日本で中小企業コンサルタントを務めてきた経験を生かそうと、中国に腕試しにやってきた36歳の私。いきなりの単身赴任を決め込んだが、中国・アジアのマーケット開拓を目指し、長期スパンでこの地に根を下ろそうと決めた。上海へ来て2か月あまり、午前中は中国語を猛勉強。午後は友人の経営するIT会社で業務に携わる毎日である。

【その他の写真】

上海市内を走る都市軌道交通路線の全長が、2009年中に東京の地下鉄を追い抜くとのニュースがあった。2010年に開催される世界博に向け、既存路線の延長工事や新路線の敷設工事が急ピッチで進行中だ。しかしながら生活者の視点でみると、上海は東京ほどに発達した鉄道都市ではなく、むしろ市民の足となっているのは路線バスだと感じる。例えば、夕方の帰宅時に突然大雨が降り出し、道路は大渋滞でタクシーはつかまらず、バス乗り場には長蛇の列ができていても、地下鉄はそれほど混雑していないのが現状だ。移動手段としての鉄道の存在価値はまだ低い。

実際に上海の地下鉄は清潔で安全な乗り物である。7〜8分に1本の間隔で運行しているが、時刻表が無いので、むしろ日本のように遅延でイライラする必要がない。座席はプラスチック製で座り心地は悪く、アミ棚が無いので手荷物を置くことができない。東京の鉄道の快適性に慣れてしまうと、やや不満を感じる車内設備である。

一方、路線バスはかなり多くの路線があり、とても利便性が高い。バス路線は番号で表示され、何番のバスがどのルートを通るかはバス停に表示されている。不慣れな外国人にとっては地名の解読が困難なので、結果的にタクシーを選択してしまうこととなることが多いのだが…。しかし、地図検索のホームページ「我要地図」を利用すると、出発地と終着地の入力でその間のバスルートを複数提示してくれるので便利だ。そのルートはバスの乗換案内も含まれているが、都市部の運賃は一律2元(約26円)なので、1回や2回の乗り換えはあまり負担にはならないだろう。

上海市は東京都の約2倍の人口があり(編集部注：市内に常住しない流動人口を含める)、これからも人口流入が続いていくと思われる。道路交通容量は限界が近づいており、やはり公共交通の軸はいずれバスから鉄道へシフトせざるをえないだろう。現在のバス路線は鉄道駅への連絡がないが、近い将来はバスと鉄道の連携がカギになるはずだ。(30代男性/生産、物流現場カイゼン研究会勤務)