黄 文葦 2017年2月25日(土) 20時30分
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「暗殺」という言葉、もう「死語」になったのだろうと思っていた…世界文明はすでに高度に発達しているようだが、現実はまだ厳しい状況である。この間の北朝鮮に関するおぞましい事件が世界を驚かせた。真実はまだ藪(やぶ)の中にある。写真は北朝鮮・平壌。
「暗殺」という言葉、もう「死語」になったのだろうと思っていた…世界文明はすでに高度に発達しているようだが、現実はまだ厳しい状況である。この間の北朝鮮に関するおぞましい事件が世界を驚かせた。真実はまだ藪(やぶ)の中にある。
私は、北朝鮮に対して複雑な思いを持っている。昔中国で見た北朝鮮と今日本で見ている北朝鮮は、イメージが随分と違う。
昔、中国で見た北朝鮮の映画の中、北朝鮮が裕福で、韓国が貧しい…そして、日本に来てからそのイメージが完全に覆された。テレビに映された北朝鮮のニュースアナウンサーの高揚したような声を聴くと、まさしく戦場から発する声で、北朝鮮は遥かな別世界であると思った。
北朝鮮に関する映像の中、人々の栄養失調の様子が目立つ。「北朝鮮が日本海に向けて弾道ミサイルを発射し、海上に落下した」というようなニュースが日本のマスコミで流された際に、間違いなく「北朝鮮は怖い国」というイメージが植えつけられた。
ところで、北朝鮮の本当の顔はどうでしょうか?神秘的で、全然見えない。北朝鮮の人々はどういう暮らしをしているのか、彼らは何を考えているのか、誰も知らない。その「怖い国」が常に世界に不安を与える。ただ、「怖い国」の人々は皆怖いわけではないと思う。
私は北朝鮮の人の名刺を1枚持っている。ちょうど十年前、中国大連で開催される国際IT展覧会に参加した時のことであった。そこに北朝鮮企業の人も何人かおり、たまたまある北朝鮮人と名刺を交換した。その名刺はすべて英語で書いてある。「国際的な感じの名刺」とその時に思った。
その方の肩書は貿易企業の副社長であった。住所、電話番号、そしてメールアドレスも載せている。不思議なのは、その方は挨拶程度の日本語ができる。たいへん謙遜な態度で微笑みながら私と挨拶を交わした。彼らは数人の集団で行動する。海外で開催されるイベントに参加しているので、北朝鮮のエリート階級に違いない。その後もよくブースを回り、商品を見たり、通訳者と通して人々とコミュニケーションしたりしていた。その時、北朝鮮の人でも私たちと同じ普通の人間で、普通に仕事をしていると認識した。唯一違和感を覚えたのは、彼らは服に金日成の肖像が描かれているバッジをつけていたことである。ちなみに、日本のネットオークションでは、北朝鮮の将軍バッジが売られている。
「北朝鮮の貿易会社の仕事はどんな感じですか」「どの国と貿易をしますか」「北朝鮮の街はどんな風景ですか」など質問をしたかったのだが、相手はやっぱり遠慮がちな態度で、話せなかった。十年も経った現在、その人たちはどうなっているだろうか。ちなみに、その後、私は一度思い立って、北朝鮮の方の名刺に書かれているメールアドレスにメールを送ってみたが、やはり返信はなかった。
ところで、日本では、マスコミから「北朝鮮は怖い国」と伝えられているとはいえ、民族教育を行う朝鮮学校が多数存在している。日本に来て最初に不思議だと思った。留学生時代の私がかつて大学の先生に「日本はなぜ、そんなに多くの朝鮮学校がありますか」と聞いた。その先生は「歴史を見れば分かる。それは日本の責任です」と語ってくださった。「日本の責任」という言葉を聞いて、とても感慨深い気持ちになったため、今でも強く印象に残っている。
サッカー選手の鄭大世(チョン・テセ)さんのことを思い出した。日本で生まれ、日本で育った鄭さんは、朝鮮学校で教育を受けてきたため、北朝鮮を祖国と見なし、ナショナルチームは北朝鮮代表を選んだ。かつてサッカーワールドカップ及び東アジア選手権で北朝鮮代表として日本チーム、韓国チームなどと戦った。FIFA公式サイトでは朝鮮人選手として初となるロングインタビューが紹介されていた。
朝鮮学校について考えたことは、異なる文化・価値観やイデオロギーと接触する機会を設ける学校教育を行うこと、それが日本社会の寛容である。日本で生まれ育っても、民族のアイデンティティに強い信念を持ち、初志貫徹の決意で自ら選んだ道に挑むことは素晴らしい。それと教育の力に感服せざるを得ない。
今、世界の隅から隅まで、人々がよくインターネットで情報を交換しているが、北朝鮮はまるで異色なところで、まだインターネットの世界では「欠席」の状態だ。
北朝鮮の人々も世界に対してさまざまな見方があるはず。しかし、外に伝えられていない。外の世界と共有できない…いつか、昔の北朝鮮の映画の中にあるような美しい風景を世界中に見せる日が来るだろうか。いつか北朝鮮の人々は本物の裕福と自由を手に入れるだろうか。
■筆者プロフィール:黄 文葦
在日中国人作家。日中の大学でマスコミを専攻し、両国のマスコミに従事。十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。2000年の来日以降、中国語と日本語の言語で執筆すること及び両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。
在日中国人作家。日中の大学でマスコミを専攻し、両国のマスコミに従事。十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。2000年の来日以降、中国語と日本語の言語で執筆すること及び両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。Facebookはこちら「黄文葦の日中楽話」の登録はこちらから
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