八牧浩行 2016年6月25日(土) 6時10分
拡大
24日、来日中の呉士存・中国南海研究院院長、于鉄軍・北京大学国際戦略研究院副院長、張新軍・清華大学法学院副教授が日本記者クラブで会見。3人は海洋法問題の専門家で、南シナ海を巡る問題について見解を表明した。写真は会見の模様。
2016年6月24日、来日中の呉士存・中国南海研究院院長、于鉄軍・北京大学国際戦略研究院副院長、張新軍・清華大学法学院副教授が日本記者クラブで会見した。海洋法問題の専門家で、南シナ海を巡る問題について見解を表明した。中国の軍艦が尖閣諸島周辺の接続水域を航行したことについて、「ロシア艦船、日本艦船が接続水域に入ったので中国軍艦はこれに対応しただけ」と指摘。中国艦船がトカラ列島周辺を航行したことについても、米国が解釈している方法と同じで「全く問題がない」と繰り返した。また(1)南シナ海での中国による防空識別圏設定は考えられないい(2)海洋法条約を脱退することもない―などと語った。発言要旨は次の通り。
<呉院長>
南シナ海問題は2009年からエスカレートしたが、主な原因は(1)米国の「アジア太平洋りバランス政策」(2)中国の台頭と強大化が他の係争国の非合法的占拠の強化を引き起したこと(3)紛争当時者の焦点が「島・岩礁争い」から「海域争い」へ移った(4)同海域の今後のルールと体制づくりでの駆け引き―などだ。
中国の南シナ海政策は、「平和と安定」の維持、航行の安全と自由の維持、主権主張国との直接対話と協議による紛争解決、領有権争いの棚上げと共同資源開発などを基本としている。
この線に沿って、中国は2002年に、ASEAN10カ国と「南シナ海関係方面行動宣言」(DOC)に署名しており、現在「南シナ海行動原則」の協議が行われている。南沙の島・岩礁での建設は主として平和利用であり、国際社会への公共財の提供を約束している。
国連海洋条約からの脱退は慎重に決断すべきもの。この条約は中国が最初から関わり貢献している。国内の法的な手続きもあるので複雑で、条約からの脱退は考えていない。海洋法条約契約国としての地位を保持していく。発展途上国として1972年に中国は国連に復帰した。条約にとどまって調和のとれた海洋の秩序を守っていく。
2013年に東シナ海に防空識別圏を発表した。南シナ海でも発表するのではと推測もある。防空識別圏設定は国の主権の範囲内のことであり、1950年代に、米国が最初に設定、アジアでは日本、韓国、台湾が発表している。国際法の制約は受けておらず、特定のルールも規則もない。中国は南シナ海で識別圏を実施する権利は保持しているが、区域のセキュリティを巡る情勢や南からの空中の脅威をどう判断するかによる。
現在、南側区域でみると、主にアジアの小規模の国が存在する。軍事基地や施設を配備し、中国をターゲットとしている面もあるが、防空識別圏を設定する程の脅威は感じていない。
技術的な難題にも中国は直面している。中国は南シナ海では、海南島周辺で領海の規制をしているだけだ。南沙諸島は領海の設定をしていない。防空識別圏の設定は必要ないと考えている。
<于副院長>
中国の軍艦が釣魚島(尖閣諸島)周辺の接続区域に入ったと日本で報道された。日本はこれまでの経緯を無視をして中国に対する脅威を焚き付けている。日本政府は未明に駐日大使を呼び出し抗議しているが、実際はロシア軍艦、日本軍艦が接続水域に入ったので中国軍艦はこれに対応しただけだ。中国は主権を保持しているから入る権利があるが、日本の軍艦が先に入った。
<張副教授>
トカラ海峡の条約上の規定は、「公海」と「通路」。6月20日付朝日新聞で、日本の国際法学者のお真山全先生が「中国がこの海峡を回遊したのは違法ではない」と言っていたが、中国の解釈は米国の解釈と同じだ。米国の解釈は「国際解釈」と考えていいのではないか。中国は一般的かつ常識的な解釈に基づいてトカラ海峡を通過した。(八牧浩行)
■筆者プロフィール:八牧浩行
1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。
この記事のコメントを見る
Record China
2016/6/23
2016/6/22
ピックアップ
we`re
RecordChina
お問い合わせ
Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら
業務提携
Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら
この記事のコメントを見る