Record China 2008年2月4日(月) 14時9分
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レコードチャイナが配信する「中国発のオリンピック・パラリンピック事情」の第1弾は北京在住の朝倉浩之氏による個人ブログ記事「<点描・北京五輪>朝倉浩之の眼」。1月中の記事を中心とした「特集版」の第1回は「車椅子バスケットボール」。
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レコードチャイナでは、2008年2月以降、現地在住の専門家らが発信している中国発のオリンピック・パラリンピック事情を随時配信する。
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その第1弾として北京在住の日本人ラジオ局パーソナリティ朝倉浩之氏による個人ブログ記事を転載して「<点描・北京五輪>朝倉浩之の眼」としてお送りする。
同氏は、日本の民放テレビ局でスポーツをメインにキャスター、ディレクターとしてニュース・ドキュメンタリー等の制作・取材に携わった後中国に渡り、中国スポーツの取材、執筆を行いつつ、各種ラジオ番組などに出演。「一般中国人とともに暮らす生活者ならでは」という視点に立って、北京における「変化の空気」を織り込みながら、「街」そして「人々」にスポットを当てて情報発信したいと意欲的だ。
まずは、1月中に同ブログに掲載された記事を中心に競技・分野別にまとめた「特集版」のうち第1回「パラリンピックの華・車椅子バスケットボール」をお送りする。「特集版」5回分の終了後は同ブログをほぼリアルタイムで配信する予定。
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■プロフィール:朝倉浩之
奈良県出身。同志社大学卒業後、民放テレビ局に入社。スポーツをメインにキャスター、ディレクターとしてスポーツ・ニュース・ドキュメンタリー等の制作・取材に関わる。現在は中国にわたり、中国スポーツの取材、執筆を行いつつ、北京の「今」をレポートする中国国際放送などの各種ラジオ番組などにも出演している。
■■■■■2008年01月19日 ■■■■■
パラリンピックの華、車椅子バスケのテスト大会開幕
パラリンピックの花形競技の一つ、車椅子バスケットボールの五輪テスト大会が20日から、開幕する。
会場はメインスタジアムの一つ、国家体育館。ちなみにここでは、他に五輪種目の体操、トランポリン、ハンドボールが行われる。
去年5月と6月にオーストラリアで行われたパラリンピック予選で、男女とも本選出場を果たした日本は、今回、女子チームを派遣。20日の対中国戦から始まり、24日の準決勝、25日の決勝もしくは3位決定戦に臨む。
大会には、女子が中国、カナダ、ドイツ、日本。男子が中国、カナダ、オランダ、オーストラリアが出場する。
なお、今年9月に行われるパラリンピックは、男子が12チーム、女子が10チームで争われる。
■■■■■2008年01月20日 ■■■■■
日本、中国に貫録勝ち 五輪テスト大会・車椅子バスケット(現地レポ)
20日、すっきりとした青空の広がる北京で、「車椅子バスケット」の五輪テスト大会が開幕した。
開幕戦は、女子の日本対中国。両チームが対戦するのは2005年アムステルダム(オランダ)で行われたゴールデンカップ以来。このときは、まだまだチームが出来たばかりの中国を大差で破っている。
日本女子はすでにアジア・オセアニア予選を勝ち抜き、9月のパラリンピック出場を決めている。ちなみに、今年の世界選手権(オランダ)は日本女子は8チーム中6位。前回のアテネパラリンピックは5位だった。
今日は週末ということもあって、会場の国家体育館のメインスタンドは6,7割の入りとなった。国家体育館は北京五輪のメインスタジアムのひとつである。
車椅子バスケットという競技は、ご存知でない方も多いだろう。恥ずかしながら、スポーツの取材者の端くれである私も、この競技はほとんど知識がなかった。
パラリンピック競技の一つで、『大会の華』とも言われている人気競技の一つ。下半身の肢体障害を持っている選手達が車椅子に乗ってプレーすること以外は、バスケットボールと何ら変わらない。ルールも車椅子に乗っていることで改良されている一部以外は、ほとんど同じである。
同じくパラリンピック競技の一つ「ゴールボール」は『目が見えないこと』を、ハンデとしてではなく、競技そのものの面白さの要素としていた。この車椅子バスケットもやはりそうだ。
コート上での選手同士の激しいぶつかり合い…選手たちは、見事に車椅子を操り、小刻みに『ステップ』を踏んでいく。車椅子の金具同士がはじきあい、ガチンガチンと音が響く。それが、きびきびとしたかけ声と合わさって、ゲームの緊張感を高めていく…。時折、厳しいチェックでぶつかり合い、車椅子が大きな音を立てて転倒することがある。生身の人間に加えて、車椅子という器具がゲームの要素に加わる…バスケットという名の“格闘技”といってもいいだろう。
