アジアの国々をスポーツで繋ぐ、東京五輪での活躍を支援=選手が引退後も社会で活躍できるように―為末大さん   

八牧浩行    2017年5月14日(日) 12時10分

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一般社団法人「アスリート・ソサイエティ」代表理事の為末さんは「日本人アスリートや指導者が世界へと渡り、現地でのオリンピック選手を生み出し、その選手が自国の人々へ希望を与えるということが、日本らしい貢献となる」と語る。写真はインタビューに答える為末さん。

オリンピックや世界選手権などで活躍するアスリートは国民の誇り。「アスリート一人ひとりが持つ能力を最大限に活かして社会に貢献できる環境を整えたい」と考えたトップアスリートたちが2010年に一般社団法人「アスリート・ソサイエティ」を設立した。代表理事は為末大さん。陸上400メートルハードルで、2度にわたり世界選手権の銅メダルを獲得。アテネ五輪や北京五輪でも活躍したトップアスリートだ。理事には、朝日健太郎(ビーチバレー)、朝原宣治(陸上短距離)、松下浩二(卓球)、長塚智広(自転車)氏ら憧れのビッグネームが名を連ねる。

設立の翌年2011年3月11日の東日本大震災ではこの組織がフル回転、彼らの呼びかけに義捐金が1億円も集まったという。

「新たなアスリートの社会的価値を生み出すことで、スポーツを取り巻く環境や社会におけるスポーツのあり方の変革につなげていきたい」為末さん。主な活動として、(1)アスリートと社会をつなぐ(2)社会に貢献するアスリートのロールモデル(規範)づくり(3)アジアアスリートとの橋渡し―の3点を挙げ、「アスリートは引退した後が大変。引退後社会でも輝くことができるよう何かできればと考えた」と明かした。米国英国などではアスリートは引退後、競技とは異なる世界で活躍できるような仕組みがあるが、日本では引退後は指導者やメディア関係など競技の延長線上の仕事に限定されるという。「起業して成功するアスリートが少ない。子育てを経験した女子アスリートが地方議員を目指してもいい」と力説した。

◆競技以外の世界知識や教養を学ぶ

そこで、「現役時代から、競技以外の世界知識や教養を身に着けることが大切」と考え、スタートさせたのが『若手アスリートのリーダーシップを育む』プロジェクト。競技力だけではなくリーダーシップが大切との考えから、15年度には日本陸上競技連盟が認定する「ダイヤモンドアスリート」向けのリーダーシッププログラムを実施。15歳から19歳までの東京五輪で活躍が期待される男女13人を対象に、競技力だけではなく、国際的なリーダーシップを発揮できる選手の育成を目指している。

第1回プログラムではゲスト講師の小泉進次郎衆院議員が、「言葉の力」をテーマに講義。全4回のプログラムの最後には、選手一人ひとりが、陸上に取り組む理由、これからの目標などをテーマにスピーチを行った。今後も経営者として活躍している元プロアスリートたちの経験や知見を生かしていく方針だ。

        

◆ブータン、ネパール、ラオス、カンボジアを活動拠点に

もう一つの目玉は「スポーツで日本とアジアの国々をつなぐ」プロジェクト。東京五輪を3年後に控え、為末さんは「日本人アスリートや指導者が世界へと渡り、現地でのオリンピック選手を生み出し、その選手が自国の人々へ希望を与えるということが、日本らしい貢献となる」と語る。

その第1回目の活動はヒマラヤのブータンで行われ、為末さんらの指導で陸上競技合宿も実施された。子供たちは講義や実戦形式の練習に真剣に取り組み、大きな成果があった。東京五輪に多くのアジア選手を参加させることが狙いで、選手を日本に招聘し、スポーツを通じた国際交流も目指す。今後ネパール、ラオス、カンボジアなどへ活動拠点を広げ、各種競技の講師派遣も行う方針だ。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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