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中国では毎年、歴史を題材とした映画、ドラマが多く公開されている。つい先ごろも、旧日本軍侵略下の南京を題材にした映画が中国で話題になった。写真は文中で触れられている映画「ザ・フラワーズ・オブ・ウォー」のスチール。
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※中国に渡って10年。現在、「中国で最も有名な日本人俳優」と称される矢野浩二氏によるコラム。
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中国では毎年、歴史を題材とした映画、ドラマが多く公開されている。つい先ごろも、旧日本軍侵略下の南京を題材にした映画が中国で話題になった。この作品は、興行収入も5億元(約63億円)という数字を叩き出している。
国によって歴史に対する認識・思想は違うし、さまざまな世界観や思想を持った監督がいる。その表現の自由を批判することはできない。ただし、ある種の作品を見た観客が当時の敵国(=日本)に対する過剰な憎しみを持ち、それが高じて、今を生きる人々の心中に憎悪の感情が生まれることは、平和的観念から見れば良いわけではない。実際、中国のある有名歌手がこの映画を見たあと、マイクロブログ(中国版ツイッター)を通じて日本人に対する憎悪の言葉をつぶやき、賛否両論を巻き起こしている。
スクリーンの中で、中国の少女が日本兵に強姦されるシーンが残酷に描かれていれば、冷静さを失うのは当然であろう。決して少なくないと言える人々がこの作品を見ることで、現在の日本人に対する憎悪の感情を増幅させたとしたら、たいへん残念に思う。このような戦争映画が、日中の未来にとって本当に必要なのか疑問を感じている。
憎しみ、争いからは何も生まれない。そうであると思いたい。“残虐な戦争行為そのもの”を憎み、人々を恨むことをしない、これが大事だと思う。これこそ、映画やドラマの観衆や視聴者に対するメッセージであるべきではないか?そうでなければ、日中の真の友好などいつになっても築けはしない。長年に渡る民間レベルでの交流も、意味をなさないだろう。
今後、戦争を題材に制作される作品は、末尾に平和へのメッセージ文をテロップにして加えることを望む。例えば、「未来の子供たちのためにも、二度と戦争を起こしてはならない。憎しみ、争いからは何も生まれない」のように。日本と中国、戦争時代の立場は違う両国ではあるが、戦争によって受けた“悲しみ”はお互い同じであるはずだ。
日中間で、互いに歩み寄った意見交換が出来ればと願う。経済関係で協力しあうことはもちろん大事だが、その前に最もデリケートで大事なことが置き去りにされているように思う。未来の両国の子供たちのためにも、「憎しみや争いからは何も生まれない」という当たり前のことを、我々は常に伝えることが必要ではないのか、そのように思う。
●矢野浩二(やの・こうじ)
バーテンダー、俳優の運転手兼付き人を経てTVドラマのエキストラに。2000年、中国ドラマ「永遠の恋人(原題:永恒恋人)」に出演し、翌年に渡中。中国現地のドラマや映画に多数出演するほか、トップ人気のバラエティー番組「天天向上」レギュラーを務める。現在、中国で最も有名な日本人俳優。2011年、中国共産党機関紙・人民日報傘下の「環球時報」主催「2010 Awards of the year」で最優秀外国人俳優賞を日本人として初受賞。中国での活動10年となる同年10月、自叙伝「大陸俳優 中国に愛された男」(ヨシモトブックス)を出版。
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