畝田 宏紀 2016年12月9日(金) 1時0分
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列車が昆明駅を出発すると間もなく、丘陵に風力発電の風車が並んでいるのが目に入る。そして大理に近づくと、大理でも山の稜線に沿って多くの発電用風車が設置されている。写真は雲南省大理市剣川県の山上に並ぶ風力発電用の風車。筆者撮影。
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列車が昆明駅を出発すると間もなく、丘陵に風力発電の風車が並んでいるのが目に入る。そして大理に近づくと、大理でも山の稜線に沿って多くの発電用風車が設置されている。また大理から200キロ余離れた剣川県でも町に近い丘陵地に建設されている。雲南省は多くが山間区域で、山上から見下ろすと大半の平地は山に囲まれた盆地が伸びた形であることが分かる。このため風力を利用した発電には山の上に発電設備を設置するのが有効であることは明瞭だ。この地域で近年風力発電プロジェクトが比較的盛んに進められていることは知ってはいたが、これほどとは思ってもみなかった。
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中国の風力発電は、風力資源の豊富な内モンゴル、甘粛省、新疆ウイグル自治区といった西北、河北省、遼寧省といった華北、その他では山東省等に集中している。しかし近年中国政府は風力発電の地域分散を図るために、洋上風力発電や西南地域での建設を奨励しているようである。このため雲南省の風力発電も大きな伸びを示している。同省で最初の風力発電が作られたのが2008年12月で、15年11月時点では発電容量は08年比で70倍となっているそうだ。特に15年にはその内の約42%が建設されている。このため15年の風力発電の地域別比率では、他地域の比率にほとんど変化がないかやや減少しているなか、西南地域での全国に占める比率は14年の10%から14%へと高まっている。これは中国の再生可能エネルギー政策で、16年から20年まで風力発電の買い取り価格を引き下げる計画を発表されたが、雲南省の属する四類(地域別にIからIV類に分けてそれぞれ買い取り価格の引き下げ価格を設定)地域の引き下げが小さいことと、値下げ前の駆け込みが起こったためと思われる。実際16年に入ると反動減が起こっている。
11月16日からモロッコで行われた2020年以降の地球温暖化対策「パリ協定」批准国による締約国会議では協定脱退を主張するトランプ米次期大統領の当選により、米国の今後の動きに大きな懸念が寄せられた。パリ協定では、それまで協定参加に拒否を続けていた地球温暖化ガスの排出量で世界1位と第2位の中国、米国が初めて削減目標を掲げて参加したばかりだというのにだ。
中国が排出ガス削減に義務を負う協定に参加したのには幾つかの理由が考えられよう。第一には中国の環境汚染自体が深刻な状況に陥っており、積極的な環境改善への方針が図られていること。第二には、国内の環境技術や産業が発展してきたことで、外部からの圧力をバネに、環境保護産業を育てたいとの意図もあろう。また米国との関係では対立や立場の違いが多いが、環境問題への取り組みでは手を組むことのできる数少ない分野であったこと等が考えられよう。「地球温暖化はでっちあげだ」などとし、石炭や石油など化石燃料の重視やオールド産業重視の傾向が見られるトランプ新米大統領だが、世界の潮流である温暖化対策に背を向ける政策を進めるなら米国の再生エネルギー産業は益々取り残され、中国は太陽光や風力発電産業でその存在を確たるものとしていることとなるかもしれない。
ただその中国も環境問題では課題は山積みだ。エネルギーミックス一つを取っても改善はなかなか容易ではない。石炭依存度が高く、一次エネルギー全体で約7割、火力発電の約8割が石炭による発電で、自動車と並び石炭使用が大気汚染最大の原因とされている。このため中国では「第13次五カ年(2016〜2020年)」計画の最終年に当たる2020年の石炭火力発電容量を1100ギガワット以内に抑えると同時に20ギガワットの老朽設備を淘汰する一方、非化石燃料のエネルギー全体に占める比率を15%(15年時点では12%)に引き上げる計画だ。このため五カ年期間中の火力発電の伸びは4.1%以下となる半面、太陽光発電を21.2%増、風力を9.9%増、原子力を16.5%増とする目標を立てている。
このことから中国の風力発電建設は来年以降再度回復に向かうものと思われる。ただ日本でも話題となるが、再生可能エネルギーは送電網への接続が問題で、中国でも送電網に乗らないまま放棄される比率が依然高いようで、国は繰り返し改善を指示しているようだ。
■筆者プロフィール:畝田 宏紀
1956年岡山県倉敷市に生まれ、現在東京在住。神戸市外語大中国語科卒。大学在学中、改革開放政策が始まる直前の1978年に中国に留学。香港駐在11年と中華圏での滞在歴は計15年。金融業界に30年間従事し、主に大中華圏をはじめアジアでのビジネスが長い。特に最近までの13年間は中国経済、産業、企業分析に従事。興味は金融、経済にとどまらず、歴史、文化、言語など幅広い分野にわたる。
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