【週末美術館】日常を愛でる生活者の“視覚的日記”

Record China    2009年8月16日(日) 2時29分

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日常生活のどこででも見られる物品や場面を見過ごすことなく、“視覚的な日記”というスタイルで書き留めている油彩画家の蘇亜碧。その作品は拙い筆致ながら、作者の誠実な視線や丹念な制作姿勢、また芸術家である以前に生活者であろうとする姿を感じさせる。

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粗末で平凡な民家の片隅、あるいはその窓の外に転がる数々の生活用品。簡素な電球やハンガー、櫛やカップなど。それらが遠近法を無視した画面の中で、時には背景に埋没しながら、支離滅裂に散らばっている。拙い筆致である。しかしながら、非常にストイックな色彩が、作者の誠実な視線や丹念な制作姿勢を感じさせる。

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油彩画家の蘇亜碧(スー・ヤービー)は自身の作品群をこう語る。「私の作中に登場するのは、日常生活のどこででも見られる物品あるいは場面ばかりで、見慣れた光景というよりかその存在すら目に留まらないほどのものである。そういったものを目に留めないということは、もしかすると、自分の中の素朴な要求を見逃すということになるかもしれない。だから私は“視覚的な日記”というスタイルでこれらを書き留めていく。キャンバスの上に、極めて節制された色彩を用いて、その緩慢さ、素朴さを描き出していく。」

作者の“創作宇宙”とも呼べる小さな居室の中を満たす生活の匂いや窓外からの風、光と影のうつろい、こうしたものの痕跡を愛しむ姿勢が垣間見える。芸術家である以前に、地に足のついた生活者としての人物像が浮かび上がり、決して饒舌でない中にゆるぎない芯の強さを感じさせる。(文/山上仁奈)

●蘇亜碧(スー・ヤービー)

中国の女流油彩画家。1975年生まれ。雲南芸術学院附属高校美術科で学んだのち、同学院美術学部に進み、1998年卒業。2000年より大理学院美術学部で教鞭を執る。雲南省を拠点に活動している。代表作に「生活空間」「窓外」「物品」など。

写真提供:匯泰国際文化発展有限公司(中国・天津

※週末美術館では、中華圏のアーティストを中心に日本や世界各地の写真作品、美術作品、書道作品など様々なジャンルの作品をご紹介していきます。



   

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