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<コラム>30代は“弱冠”か?=中国から伝わった2つの“じゃっかん”の正しい使い方

岡田 郁富    2016年8月6日(土) 20時20分

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「弱冠18歳の選手が…」とか「弱冠22歳の若者が…」等の活字や言葉を新聞、雑誌、放送等で見たり、耳にすることがある。写真は日本の書籍。

今年(2016年)、日本では選挙権年齢が20歳以上から18歳以上に引き下げられ、選挙が実施された。18歳、19歳の若者にとっては一応一人前待遇となり、嬉しい様な、反面責任感を持たされる様な複雑な気持ちであろう。しかし、選挙権と言う権利の取得と引き換えの義務は必ずしも負ってはおらず、正真正銘の“一人前”、“成人”はやはり20歳から、ということの様である。

「弱冠18歳の選手が…」とか「弱冠22歳の若者が…」等の活字や言葉を新聞、雑誌、放送等で見たり、耳にすることがある。これらは一般の人々に、特に違和感もなく受け入れられている。しかし、先日ある作家が「弱冠37歳」と記しているのを見かけた。 30歳前ならともかく、30歳をすぎてのこれはいくら何でも頂けないのではなかろうか。

中国の古典「礼記」曲礼上篇には、古代中国上層階級男子の生涯の年齢に関しての記述がなされている。「人、生を受けて十年を“幼”と言い、学ぶ。二十を“弱”と言い、冠す。三十を“壮”と言う、室あり…」とある。即ち、20歳を“弱”と呼び、冠を被る(成人の証か)という意味である。ここから、弱冠という言葉が生まれた。従い、“弱冠”は単なる若年という意味ではなく、20歳限定である。もっとも、言葉やその意味は常に変転するものであり、“弱冠”も今では“20歳前後”でとらえられる様に一般化した、と言ってもよいだろう。しかし、なぜ文筆を生業とする作家までもが「弱冠37歳」という表現をする程になったのであろうか。

日本には、これまた中国より伝わったであろう“若干”という言葉があり、未定の数や“いくらかの”といった意味が転じて、“わずか”とか“少しの”といった意味で使用されることがある。この“弱冠”も“若干”も日本語の発音は“じゃっかん”で同じであり、若干には“若”の字が有ることもあり、これらが一部混同される様になり、“弱冠”も誤解され、“わずか”的な、或いは若いといった意味あいをもって使用されることになったと考えられる。これらから、「弱冠」は若さを強調する形容詞的な使われ方をする様になったのかも知れない。時には、「若冠」という合体語(?)の様なものすら見られることもある。いずれも誤解である。

ちなみに、30歳は上記の如く「壮室」となるが、40歳は「強仕の年」とあり、37歳となれば、さしずめ「強壮の年」とでも称すべきか。勿論、そんな用語はない。但し、男子の30、40歳は正に強壮の年齢ではあろう。

尚、上記典礼上篇には続きがある。「八十、九十をモウ(老の下に毛)という。七年を悼(とう)といい、悼とモウとは罪有りといえども刑を加えず…」とある。7歳以下の子や80歳、90歳の老人は罪があっても罰せられない、ということである。昨今の日本や中国の80歳、90歳は結構皆元気で“悪さ”も少なくないのだが、こんな法があれば、さてさて…。

■筆者プロフィール:岡田郁富

長年日本の大手総合商社にて中国ビジネスに携わり、機械、プラント類の輸出をはじめ中国現法の責任者として数多くの対中投資案件を手掛け、商社退職後は主として中小企業向けに中国ビジネスアドバイザーを務める。ビジネスでの往来や長期滞在等を含め50年程に渡り中国関連に係り、豊富な経験を持つ。

■筆者プロフィール:岡田 郁富

大阪出身、大阪外国語大学卒。長年日本の大手総合商社にて中国ビジネスに携わり、機械、プラント類の輸出をはじめ中国現法の責任者として数多くの対中投資案件を手掛け、商社退職後は主として中小企業向けに中国ビジネスアドバイザーを務める。ビジネスでの往来や長期滞在等を含め50年程に渡り中国関連に係り、豊富な経験を持つ。

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