八牧浩行 2017年8月5日(土) 5時10分
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4日、ラウレル5世 駐日フィリピン大使が会見し、南シナ海の領有権を巡る中国との対立に触れ、「現実を直視し、軍事的な解決ではない外交的な解決の道を探りたい」と言明。領土紛争を棚上げして、中国との経済面での連携強化を優先させる方針を示した。
2017年8月4日、ラウレル5世 駐日フィリピン大使が日本記者クラブで会見し、南シナ海の領有権を巡る中国との対立問題に触れ、「現実を直視し、軍事的な解決ではない外交的な解決の道を探りたい」と言明。 領土を棚上げして、経済面での連携強化を優先させる方針を示した。その上で、領有権を主張するために『航行の自由作戦』を実施するより、中国と天然ガス、石油の共同開発を行う方が得策との考えを強調した。
同大使の発言要旨は次の通り。
フィリピンは南シナ海での領有権を決して放棄したわけではないが、主張が異なることについては領有権を巡り対立している現実を直視し、軍事的な解決ではない外交的な解決の道を探りたい。戦争には勝者も敗者もない。(領土問題を)横に置いて(棚上げし)、経済面でどのような方策が考えられるかひざを交えて検討しなければならない。それこそが「外交」と考える。米国でさえも立場の相違を超えて中国と経済的な交渉をしている。
領有権を主張するために「航行の自由作戦」を実施するより、天然ガス、石油が埋蔵している海域などで前向きに協議して共同開発したり、資金を出してもらうことを考えるべきだ。
南シナ海をめぐる中国との紛争に関して、フィリピンのアキノ前政権が2013年に国連海洋法条約(UNCLOS)に基づいて開始した仲裁手続きに判断が示され、中国の歴史的権利の主張を認めず、フィリピン側の勝利となった。
しかし、アキノ大統領の後を受けたドゥテルテ大統領は、中国との経済協力を重視し、中国との2国間対話を進め、ASEAN関連の国際会議で仲裁判断に言及することを避けている。5月に北京開催された「一帯一路会議」に出席するなど、中国との経済的な関係の強化を優先している。
フィリピンは今年のASEAN議長国であり、秋には東アジアサミットを主宰するが、フィリピンは南シナ海問題で中国を刺激することを避けると見られている。この日のラウレル大使の発言は、同国の立場を率直に伝えたものといえそうだ。(八牧浩行)
■筆者プロフィール:八牧浩行
1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。
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