人民網日本語版 2016年11月2日(水) 7時50分
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日本で最高峰の科学研究機構である国立研究開発法人・理化学研究所(理研)で長年働いている研究者・凌楓さんは、日本の科学研究の環境を熟知しており、彼の研究の経験や感じていることなどを通して、日本のこれまでの科学研究と現状をのぞいてみよう。
今年、再び日本人がノーベル賞を受賞した。21世紀に入って、毎年平均1人の割合で日本人が科学の分野でノーベル賞を受賞しており、受賞者の数は米国に次ぐ多さだ。「なぜまた日本から?」と感じている人も多いだろう。日本で最高峰の科学研究機構である国立研究開発法人・理化学研究所(理研)で長年働いている研究者・凌楓さんは、日本の科学研究の環境を熟知しており、彼の研究の経験や感じていることなどを通して、日本のこれまでの科学研究と現状をのぞいてみよう。新華網が伝えた。
凌さんは1993年に京都大学の博士課程を修了し、理研で働くようになった。それから20年以上、エピゲノム・ミトコンドリアゲノムの研究を行っている。入社したばかりの頃、凌さんは任期制研究員で、2年契約。1年に一度契約を更新していた。
世界で初めてミトコンドリアゲノムの初期化機構を発見した凌さんは、1年ほどで定年制研究員になったため、安心して研究に打ち込めるようになった。定年制研究員になった外国人は凌さんが3人目だ。
凌さんによると、理研には現在、研究員が約3000人おり、そのほとんどが3〜5年契約の任期制研究員。定年制の研究員はわずか300人ほどで、その半分が事務を行っている。
「任期制の研究員はプレッシャーがある。契約期間内に一定の研究成果を出せなかった場合、契約を更新してもらえないだけでなく、他の機関に再就職するのも難しくなる。そのため、目前の功利を急いで求める研究員も出てくる。昨年、世界の学術界を震撼させた小保方晴子氏の論文ねつ造事件も理研で発生した」と凌さん。
理研では、定年制の研究員の研究成果は報酬に反映されず、論文や成果の有無で給料やボーナスが変わることはない。しかし、研究者が重要な仕事を担っているかどうかは、研究業務を紹介する時に一目瞭然で、誰でもすぐにピンとくる。研究の進展があまりなかったり、重要でないと見なされてしまうと、科学研究経費の申請に影響が出る。そのため、定年制の研究員でもプレッシャーがある。
凌さんによると、野依良治・元理事長は、誰もやっていない研究をするように常に鼓舞し、自分が編み出した新しい研究の原点を基礎にそれを発展させていくようにと指示していた。理研は論文の数をむやみに追及することはなく、求めているのはクオリティの高い論文だ。最大で40〜50人が在籍するような研究室でも、1年に1つの論文も発表しないというケースもある。
凌さんは、「日本から連続でノーベル賞受賞者が出ていることから分かることの一つは、他の人もやっていることをやっていてはいけないということ。誰もやっていない研究を長く、こつこつと続けることで、誰もたどりつけない高みに到達できる。そして、少しずつ海外の研究者の注目を集め、認められるようになって初めて、ノーベル賞を受賞する可能性が出てくる」と分析する。
「基礎研究は、誰からも理解してもらえず応援もしてもらえない。研究者は、一人で黙々と地道な研究を続けなければならない。日本のノーベル賞受賞者の多くは、元々無名だった」と凌さん。
しかし、「近年、日本の学術研究の雰囲気は悪化している。小保方晴子氏の事件が起きるまでは、理研の研究環境は良好で、科学研究経費をいろんな所からもらえるなど、研究の面では『天国』のようだった。しかし、あの事件の影響は大きく、それまでの方針を変えないわけにはいかなくなった。あまりに独特な研究プロジェクトは審査を通りにくくなり、特に末端の研究員は、自分の研究を続けていけるかが分からない状態」という。
日本の科学研究への投入資金が不足するようになるにつれて、科学研究費の申請も難しくなっており、その経費は主に抗ガン薬物の応用研究などに投じられるようになっているため、多くの基礎研究は危機に瀕している。凌さんは、「現在、毎年もらっている研究経費では、助手を2人しか雇うことができない。今後は経費カットの危機さえある」と懸念している。(提供/人民網日本語版・編集KN)
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