<コラム>中国がミャンマーと関係強化に懸命、インド洋進出が念頭、「同胞」も見捨てる措置

如月隼人    2017年4月7日(金) 10時20分

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中国がミャンマーとの関係強化に力を入れている。究極の目的はインド洋への道の確保だ。写真はミャンマーの国旗。

中国は一方で、3月28日にミャンマー国境地帯の自国領内で陸空軍による大規模な軍事演習を実施した。ミャンマー側の戦闘では中国領内にしばしば被害が出ており、演習の第1の目的は「ミャンマーの国内事情が自国に影響することは許さない」との意思表明と考えてよい。また「ミャンマー軍には通報済み」との発表があったことから、どちらかといえばMNDAAに自制を求める思惑があったと理解できる。それ以外にも中国は、ミャンマー少数民族地域における各勢力の自制を呼びかけ続けている。

中国としてはミャンマー国内が安定してくれないと困る。ミャンマーでは現在も軍が強い権力を握っており、戦闘が継続すれば強硬論を唱える軍と事態の収拾を目指す政権側の関係が悪化して混乱が発生する可能性も否定できない。

中国は最近になりミャンマー北部の各少数民族の代表に働きかけているとされる。ミャンマーの少数民族問題に積極的に関与することで、同国に対する影響力を強める思惑があるのは明らかだ。

中国にとってはそれ以外にも懸念材料がある。民主化実現以降、日米など西側諸国がミャンマーと急速に接近していることだ。一方で、ミャンマー電力省と中国電力投資集団が合弁で進めていたミッソン水力発電所建設は、環境問題を理由とする反対により工事停止に追い込まれた。

かつての軍事政権時代のように、中国企業が独占的にミャンマーに進出できる時代は去った。しかも、ミャンマー政府は民意にも配慮しながら政権運営をせねばならない。ミャンマーとの関係を強化したい中国としては「隣国であり経済大国である中国にしかできないことは多い」とミャンマー当局に認識してもらわねばならない。

ミャンマーのティンチョー大統領の訪中だが、中国外交部は3月31日の時点で、習近平国家主席および中国のその他の指導者と会談し、北京市以外にも訪問すると発表した。中国側としては中国との関係強化こそがミャンマー政府にとって「最も得になる」と最大限にアピールすることは確実だ。(4月6日寄稿)

■筆者プロフィール:如月隼人

1958年生まれ、東京出身。東京大学教養学部基礎科学科卒。日本では数学とその他の科学分野を勉強し、その後は北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。中国については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結局は得」が信条。硬軟取り混ぜて幅広く情報を発信。

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