車椅子バスケットという名前はついているが、これは一般のバスケットボールとは似て非なるもの。全く異なるスポーツだ。一般のバスケットのようなスピード感はないが、選手同士のぶつかり合いと駆け引きが作り出す緊迫感は、バスケットボール以上といってもいいだろう。特に「ボールがないところでの動き」は迫力満点だ。各選手達が、少しでもいいポジショニングを取ろうと、小刻みに駆け引きを繰り広げる。コート全体を『目を広く』しながら見ると、このスポーツの面白さが、より分かってくる気がする。
さて、日本女子は今年のパラリンピックで決勝トーナメント入り、そして、シドニー五輪以来のメダル確保を目標としている。シドニー以来、チームが大きく若返ったこともあり、国際大会ではなかなか勝てない情況が続いている。全体的に大型の選手がいないため、「パス回しの速さと厳しいディフェンス」をテーマにチームを作ってきた。
一方の中国は、日本に比べると大きな選手がいるものの、それぞれのテクニックはまだまだという感じ。代表チームが始まって2年あまりで、今回のメンバーでは、国際大会に臨むのは初めてというフレッシュな顔ぶれだ。
試合は両チームとも点の取り合いで、接戦となった。日本がわずかにリードしながら、10分の第1クォーターを13−11で終了。選手たちの動きは、門外漢のため、あまり偉そうには分析できないが、やはり初戦ということもあって、ボールがうまく手につかず、落ち着いて回せていない印象があった。
第2クォーターに入って、日本はさらに点差を広げていく。だが、後半に入って中国が盛り返し、スタンドは大いに沸いてくる。結局28−25の日本3点リードで、前半戦を終了した。2005年の日中初顔合わせの時は、大差の試合となったが、中国が着実に力をつけてきていることがよく分かる。大型の選手を生かし、日本のスピードバスケを封じ込めている。そして、自分達のバスケができない日本代表の焦りを産み、流れが中国にやや傾いている…という印象だった。
第3クォーター開始1分あまりで、中国が立て続けにゴールを決めて、一気に逆転。だが、日本も5分過ぎから攻撃に流れが出来て追いつき、その後は、追いつ追われつの接戦となった。
第4クォーターに入って、「本来の日本らしい攻撃(日本代表・岩佐義明監督)」が見えてきた。素早いパス回しから、一気にゴールをつめて得点を奪うパターンが随所に見られ、点差を離していく。結局、62−47で日本が中国を下し、勝利。だが、両チームの差は着実に縮まっている印象だ。
試合後、岩佐監督は「小さい選手が多い中、よく頑張った。まずまずの内容」と振り返った。記者会見では改めて、「メダル獲得が最低限」という目標を語った。今年の本大会の会場である国家体育館で、着実に何かをつかんだ自信の表れだろう。
■■■■■2008年01月20日■■■■■
車椅子バスケ、日本代表が感じた北京
「本当に素晴らしい環境の中で試合が出来た」
パラリンピック「車椅子バスケット」のテスト大会で、開幕戦に臨んだ日本女子の吉田絵里架キャプテン(カクテル)は試合後、さわやかな笑顔でこう語った。
北京五輪のメインスタジアムの一つである国家体育館。10000人以上を収容する大規模な会場だが、180箇所以上のバリアフリー施設が設けられており、日本の設備の整った会場とほとんど変わらず、違和感なくプレーに専念できた。
またチームには、日本語を話せるボランティアが随時、帯同し、運営側とのつなぎ役となった。五輪のアジア・オセアニア予選も含めて、海外での試合はほとんどが英語のみによるコミュニケーションとなることが多いため、様々な行き違いや勘違いが起きることがままあるが、北京入りして、これまでは、非常にスムーズに試合に臨めたという。
ただ『敢えていうならば…』という条件付で、注文もついた。試合会場一面に敷き詰めてある薄手のカーペット。車椅子の走行の際は、衝撃を和らげる役割もあるのだが、このカーペットと一般の廊下部分とのつなぎ目が気になる…と吉田キャプテンは言う。わずか1,2センチの段差。一般の車椅子ならば、楽々越えられるのだが、競技用の車椅子には転倒防止のキャスターがついているため、それが邪魔になって、乗り越えるのに苦労するという。通常の情況では全く問題にならない段差のため、主催者側も気に留めなかったのだろう。障害者スポーツにおいては、よりきめ細かい対応が必要になることを改めて感じさせた。
また、会場をあらかじめ体験できたことで、今後の課題も明らかになった。10000人以上収容の大規模会場…そして、観客の声援で、選手同士の『声の掛け合い』がかき消され、コミュニケーション不足が露わになった。試合中もコーチから「相手の名前を呼んで!コミュニケーションをとって!」という声が頻繁にかけられた。普段ならば、十分に届いている声も、この会場ではそうはいかない。突出したテクニックを持つ選手がおらず、素早いパス回しでゴールを狙うスタイルである日本女子だけに、ここでいかにコミュニケーションを取っていくか、が大きな課題となるだろう。
■■■■■2008年01月21日 ■■■■■
五輪テスト大会・車椅子バスケ、日本女子が2連勝
パラリン車椅子バスケで日本が強豪を圧倒!
