<次期天皇・浩宮さまの素顔(上)>英国留学時代に育まれた平和友好主義―思いやり精神にあふれる

八牧浩行    2016年10月10日(月) 6時30分

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天皇陛下が「生前退位」の強いご意向を表明され、次期天皇・皇太子浩宮さまが注目されている。筆者は浩宮さまの英オックスフォード大留学時代に通信社特派員として、旅行や登山に同行した。若き日の素顔を紹介したい。写真は1983年8月エディンバラ城で(筆者撮影)。

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天皇陛下が「生前退位」の強いご意向を8月に表明され、次期天皇・皇太子徳仁親王・浩宮さまがクローズアップされている。筆者は浩宮さまの英オックスフォード大学留学時代(1983〜85年)に通信社のロンドン特派員として、浩宮さまを担当。度々同大学に訪ねて取材したほか、英国王室との交流やヨーロッパ王族を訪ねる旅行や登山にも同行した。これらの取材はごく少人数だったため親密な話ができた。将来の天皇の若き日の素顔とお考えを紹介したい。

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浩宮さまは1983年から1985年にかけて、オックスフォード大学マートン・カレッジに留学、テムズ川の水運史について研究された。

エディンバラ近郊の小高い山、アーサーズシート(アーサーの王座)に登られた際は、登山に得意でないカメラを担いだ記者に気遣い、「大丈夫ですか?」と時折歩を止め、カメラアングルのよい見晴らしのいい場所ではポーズまでとってくださった。

そして「(御用邸のある)那須を思い出しますね。母から手紙が来ました」と懐かしそうに語りかけられた。美智子さまをとても尊敬されているようだった。北の要塞、エディンバラ城の最上段で筆者が撮った写真は新聞や雑誌を飾った。

ヨーロッパの中心に位置する小さな王国リヒテンシュタインの皇太子に招かれた際も同行した。王宮の近くにはスキー場が広がっており、浩宮さまは皇太子らとスキーを楽しまれた。東京の本社からは「浩宮さまのスキー滑走姿の写真を撮るよう」指示されたが、広いゲレンデで多くのスキーヤーがいる中で、あっという間に滑り下りられ、ファインダーに捉えることができない。困り果てていると、「おーい!」と大声がかかり、ゆっくりと滑りポーズをとってくれた。やさしい思いやりのお気持ちがここでも伝わった。

「ロンドン特派員はいいですね?」と問われて「あなたのお仕事の方がよほどいいですよ」と冗談で返したこともある。「イギリス人は親切ですね」と語りかけられたので、「どうして?」と訊いたら、「店で買い物をした時、初めてお金を使ったので、財布からこぼれてしまいました。そしたら店にいた客が拾ってくれました」と率直。あくまでもナイーブな好青年だった。

留学生活はすべてが新鮮のご様子。『ローマの休日』のヘップバーン扮する王女様の気分だったようだ。日本では旅行や山登りはもちろん、ちょっとした外出でも、警備はじめ多くの人たちが同行し、夥しい数のメディアが追いかけ、総勢50人以上にもなる。英国では、代表取材の通信社記者も含め総勢5人程度。英国名物パブでは侍従と警察護衛が外で待機するものの、中で楽しそうに地元民と談笑していた。

浩宮さまにとって苦手なのは、当時大流行だったJALパックなど日本人の欧州旅行。見つかると「浩宮さま!」と声がかかり、あっという間に50人ぐらいに取り囲まれる。それでもにこやかに応対されていた。

オックスフォード大学では世界中の王族やセレブが学んでおり、極東のプリンスでも目立たない。普通にいる20代の若者と変わらず、自由と交友を謳歌していた。Gパン姿でディスコに入ろうとして断られたこともある。柏原芳恵やブルックシールズのファンで、彼女たちのシールを寮に張っていた。(八牧浩行

『<次期天皇・浩宮さまの素顔(下)>天皇・皇后のヒューマニズム継承―国際標準の「帝王学」を身につけられる』に続く

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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