<東アジア新時代(5)>IT分野で高まる中国企業の存在感、韓国・台湾勢とマーケット争奪戦―日本企業、「爆投資」に圧倒される?

八牧浩行    2016年1月4日(月) 8時0分

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米フォーチュン「グローバル500企業」2015年版で、日本以外のアジア企業が136社を占めた。中国企業は98社と全体の5分の1を占めたほか、韓国、台湾企業多数が500社に入った。写真は「CEATEC2015」会場風景(千葉・幕張メッセ)。

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米フォーチュン誌恒例の「グローバル500企業」(売上高ランキング)。2015年版では日本以外のアジア企業が136社を占めた。中国企業は3位の中国石油化工集団をはじめトップ10に3社がランクイン。98社と全体の5分の1を占めたほか、韓国、台湾企業も13位のサムスン電子をはじめ多くが500社に入った。インドのアルセロール・ミタルは鉄鋼の世界首位に。台湾の鴻海精密工業は電子機器受託生産の世界最大手に躍り出た。

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一方、日本企業は54社にとどまり、トップ10入りは9位のトヨタ自動車だけ。1995年の「グローバル500企業」には日本企業が148社も入っており、日本以外のアジア企業はわずか14社にすぎなかったから、この20年間の日本企業の凋落ぶりが目立つ。

◆目立つ台湾、中国、韓国、香港メーカー

15年10月に、幕張メッセ(千葉市)で開催されたアジア最大級の家電・IT(情報技術)見本市「CEATEC(シーテック)JAPAN2015」。出展各社はスマートフォン、高品質液晶から液体水素自動車、ロボットまで最先端技術を競っていた。20の国と地域の531社・団体が先端技術や新製品を披露した。

小型無人機「ドローン」で世界最大シェアを占める中国メーカーDJIは最新鋭機を出展していた。中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)は、最新スマートフォン端末の新機種などを派手にアピール。シーテックには4回目の出展だが、パナソニック、富士通、シャープ、NECなど日本の有力企業が隣接する中心エリアに、これら有力各社と同等のスペースを使用して技術力をアピールしていた。

中国に本拠地を持つ液晶ディスプレーメーカーのBOEジャパンは8K4Kでは世界最大級となる110インチディスプレイなどを出展していた。外国勢(約150社)の大半はアジアの国と地域。特に台湾、中国、韓国、香港など東アジアの企業が目立った。毎年取材しているが、東アジアのメーカーの存在感は高まるばかりだ。

華為技術の発表によると、15年12月28日に全世界での出荷台数が同年に1億台を超えた。年間出荷台数を億の大台に乗せたのはサムスン、アップルに次いで史上3社目という。最大のスマートフォン市場である中国では創業5年目の小米技研、老舗レノボらと激しくトップの座を争っている。

今から5年半前の2010年6月1日、中国アリババ集団のネット通販同国最大手、淘宝網(タオバオ)と日本ポータルサイト最大手のヤフージャパンは、両社のサイトを接続して日中間で商品を相互に購入できるインターネット通販サイトを創設。アリババ集団の馬雲ジャック・マー)会長とヤフーの孫正義会長が東京都内のホテルで共同記者会見した。孫会長は「日本と中国の経済規模は2020年には米国やEU(欧州連合)を抜いて世界一の規模となる。一つの経済圏として協力すれば発展する」と強調。マー会長も「タオバオとヤフーが組めば両社が利益を享受できる。中日両国の中小企業に進出の機会を提供したい」と語っていた。

筆者はこの会見を取材したが、マー会長はもの静かな印象で、その時はアリババが短期間に急成長して過去最大のIPO(株式公開)を演じることになるとは思いもよらなかったが、 14年9月、アリババ集団が米ニューヨーク証券取引所に上場。新規株式公開で調達した資金はざっと250億ドル(約3兆円)に達し、アリババ株の32%を保有するソフトバンクも追い風を受け、孫正義社長の総資産は166億ドル(約2兆円)となり、日本一の富豪に躍り出た。

◆有機EL投資など先端分野でもキャッチアップへ

中国では2000年代前半から長らく、富豪ランキングトップ10には不動産業界の大物たちが顔を並べてきた。しかし、保有資産1000億円以上の富豪ランキングにIT業界の実業家たちが続々登場し、最近その半数に達した。

アリババ集団、検索エンジン大手のバイドゥ、メッセージアプリのテンセントがインターネット御三家といわれ、この3社の時価総額は50兆円以上に達する。優秀な人材が付加価値の高いビジネス展開が可能なIT業界へ、旧来の産業から大きくシフト。中国内のベンチャー企業は2万社以上に達し、これらを支える投資機関は約1000社に上るが、さらに拡大する一方というから驚く。

 IT業界筋によると、大画面テレビを含めた大型液晶の領域では、中国は技術的にも日本、韓国、台湾と同等の力を付けてきた。まだ遅れている中小型ディスプレーの領域でも肉薄しつつあり有機EL投資など先端分野でも、キャッチアップは時間の問題とみられる。中国では、液晶パネルでは今後3年間で7カ所もの最新鋭工場が稼働する。半導体でも巨大メモリー工場の建設計画が浮上。「爆投資」によって世界のデジタル産業をのみ込もうとしている。

激しい競争は、価格下落とサービス向上につながるため、消費者の立場としては歓迎すべきことだ。しかし、シャープや東芝の“苦境”に象徴されるように、かつてこの分野で独壇場だった日本メーカーが、大量生産・安値競争の中で、精彩を欠いているのも事実である。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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