工藤 和直 2018年3月7日(水) 0時50分
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明代の蘇州出身の詩人「高青邱」(西暦1336〜1374年)は幼少より神童といわれ、書に読まざるはなしといわれるほどの博学と知られた。蘇州効外「青邱」にて在野の詩人として活躍するが、明の太祖から39歳で腰斬の刑に処せられた。写真は筆者提供。
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明代の蘇州出身の詩人「高青邱」(西暦1336〜1374年)は幼少より神童といわれ、書に読まざるはなしといわれるほどの博学と知られた。蘇州効外「青邱」にて在野の詩人として活躍するが、明の太祖から39歳で腰斬の刑に処せられた。高青邱は蘇州城内中央にある「飲馬橋」から数十メートル東の「夏候橋」近くに寓居があった。ここは、宋時代に「平江府」といわれた行政府があった場所だ。また「夏候橋」から北へ向かう運河は、元末時代に埋められ道路となったが、かつて呉王「夫差」の時代、子城(宮城)の西堀に当たり、「錦帆渓」と呼ばれた。
【その他の写真】
高青邱(写真1)は、漢時代の中国四大美人のひとり「王昭君」についてすばらしい詩を残している。漢の武帝は後宮に多くの女官を抱え、その全てに会うことができず、画家にその姿を書かせ、それを見てお召しになるというシステムであった。そのため多くの女官は画家に賄賂を渡し、少しでも美人に描かせる、逆に賄賂のない者は“醜く描く”という有様であった。
漢帝国は強大ではあったが、北方の異民族から常に脅かされていた。その対応策として、武帝は絵画から醜い女官を匈奴の首領に贈ることにした。いよいよ北の国に去る別れの挨拶に来た女官「王昭君」は、周りの者をも驚かす美しさであった(賄賂を渡さないため醜く描かれた)。武帝は「しまった」と思ったがもう決めた人選を覆すこともできず、悔やむだけとなった。哀れ「王昭君」は泣く泣く北国に行き、その地で没したという(写真2)。
【高青邱の詠った王昭君】
都門塵拂春風面
ともん塵ははらう春風のおもて
臨別看花涙如霰
別れにのぞんで花をみる、涙、あられの如し
君王惆悵惜蛾眉
君王惆悵(ちゅうちょう)、蛾眉(がび)をおしむ
不似前時画中見
似ずぜんじ画中に見る
青邱に先立つ300年前の唐時代、同じくは白居易は「王昭君」について以下の有名な詩がある。王昭君の逸話に必ず出てくる漢詩である。青邱の王昭君の漢詩は、この詩を意識した書き方になっている。白居易は唐時代蘇州刺史(長官)として治世をみた先人でもあった。白居易17歳の時の作と言われる。
「白居易の詠った王昭君」
満面胡砂満鬢風
おもてに満る胡砂、鬢に満る風
眉鎖残黛臉鎖紅
まゆは残黛(ざんたい)に消え、臉はべに消ゆ
愁苦辛勤[焦頁][卒頁]尽
愁苦辛勤して[焦頁][卒頁](しょうすい)を尽す
如今劫似画図中
如今(じょこん)かえって画図の中に似たり
これらの二つの詩のポイントは第四句にある。“悲しみ・苦しみ・やつれ果てた姿は、今となっては醜く書かれた画そのものであった”と白居易は表現したのに対し、青邱の四句にあるのは、“出立も同じく美しい姿である”と中国四大美人「王昭君」の美しさを絶賛表現している。実に白居易をしのぐ高尚な詩である。
明太祖の追及に姑蘇城外「楓橋」から逃げようとした時、死を覚悟して詠った最後の漢詩が「絶命詩」である。彼の詩には性格によるものだが、慷慨(こうがい)に満ちた力強さを感じる。「十人行くもの九人は帰ることがない」、江戸幕末の倒幕志士はこの漢詩を愛唱したという。
【絶命詩】
楓橋北望草斑斑
楓橋、北望すれば草斑斑(はんばん)たり
十去行人九不還
十去の行人、九は還らず
自知清徹原無愧
自ら知る清徹、もとより憚(はばか)るなし
蓋倩長江鑑此心
むしろ長江を雇うて、この心を鑑みるべし
■筆者プロフィール:工藤和直
1953年、宮崎市生まれ。韓国で電子技術を教えていたことが認められ、2001年2月、韓国電子産業振興会より電子産業大賞受賞。2004年1月より中国江蘇省蘇州市で蘇州住電装有限公司董事総経理として新会社を立上げ、2008年からは住友電装株式会社執行役員兼務。蘇州日商倶楽部(商工会)会長として、日中友好にも貢献してきた。
■筆者プロフィール:工藤 和直
1953年、宮崎市生まれ。1977年九州大学大学院工学研究科修了。韓国で電子技術を教えていたことが認められ、2001年2月、韓国電子産業振興会より電子産業大賞受賞。2004年1月より中国江蘇省蘇州市で蘇州住電装有限公司董事総経理として新会社を立上げ、2008年からは住友電装株式会社執行役員兼務。2013年には蘇州日商倶楽部(商工会)会長として、蘇州市ある日系2500社、約1万人の邦人と共に、日中友好にも貢献してきた。2015年からは最高顧問として中国関係会社を指導する傍ら、現在も中国関係会社で駐在13年半の経験を生かして活躍中。中国や日本で「チャイナリスク下でのビジネスの進め方」など多方面で講演会を行い、「蘇州たより」「蘇州たより2」などの著作がある。
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