<コラム>個性バラバラの訪朝団が一致する意見、北朝鮮のビールは「美味しい!」

北岡 裕    2016年10月14日(金) 14時50分

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訪朝団は左翼も右翼、元議員やオタクもいる、時に呉越同舟な一団なのだが、北朝鮮のビールについては「美味しい!」と見事に意見が一致する。写真はヨーロッパ製の機器が並ぶ大同江ビール工場。筆者が2013年に撮影。

訪朝団は左翼も右翼、元議員やオタクもいる、時に呉越同舟な一団なのだが、北朝鮮ビールについては「美味しい!」と見事に意見が一致する。

2004年に初訪朝した時には羊角島国際ホテルの一階のバーで黒生ビールが飲めた。席を同じくしたホテルの男性職員は「仕事終わりにジョッキ一杯だけ飲むことにしている」といっていたが、その禁をあっけなく破り、数杯飲み干し酩酊し、ひどい平壌訛りで絡まれて困惑した。

久しぶりに李英和関西大学教授の著書「北朝鮮 秘密集会の夜」(文春文庫)を読んだ。91年に訪朝した李教授は平壌滞在中、平壌麦酒と龍城麦酒を飲んでいた。のちに腐敗防止のため、硫酸を入れてろ紙の不足によるろ過の不十分を補っていたことを知りぞっとしたと書いているのだが、一方で美味しかったとも書いている。

最近は大同江ビールの評判がすこぶるいい。南北共に訪問経験のある方からは韓国のビールより味が濃く、格段に美味いという声も多く聞かれる。私も2013年に工場を訪問し話を聞いた。当時の生産数は1日10万本。材料は国産、大麦は咸鏡南道、ホップは両江道で生産。ヨーロッパの技術をふんだんに取り入れ金正日総書記自らバチカンビール(露)、青島ビール(中)、アサヒ、サッポロ(日)などと比較し生産したという。ビールに詳しい人もスイスやイギリス、ヨーロッパテイストに似た味と指摘する。

瓶には大麦と米のブレンド比による味の違いによって1〜5の番号がふられ(1=大麦100%、2=白米3:大麦7、3=白米5:大麦5、4=白米7:大麦3、5=白米100%※ちゃんとビールの味がする)、6、7が黒ビールとなっている。食堂やホテルの売店で目にするのは2がほとんど。それ以外のものは市内のビアホールに行けば飲むことが出来る。今年の夏には遊覧船「大同江」号とその周辺で大同江ビール祭典を開催、9月まで開かれたこの祭典には平壌市民に加えて多くの外国人旅行者も訪れたという。今夏訪朝した在日朝鮮人の方によると、最近缶ビールが発売された。味は大同江ビールが勝ると聞く。缶ビール登場前はプラスチック容器にビールを入れて運ぶ人の姿を見た。

大同江ビールには海外からの需要もあるというが、現在北朝鮮国外ではほぼ飲めない。工場関係者から聞いた理由は「国内需要を優先したい」。しかし、私はその回答に疑問を感じている。ビールのレア感を高め世界のビール党を平壌に集めるじらし戦術もひとつの理由、今年の大同江ビール祭典の開催もそれが狙いと睨んでいる。

■筆者プロフィール:北岡裕

76年生まれ。東京在住。過去5回の訪朝経験を持つ。主な著作に「新聞・テレビが伝えなかった北朝鮮」。コラムを多数執筆しており、朝鮮総連の機関紙「朝鮮新報」では異例の日本人の連載で話題を呼ぶ。講演や大学での特別講師、トークライブの経験も。

■筆者プロフィール:北岡 裕

1976年生まれ、現在東京在住。韓国留学後、2004、10、13、15、16年と訪朝。一般財団法人霞山会HPと広報誌「Think Asia」、週刊誌週刊金曜日、SPA!などにコラムを多数執筆。朝鮮総連の機関紙「朝鮮新報」でコラム「Strangers in Pyongyang」を連載。異例の日本人の連載は在日朝鮮人社会でも笑いと話題を呼ぶ。一般社団法人「内外情勢調査会」での講演や大学での特別講師、トークライブの経験も。過去5回の訪朝経験と北朝鮮音楽への関心を軸に、現地の人との会話や笑えるエピソードを中心に今までとは違う北朝鮮像を伝えることに日々奮闘している。著書に「新聞・テレビが伝えなかった北朝鮮」(角川書店・共著)。

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