<コラム>“完璧さ”の日本、“資金力”の中国、“ホスピタリティ”のブラジル、果たして何が正解か

浦上 早苗    2016年8月26日(金) 20時10分

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昨冬のリオのカーニバルの時期に、ブラジルとアルゼンチンを半月ほど旅行した。写真はベロ・オリゾンテの空港。筆者撮影。

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昨冬のリオのカーニバルの時期に、ブラジルとアルゼンチンを半月ほど旅行した。航空券もホテルも自分で予約する完全な個人旅行で、サルヴァドールからリオデジャネイロに向かう途中、トランジットでベロ・オリゾンテという都市の空港に数時間滞在した。

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休憩コーナー、ショップ、レストラン、キッズルーム…という案内標識に従ってエスカレーターで2階に上がると、そこには案内標識があるだけで、薄暗くだだっ広い空間が広がっていた。

一体どういうことなのか、現地の友人に尋ねると、「空港の拡張工事が(2014年の)サッカーワールドカップに間に合わなかったので、そのまま放置されている」という答えが返ってきた。

リオのオリンピック前にも「スタジアムの工事が進んでいない」という記事を何度も見た。日本人の目に、この国の人々の職業意識は穴だらけに見える。

出国審査場の係員は、おしゃべりしながらパスポートにスタンプを押し、私の顔も見なかった。空港チェックインカウンターでは長蛇の列ができているにも関わらず、窓口のスタッフは隣のブースのスタッフと手をつなぎながら、空いた方の手で端末を操作していた。日本なら動画がSNSに投稿され、上層部の人たちが謝罪会見を開くレベルだろう。

しかし、ブラジル、特にリオで私はほとんど苦労しなかった。地図を持って立ち止まっていると、必ず誰かが近づいてきて、英語で「どうしたの?」と聞いてくる。サブウェイでも、路線バスの中でも、隣り合わせた人が私に何をしたいかを尋ね、助けてくれる。空港に向かう路線バスでは、若い男性が私に降りるべきターミナルを教えてくれただけでなく、自分が降りる際に運転手にも引き継いでくれていた。

日本では、知らない人に道を尋ねるときには、親切で暇そうな人を見極めないと、無視されかねない。中国では、向こうからニコニコと近寄ってくる人は、よい人でないことが多い。ブラジル人の陽気さと親切さは、旅行者にとって救いだ。

一方、同じくBricsの一員である中国。私が働いていた大学の教室には、天井から大きなテレビがぶら下がっていて、同僚が中国という国を説明する際に、よくこのテレビを例に挙げた。「大きな予算を組んで全部の教室に取り付けたのに、日本語学科では一度も使われていない」私の在職中には、米国の大手IT企業の寄付で先進的な教室ができたが、20人しか座れないその教室に合う講義がなく、ずっと鍵がかかったままだ。教員室には監視カメラが設置されているが、動作している気配はない。大連マラソンには1000人以上のボランティアがいたが、みな座り込んでスマホをいじっており、落とし物の探し方を尋ねても誰も答えられなかった。

ブラジルは、インフラの脆弱さや公務員のいい加減さを、市民の柔軟さ(ホスピタリティ)でカバーしている。中国は、大掛かりなプロジェクトでインフラを作り上げるが、ニーズに合わず野ざらしになっていたり、オペレーション能力の不足で無力化(時には障害にすらなる)されている。

日本はどうか。日本は完全なインフラを作り、ミスなくオペレーションすることに心血を注ぐ。列車がオーバーランしたら報道される。ファックスの送信ミスを防ぐために、2人1組で送信する会社は多い。9月1日の防災訓練のニュースを見るたびに、「いつ起こるか分からない災害のために、こんなに真剣に(けが人役の迫真の演技にいつも見入ってしまう)訓練する国は日本くらいだろうな」と驚嘆する。しかし完璧さを追求するあまり、人が疲弊している場面を見ると、何が正解なのか分からなくなるのである。

■筆者プロフィール:浦上早苗

大卒後、地方新聞社に12年半勤務。国費留学生として中国・大連に留学し、少数民族中心の大学で日本語講師に。並行して、中国語、英語のメディア・ニュース翻訳に従事。日本人役としての映画出演やマナー講師の経験も持つ。

■筆者プロフィール:浦上 早苗

1974年生まれ、福岡市出身。早稲田大学政治経済学部卒業、九州大学大学院経済学府修了。大卒後、地方新聞社に12年半勤務。その後息子を連れ、国費留学生として大連に博士課程留学…するも、修了の見通しが立たず、少数民族中心の大学で日本語講師に。並行して、中国語、英語のニュース翻訳に従事。頼まれて映画に日本人役として出たり、マナー講師をしてみたり、中国人社会の中で、「日本人ならできるだろ」という無茶な依頼に、怒ったりあきれたりしながら付き合っています。マスコミ業界の片隅に身を置いている経験から、日米中のマスから見た中国社会と、私の小さな目から見たそれの違いを少しでもお伝えできれば幸いです。

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