も運ぶことは、やはり容易ではない。この写真展は、「現地の現実」を分かりやすく伝えてくれる、貴重な機会と言ってよいだろう。

ちなみに栗田さんは現在、雲南省に暮らす民族全般に興味があるという。特にタイ族、ハニ族などの民族の場合、民族としてのくくりのさらに下のグループである支系が多く、それぞれ民族衣装や風俗習慣に違いがあるので、強い関心を寄せているという。

民族としての分類の、さらにその内部にあるグループの存在に関心を寄せていることには、キリスト教徒のチベット族に関心を持ったことと同様の理由があるようだ。

栗田さんは辺境写真家として、さまざまな場所を旅している。「知らないことは、時に偏見を生む。知ることで相互理解が深まる」が信条であり、なにより重視していることは現地の人々とのコミュニケーションだ。やや意外だったが、栗田さんは「撮影するためにコミュニケーションするのではない」と断言した。求めているのはコミュニケーションなのであって、その結果として撮影できる場合もあるし、撮影には結びつかないこともある。それが、栗田さんの流儀なのだという。

もちろん、撮影された写真の美しさには、心を打たれる。しかしその背後には、栗田さんのしっかりとした考え方があり、その考え方に従って行動してきたことによって生まれた作品だ。そのようなタイプの活動をよく「理念先行型」と言うが、固定観念にとらわれることを警戒する栗田さんを、こんな「頭でっかち」の言葉で形容するのは不適切かもしれない。敢えて言えば「心意気先行型」の活動と言うべきだろうか。その成果の一つが『チベット、十字架に祈る』というわけだ。

開催期間は東京会場では10月29日から11月4日まで、大阪会場は12月3日から12月9日まで。詳しくは、ネットなどで検索していただきたい。(如月隼人

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