Record China 2008年2月26日(火) 10時18分
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世界の強豪が集結したテスト大会「第16回飛び込みW杯」が24日、閉幕。飛び込み“ドリームチーム”の中国は、全8種目中、男子10m高飛び込みを除く7種目で金メダルを獲得し、『王国』の貫禄を見せ付けた格好となった。
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飛び込み“ドリームチーム”が抱える2つの不安
飛び込み“ドリームチーム”の中国代表をはじめ、世界の強豪が集結したテスト大会「第16回飛び込みW杯」が24日、閉幕。中国は、全8種目中、男子10m高飛び込みを除く7種目で金メダルを獲得し、「王国」の貫禄を見せ付けた格好となった。
最終日は、女子シンクロ板飛び込みが行われ、アテネの金メダルペア郭晶晶・呉敏霞組が圧倒的な強さを見せ、362.10で優勝。最後の演技は「さすが」を思わせる演技を見せた。女子シンクロでは、世界でこの二人を脅かすことのできるペアはいないだろう。北京五輪に向けての万全の調整ぶりを見せた。
ただ、飛び込み“ドリームチーム”には決して楽観視できない不安が生まれた大会ともなった。
先ほど、「女子シンクロでは」と書いたが、個人では、「女王」郭晶晶の演技にほころびが生じ、メディアのちょっとした話題となった。予選、準決勝、そして決勝といずれも前方宙返りで失敗。“女王”としては、信じられないような低得点が出て、安定した演技を見せた後輩の呉敏霞に優勝を明け渡した。予選、準決勝とも、競技終了後の取材は全て拒否。それでも一言を引き出そうと、投げかけた「決勝の目標は?」という質問に、怒ったように「不知道(知らない)!」と返し、控え室に消えて行った。結局、決勝でもミスが出て2位に終わった郭晶晶だが、試合後も「結果には満足している」「記者の皆さんは失敗が問題だっていうけれど、一体何が問題なのか分からない」と語り、精彩を欠いた演技に対しても、強気なコメントを繰り返していた。「本番」のピークに向けて、徐々にコンディションを整えていくのが一流選手であり、その過程での結果を云々する必要はないが、これまで他を圧倒する力を見せていた「女王」だけに、ちょっとしたほころびにも世間の注目が集まるのは致し方ないだろう。
さて、もう一つの不安は、全8種目中、唯一、金メダルを逃した男子10m高飛び込みである。中国勢はメルボルン世界選手権の銀メダリスト、ジョウ・ルーシンと、同3位の林躍(リン・ユエ)を送り出したものの、いずれも2位と4位に終わり、新鋭のクライン(ドイツ)に屈した。「全種目金メダル」を至上命題とする王者中国にとっては、世界選手権に続く、高飛び込みの取りこぼしは常に深刻な問題である。
この種目には元々、絶対的なエース、「飛び込み王子」の田亮(ティエン・リャン)がいた。だが、体育当局とのさまざまなイザコザの末、引退を余儀なくされ、この10m高飛び込みには、大きな穴があく結果となった。この種目には、もう一人、胡佳(フー・ジア)という選手がいるが、2005年の世界選手権後、目の手術を行い、以後、低迷していて、北京五輪に間に合うかは全く定かでない。2人のエースが北京五輪までは安泰、と見ていた当局が、「その次」を育ててこなかったことから生じた空白だが、今回のW杯で、その痛手がより鮮明に感じられることとなった。
今大会、ほとんどのチケットが開幕前に売り切れ。会場は連日満員となるなど、見る側の盛り上がりは最高潮となった。これは飛び込み王国・中国ならでは…そして、北京五輪を前にした中国ならでは、ともいえるだろう。だが、“ドリームチーム”にとっての北京五輪への道は課題も山積み。決して平坦ではないようだ。
<注:この文章は筆者の承諾を得て個人ブログから転載したものです>(了)
■筆者プロフィール:朝倉浩之
奈良県出身。同志社大学卒業後、民放テレビ局に入社。スポーツをメインにキャスター、ディレクターとしてスポーツ・ニュース・ドキュメンタリー等の制作・取材に関わる。現在は中国にわたり、中国スポーツの取材、執筆を行いつつ、北京の「今」をレポートする中国国際放送などの各種ラジオ番組などにも出演している。
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