日本僑報社 2015年10月28日(水) 8時55分
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日本と中国の間には近年、取り除くことが容易でない「壁」が存在してきた。吉林大学外語学院の付暁莚さんは、そうした「壁」について作文につづっている。
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先日、日本の言論NPOと中国国際出版集団が共同で行った調査で、日本と中国の互いに対する印象が若干改善したことがわかった。前向きな結果ではあるが、日本と中国の間には近年、取り除くことが容易でない「壁」が存在してきたことも事実である。吉林大学外語学院の付暁莚さんは、そうした「壁」について作文に次のようにつづっている。
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「そんなに日本に行きたいなら、さっさと行けよ!」「はい、私、日本に行きます。真実の日本と日本人をこの目で見に行きます。帰った時、日本ではこんな所に行った、こんなものに感動した、こんな優しい日本人と出会ったなど、ありのままの日本をすべてあなたたちに見せたい、伝えたいのです」。今の私なら、きっとそのタクシーの運転手にそう言うだろう。でもその時、私は何も言えなくなってしまった。
ある日の夕方、タクシーで学校に戻ろうとした時のことだ。「あの、吉林大学までお願いします」「吉林大学か。俺の子どもも同じ大学だよ。君、何を専攻してるの?」。運転手は親切に話しかけてくれた。「私、外国語を勉強しているんです」「すごいね。英語がぺらぺら話せるって」「いえ、英語ではなくて、日本語を専攻しているんです」「えっ、日本語!…今の若者ってさぁ、愛国心なんて少しも持ってないの?そんなに日本に行きたいなら、さっさと行けよ!」。運転手はやや怒ったように言った。
車の中の空気は急に冷え切ってしまった。中国では「日本は嫌い」という感情を持っている人が今でもたくさんいる。その運転手がその一人だからといって、私は怒るわけにもいかず、黙って聞き流すことしかできなかった。「でも、なぜ私は日本語を選んだのだろう?」と、自分でもそう思うようになった。あの時、私は中国人の間に日本に対する壁が確かに存在していると強く感じた。
私は日本人の友達にその話をしてしまった。「大学に入る時はさ、通訳者の姿を見て、『格好いいな』と思って日本語を選んだの。でも、こんなふうに言われるなんて、ぜんぜん格好良くないよ。なんか頑張っていく気がなくなっちゃった」。すると彼女はこう言った。「私たち初めて知り合った時のこと、覚えてる?あの時の私は中国に来たばかりで、道に迷っちゃったんだよね。その時、日本語の本を持っている付さんを見かけて、この人、日本人のことが嫌いじゃないかもしれないと思って聞きに行ったの。そうしたら、付さんが『こんにちは』とあいさつしてくれて、どんなにうれしかったか。駅まで連れて行ってくれたり、到着駅の名前を丁寧に教えてくれたり…あの時、私、うれしくてうれしくて家に国際電話をかけたのよ。『お母さん、私、中国人の友達ができたよ!』って」。
彼女の話を聞いて、あのときの情景が目の前に浮かんできた。別れる時、彼女がわざわざ中国語で「謝謝」と言ってくれて本当にうれしかった。その後も、「迷わずに行けたかな?」とか、「ちゃんと駅の名前を覚えてくれたかな?」と、私はずっと心配していた。そうして、私たちは友達になった。それから、二人で綿のような雪を見たり、おいしいものを食べたりして、いろいろな楽しい思い出を作った。
日本に帰る日、彼女がこう言った。「帰ったらね、ずっと心に残っている付さんのこと、出会った中国人の一人一人の温かい笑顔など、私の見た、聞いた、感じたすべてのものを日本人に伝えたいの」。彼女の言葉を聞いて、私は胸がすっきりした。なぜ日本語を勉強しているのか、日本語学習者の私にできる日中友好とは何か、長い間悩んでいたことがやっと分かったような気がした。
将来、私は立派な政治家や外交官にはなれないかもしれない。でも、彼女と同じように、もっともっと多くの中国人に「ありのままの日本」を伝えたいのだ。小さいことでもいい、自分が知っている真実の日本の姿を中国人に知ってもらいたい。そして、同じように、日本人にも真実の中国の姿を知ってもらいたい。それを積み重ねていけば、壁が少しでも取り除けると、私は信じている。(編集/北田)
※本文は、第二回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「壁を取り除きたい」(段躍中編、日本僑報社、2006年)より、付暁莚さん(吉林大学外語学院)の作品「壁を取り除きたい」を編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。
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日本僑報社
2015/9/13
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