<コラム>韓国の古都で感じた胸が張り裂けんばかりの怒り

木口 政樹    2017年4月21日(金) 21時20分

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このところ政治的な内容が重なったのでこのあたりで本来のこのコラム的な内容をお送りしたい。2月に引き続き韓国の地理について。今回は慶尚北道、慶尚南道について書いてみよう。写真は慶州の仏国寺。

このところ政治的な内容が重なったのでこのあたりで本来のこのコラム的な内容をお送りしたい。2月に書いた「韓国のスキー場で不思議な光景、日本の方が雪質はいいのになぜか日本人の姿が」に引き続き韓国の地理について。この時は江原道(カンウォンド)、忠清南道(チュンチョンナムド)・北道(プクド)について書いた。今回は慶尚北道(キョンサンブクド)・南道(ナムド)について書いてみよう。

韓国の一番東北部に位置するのが江原道、その南に慶尚北道、さらにその南に慶尚南道が続いている。慶尚北道の一番の観光スポットは、なんといっても慶州(キョンジュ)だ。新羅時代の首都で、王陵があっちこっちにごろごろとある。

どこを掘っても遺物が出てくるため、市の許可がなければ土を掘ることもままならない。高いビルディングを作るのも禁止されており、工場を作ることもご法度となっているため、慶州市内に行くと、空が広く感じられ胸のつかえがポーンと一挙に吹っ飛んでしまうのが実感されるだろう。南山(ナムサン)、仏国寺(プルグクサ)、石窟庵(ソックラム)は必ず訪れてほしいスポットである。

また市内にある瞻星台(チョムソンデ)、鷄林(ケリム)、半月城(パンウォルソン)といった史跡も手軽に行けるので、ぜひ一度足を運んでいただきたい。2000年前の新羅の息吹を感じることができるだろう。

他のところにも何度か書いたが、これらの史跡からすぐの皇南洞(ファンナムドン)が、私のかみさんのふるさとである。そんな関係で結婚当初からこの瞻星台、鷄林、半月城へと続く道は、私のこよなく愛する散策コースだ。残念なのは、慶州から程近い海辺に新月城原子力発電所があり、慶州郊外に放射性廃棄物処分場が設置されたことだ。2015年7月13日にこの処理場が稼動を始めたというニュースを聞いて、胸が張り裂けんばかりの怒りを感じたのを思い出す。

なんで歴史の街・慶州にこんな醜いモンスターを作ることになったのか。土を掘るにも許可が要るという厳しい管理をしてきていながら、なぜにこの美しいかけがえのない大地にこの世の中で一番醜く忌まわしい核施設がこんなにもたくさんできてしまったのか。地をたたき天を仰いで涙の叫びをおれは上げたい。「このアホー。なんでこの聖なる地を汚してくれたんだ!一日も早く核施設を取り去れ!この千年古都慶州から出て行け!」と。

16年12月7日に韓国で封切りされた「パンドラ」という映画のテーマがまさにここ慶州近くの原発の震災事故だった。マグニチュード(M)6.1の強震が原発を襲いそれに伴う原発事故を描いた映画だ。16年9月12日、慶州をM5.8の地震が襲った後、M2〜3.5くらいの地震が頻繁に繰り返されているのを見ると、映画があながち虚構でないことを感じる。

次は慶尚南道に行こう。慶尚南道は朝鮮半島の東南部に位置し日本から最も近い一帯だ。山口県・下関と釜山(プサン)を結ぶ関釜連絡船は今も運航している。この釜山が慶尚南道の中心地だ。行政上は慶尚南道と釜山広域市ということで別になっているが、旅行、観光上は合わせて考えて差し支えない。

釜山は、ユギオ(6.25。朝鮮戦争を指す)の時に北朝鮮を脱出し南へ南へと逃れてきた避難民が大挙して住むようになった土地だ。釜山住民の何パーセントが北の出身者かは分からないが、相当の割合で北出身者がいることは事実だ。

わが韓国人の親友Yさんも、両親が北の出身者である。この人たちの特徴は、真面目、一生懸命、いちず、なりふり構わずとまとめられよう。財産といわず生活基盤といわず、友、親戚、すべてを涙ながらに手放して脱出せざるを得なかったゆえ、釜山での避難生活は無一文からの出発だった。隣の人もそのまた隣の人もみんな同じ境遇であったから、なんとかやってこられたのであろう。何もないところからの生活だから、真面目に、一生懸命に、いちずに、なりふり構わず働くしかなかったわけだ。北出身の両親を持つその2世たち(Yさんもその1人)も、親の血を受け継いで生一本というか、真面目で一片丹心の人が多い。「一片丹心」とは「イルピョンタンシム」と読み、永久に変わらない心、ぶれない心といった意味である。

北朝鮮というと、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長を思い浮かべる方が多いことと思う。あまり良くないイメージが強いかもしれないが、本当は、義理堅く、裏切りのような行為は絶対にしない、信じるに足る人が北の人には多いのである。

■筆者プロフィール:木口政樹

イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。三星(サムスン)人力開発院日本語科教授を経て白石大学校教授(2002年〜現在)。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。

■筆者プロフィール:木口 政樹

イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県・米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。元三星(サムスン)人力開発院日本語科教授、元白石大学校教授。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。著書に『おしょうしな韓国』、『アンニョンお隣さん』など。まぐまぐ大賞2016でコラム部門4位に選ばれた。

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