21日、北京の国家体育館で行われた五輪テスト大会「グッドラック北京」の車椅子バスケットで、日本女子代表が強豪カナダを52−42で破った。
カナダは2006年世界選手権の3位で世界的にも強豪の一つ。総当りで行われる予選リーグの中では注目のカードの一つとなっていた。
日本は前半から攻撃力が冴え、後半に入っても、その勢いは衰えず、一気に寄り切った。
特に第2クォーターではオフェンス陣がカナダを圧倒し、差を10点差にまで広げた。第4クォーターでカナダの追い上げにあったものの、終了間際に得点を加算し、結局、52−42で勝利した。
日本は昨日の中国戦に続き、2連勝で、予選リーグトップ。2位がドイツ。明日の予選最終日で順位が決定し、24日に準決勝、25日には決勝が行われる。
■■■■■2008年01月23日 ■■■■■
北京大会、最初の組み合わせ抽選会が開催
23日、「パラリンピックの華」ともいわれる車椅子バスケットボールの組み合わせ抽選会が北京市内のホテルで行われた。オリンピック、パラリンピックを通じて、最初の抽選会となる。
男女とも、すでに出場を果たしている日本は、男子がアテネパラリンピックの覇者カナダなどと同じA組。女子が開催国、中国と同じB組となった。
詳細は以下の通り。
男子(12チーム) A組 日本 ドイツ 南アフリカ カナダ スウェーデン イラン
B組 イスラエル ブラジル 中国 米国 英国 オーストラリア
女子(10チーム) A組 英国 米国 オーストラリア ブラジル ドイツ
B組 日本 中国 カナダ メキシコ オランダ
国際大会では2006年7月の世界選手権(オランダ・アムステルダム)で男女ともカナダが優勝。2位にはいずれも米国が入っている。その他、男女オーストラリア、女子のドイツも強豪
日本は、5月から6月にかけて行われたアジア・オセアニア予選で、男子が3位(1位豪州 2位イラン)、女子が2位(1位豪州)に入って、パラリンピック出場を果たした。特に日本女子は2000年のシドニーパラリンピックで銅メダルを獲得しており、今年は最低でもメダル、「シドニー以上を狙いたい」と意気込む。
■■■■■2008年01月23日■■■■■
五輪テスト大会・車椅子バスケ、予選が終了。日本女子は大健闘
パラリンピック競技2つ目のテスト大会となる「車椅子バスケットボール招待戦」の予選リーグが22日終了。予選2日目に強豪カナダを下した日本女子はドイツに次ぐ2位。男子は2006年世界選手権3位のオーストラリアが3連勝で首位に立った。
日本女子は、22日に行われた予選3戦目のドイツ戦で、一時は13点差までリードしたものの、第3クォーターあたりから疲れが見え、じわじわと後退。結局43−48で敗退して、惜しくも金星は逃した。ただドイツ代表のグリニッチ監督も「スピードがあり、ゴール率も高く、序盤は完敗」と舌を巻くほどの日本代表の試合ぶりだった。
プレ大会は23日が休養日。24日に準決勝が行われ、2位の日本は3位のカナダと対戦する。あくまでもプレ大会だが、まだまだ進化の過程にある日本代表は試合経験を積み重ることで、どんどんと強くなっていくはず。まずはカナダを破って、もう一度25日、強いドイツとの決勝に臨み、今年9月に向けて、自信をつけてほしい。
■■■■■2008年01月25日 ■■■■■
五輪テスト大会、日本はパラリン「車椅子バスケ」で大収穫の3位
北京の国家体育館で行われているパラリンピックのテスト大会「車椅子バスケットボール」の最終日、日本は昨日の準決勝でカナダに敗れたため、3位決定戦に回った。
相手は、初戦で下している中国。パラリンピック種目ではまだまだ『発展途上国』の中国だが、最近、育成にも非常に力を入れている。初戦のあと、その成長ぶりに、日本選手が「驚いた」と口を揃えた。
すでに23日にはパラリンピックの組み合わせも決定しており、中国が同組に入ることは決定している。いまや『格下』ともいっていられない中国を相手に、日本が目指すバスケ「スピードバスケ」が展開出来るか…が今回のテーマだ。
