「天皇ともあろう人がなんか不思議…」=日本人留学生が教えてくれたこと―中国人学生

日本僑報社    2016年7月16日(土) 7時50分

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日本人と中国人は、さまざまな問題から互いに対する感情が芳しくない状態が続いているが、両者を結ぶきっかけさえあれば、その関係は好転するに違いない。そう考える雷雲恵さんは、日本人留学生と心を通わせた時のことを作文につづった。資料写真。

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日本人と中国人は、さまざまな問題から互いに対する感情が芳しくない状態が続いているが、両者を結ぶきっかけさえあれば、その関係は好転するに違いない。そう考える東北大学秦皇島分校の雷雲恵さんは、和歌をきっかけに日本人留学生と心を通わせた時のことを次のように作文につづっている。

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「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ」

葉書の真ん中に美しく書かれてある歌。彼女からの葉書だ。「今は別れていても再び会おう」という情熱的な恋の歌だ。

彼女と別れて、もう1年が経つが、あの日々はいつまでも忘れることはない。北京の大学合同日本語研修プログラムに参加した時のことだ。ここには日本人留学生も来ていた。クラスに日本人の友達はいたが、親友と呼べるほどにはなれなかった。心の奥底にある不自然な感覚が、もっと親しくなりたいと願う気持ちとぶつかっていた。そんな時、たまたま和歌が好きな彼女と出会う機会があった。

「君がため 春の野に出でて 若菜摘む わが衣手に 雪は降りつつ」

この和歌は彼女が教えてくれた最初の歌だ。

「平安時代の光孝天皇が、大切な人を思いながら春の若菜を摘んだときの歌なんだよ」

「そうなんだ。でも、天皇ともあろう人が野草を摘むなんて、なんか不思議じゃない?」

「そうかもね。でも、どんなに偉い人でも好きな人への気持ちは同じなんじゃないかな。特に、春の若菜は邪気をはらってくれると考えられてたから、大切な人への気持ちが伝わってくるよね」

「うん、確かに伝わる」

「それに、このころの天皇は、みんなが順風満帆ではなかったから、不遇な時代を忘れないための質素な生活をしていたという背景もあるみたいよ」

たった31文字なのに、彼女の説明のおかげで、まるで目の前にあるシーンのように感じられた。言葉の優雅な美しさと野原に降る白い雪の趣は、歌人の純粋で優しい心と重なり、ひしひしと心に響いてきた。

雨が上がり、空が晴れ、夕日の光でだんだんと私たちの影が長く伸びていった。彼女と親しくなっているという実感を自然に感じて受け入れていることに気づいた。心が揺さぶられるような感動を覚えた。私は毎日、彼女と和歌の世界を漫遊する時間を楽しんでいた。

プログラムが終わり、彼女が駅まで送ってくれた。駅までの途中ずっと、私の手をしっかりと握りしめてくれていた。駅の前に着き、「学校に戻っても、和歌のことも、私のことも忘れないでね!」と彼女が言った。こぼれそうな涙が光の中でキラキラしていた。手から心に伝わる温かさがお互いの心を繋いでいた。国も文化も違う2人が和歌の橋を渡り、気心の知れた友人になった。不思議な導きを感じた。

歴史や社会の影響を受け、私たち中国人は日本人と接触するとき、不自然な感覚を抱かずにはいられない。日中両国はもう永遠に友人に戻れないと思う人も多いだろう。しかし、それは違うと彼女が私に教えてくれた。最初の不自然さも、あるきっかけによって自然に薄れて行く。彼女と私のきっかけは和歌だった。純粋に和歌が好きな2人の心は国境を越えて、重なり合い、わかり合うことができた。そんなことを思い出していると、葉書の和歌がまた目に留まった。この歌は私たちが一番好きな和歌だった。

「ただの恋の歌じゃなくて何かを伝えようとしている」。そんな直感が私にひらめいた。彼女が冬休みに教えてくれた見立てをふと思い出したからだ。「今は日中関係が悪くて岩に割かれた状態だが、それでも別れた水が再び出会うように、私たちも両国の情勢に関係なくまた会いたい」。冬休みに2人の絆が深まったように、もっと多くの日中の青年たちも交流することで絆を深めていける。友好の流れが合わさる日は必ず来る。(編集/北田

※本文は、第十一回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「なんでそうなるの?中国の若者は日本のココが理解できない」(段躍中編、日本僑報社、2015年)より、雷雲恵さん(東北大学秦皇島分校)の作品「和歌で結びついた絆」を編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。

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