日本僑報社 2016年10月8日(土) 8時50分
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日本人と中国人では贈り物の作法に違いがあると言われるが、心がこもったプレゼントはその物の価値がどうであれ、相手に伝わるものだ。大連外国語大学の孫愛琳さんは、忘れられない日本人からの贈り物についてつづっている。資料写真。
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日本人と中国人では贈り物の作法に違いがあると言われるが、心がこもったプレゼントはその物の価値がどうであれ、相手に伝わるものだ。大連外国語大学の孫愛琳さんは、忘れられない日本人からの贈り物について、作文に次のようにつづっている。
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本棚の上には、一人の日本人女性からもらった日本のカステラの箱がきれいに畳んであります。カステラは日持ちしないので、中身はとっくに食べてしまいましたが、空き箱はどうしても捨てられません。
大学で日本語を専門として選択して以来、日々日本語と付き合って勉強していますが、個人的に日本人とマンツーマンで話すことは、ほとんどありませんでした。ところが、3年生になった私は、先輩のおかげで中国語教室で教えるための面接を受ける機会に恵まれました。これはずっと学校にいるだけの私にとって、未知の挑戦です。学校で日本人の先生と交流した経験はあるものの、知り合いではない日本人に中国語を教えることに、全く自信がありません。1カ月間実習した後、面接を受け、テスト授業を始めました。最初の2カ月は、ハラハラ、ドキドキの連続でしたが、その後はやっと正しい軌道に乗りました。
春節になり、中国人の先生たちの多くが故郷に帰りました。大連が地元である私が代講教師として、ご家族で大連に来た日本人の主婦に中国語を教えることになりました。毎週2回、奥さんが住んでいるマンションに行き、授業をします。とても親切な方で、ずいぶん年下の私に対しても「先生」と呼んでくれます。中国語に対して学習意欲が旺盛で、毎回授業ではいろいろな質問が出てきて、初めのうちは答えられないこともありました。質問に答えるために、授業の事前準備はもちろん、自分で作ったプリントも時々持って行きます。電車とバスを乗り継いでの片道2時間は決して楽ではありませんが、この方の中国語を理解した満足気な顔を見る時が、何よりも嬉しいです。授業中、この方の日記を読み、不自然なところを直すことも毎回の作業の一環で、中国語授業の準備も、だんだんと日課の一部分になりつつありました。
光陰矢のごとしで、2カ月が過ぎ、離れがたい気持ちでしたが、学校に戻る時が来ました。私は記念として、また励ましのため、密かにノートを用意して、心からの言葉を彼女のために巻頭のページに書きました。最後の授業が終わった後、ノートを手渡しました。巻頭を見た彼女のほおに涙が伝わっていました。私もこらえきれず涙がこぼれました。しかも、びっくりさせられたのは、涙だけでなく、奥さんが用意してくれたプレゼント。今、私の手もとに空箱がある「カステラ」です。春節を利用して、久しぶりに日本に帰った奥さんは、日本に滞在中、私のことを気にかけてくれたのでしょう。中国に戻った時、私に箱入りのカステラをさり気なく差し出しました。その箱には、デコレーションが施してあり、箱を見るだけで楽しくなります。その箱の中には美味しいカステラだけではなく、この方の感謝の気持ちが込められている気がして、カステラを食べていても感謝の気持ちを噛みしめている心境でした。
教科書には、「日本人は冷たい、感情を抑えるのが特徴だ」と書いてありますが、カステラを通じて私が実感した日本人の印象は、完全に合致しているとは言えません。その時々に垣間見える日本人の冷たいと見なされる行為や抑制心は、他人に迷惑をかけてはいけないという遠慮から来るのでしょう。細かいところまできちんと注意を払う日本人は、単に生活習慣というカテゴリーを超越した文化にまで達していると思いました。カステラを通じて知った日本人の思いやりと優しさは、私に深い印象を残しました。保管してあるこのカステラの空き箱を見ると、私は心を新たにして、日本語への学習意欲が湧いてくるのです。(編集/北田)
※本文は、第九回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「中国人の心を動かした『日本力』」(段躍中編、日本僑報社、2013年)より、孫愛琳さん(大連外国語大学)の作品「感謝の思いをカステラに託して」を編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。
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