今日は出来るだけの選手を試すため、『選手起用の試合(岩佐監督)』と位置づけた試合。選手を積極的に入れ替え、「選手交代で流れを作るベンチワーク(岩佐監督)」にチャレンジした。第1クォーターは、序盤は接戦となったが、後半から得点を重ね、20-13でリードして終えた日本。
第2クォーターに入って、日本の決定率がやや落ちたものの、高さのある中国をかいくぐって、得点を重ねる。一方の中国も生きのいいボール回しを見せた。大型の選手が多い中国に頭から上でボールを回される中、好機を捉えて、すばやいパス回しでゴール前へ展開する日本。テクニックでは日本のほうが上だが、決して大きな差は感じさせないというのが正直なところだ。第2クォーターは31−24で点差は大きく変わらず。
第3クォーターは、日本に元気があった。初戦では、やや「遠慮気味」にプレーしていた選手たちだが、回を追うごとに声が出るようになった。特にベンチが選手と一丸となって声を掛けて作る一体感は、“大人しい”中国サイドを圧倒していると思う。結局、このクォーターは日本が点差を広げ、47−32とした。
最終クォーターは、疲れの見える中国に対し、日本が安定したボール回しを見せた。さらに点差を広げた日本が、61−44で貫禄を見せた。
中国随一の大型体育館で、声を掛け合うコミュニケーションの大切さを改めて感じたという女子日本代表。今年の本大会で、シドニーの銅以上を狙う彼女らにとっては、大きな収穫をもたらしたテスト大会だった。
なお、決勝はカナダが大接戦の末、51−50で勝利し、優勝を果たした。
世界が見えた…車椅子バスケット、女子日本代表
「世界が見えた…」
中国との3位決定戦を終えた高林美香(Brilliant cats)ゲームキャプテンは興奮気味にこう語った。
最高で167センチ、主力選手のほとんどが150センチ〜160センチという小型チーム。大型の選手が並ぶ他国とは体格面で圧倒的な差があった。だからこそ、「激しいディフェンス」と「スピード攻撃」をチームの最大テーマとして強化を続けてきた。そして『全員バスケ』をモットーに、どの選手を起用してもレベルが一定になるようなチーム作りをし、高い壁のような世界の選手と戦うことを目指してきた。
その結果が出たのが、今回のテスト大会。初戦の中国戦を皮切りに、2戦目は世界トップレベルのカナダに見事勝利した。同じく世界トップチームが相手となったドイツ戦は、前半から押し気味に試合を進め、相手を『ヒヤリ』とさせた。準決勝で再度戦ったカナダ戦も敗れはしたものの、自分たちなりの『走るバスケ』が出来た。(高林)
この大会の最大の収穫は『世界のトップが見えた』こと…高林ゲームキャプテンは、自信を持ってこう語る。
「ちびっこ軍団(岩佐代表監督)」に何が出来るのか…自分たちの目指すものが本当に正しいのか、不安になったこともあった。だが、今大会を通じて、世界でもやれることが十分に分かったと高林は言う。
またこの大会、試合を追うごとにベンチからの声が大きくなってきたような気がする。コートにいる選手だけでなく、ベンチに座る選手、監督、スタッフがともに声を出し、一緒に戦う…普段の試合で常にやってきたことを今年の本大会の会場で、のびのびとやれたことが何よりの収穫だろう。
課題は『相手の流れを出来るだけ早く変えられる力をつけること』。岩佐監督はベンチワークで、高林キャプテンはプレーの中で、ともに同じ課題を挙げる。
日本代表は来月半ば、大阪での大会を経て、最終の12人のメンバーを決定する。そしていよいよ9月のパラリンピックへ本格始動。すでに組み合わせも決まり、予選の組み分けは「最高のくじ運(岩佐監督)」でトップ通過も可能なところに入った。
シドニーで銅メダルを獲得して以来、低迷している日本女子の車椅子バスケットボール。目標の最低ラインであるメダル獲得、あるいはそれ以上を目指して…いよいよ彼女たちの大詰めの戦いが始まる。
<注:この文章は筆者の承諾を得て個人ブログから転載したものです>(了)
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