<コラム>米朝首脳会談まであと1週間、トランプ氏はノーベル賞の価値あり

木口 政樹    2018年6月5日(火) 13時50分

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歴史的な米朝首脳会談を1週間あまり先にひかえたこのごろ、韓国は毎日そのニュースで持ちきりだ。全てのテレビ局が、各時間帯にこれをやらない日はない。それも当然のこと。これくらい重要なことはないからだ。写真は米朝首脳会談の開催地シンガポール。

歴史的な米朝首脳会談を1週間あまり先にひかえたこのごろ、韓国は毎日そのニュースで持ちきりだ。全てのテレビ局が、各時間帯にこれをやらない日はない。それも当然のこと。これくらい重要なことはないからだ。歴史的会談1週間前の韓国の雰囲気を書いておくのも意味のあることではないかと思い、ここにご紹介したい。

1953年のユギオ(朝鮮戦争)停戦調停以来、ずっと対立的関係が続いているなかで、もしかすると停戦から終戦の宣言にまで至るかもしれないという期待感があるからだ。人々の生活のあり方が変わるということはないけれど、心の中はなんとか終戦にまで漕ぎつけてほしい、朝鮮半島から核の脅威がなくなってほしいと願う気持ちでいっぱいのはずだ。市井(しせい)の空気は、淡々としたなかにも内からこみあげる軽快感がそれとなくみてとれる。

4月27日の南北首脳会談のあとの流れを簡単に振り返ってみよう。散策路を二人きりで歩いた密度の濃い時間。北と南は笑みをもって別れた。いい感じで流れてきていた5月8日、中国は習近平(シー・ジンピン)国家主席が金正恩(キム・ジョンウン)委員長と会談したと発表した。会談の内容は伝えられていない。どんな話し合いをしたのか。核は米国にやらないでうち(中国)にくれよ、といった話し合いだったのか。

次の日に、北があの「とても北らしい」暴力的発言をぶっぱなし、世界を震撼させた。それを受けてトランプ北朝鮮とは会わないとまで言った。北のあの変化がなぜだったのかは、いろいろの憶測はあるものの依然として謎のままだ。習近平氏との話し合いの内容が影響を及ぼしているのかもしれないし、金正恩氏の若気の至りという部分があるのかもしれない。

南と堂々たる態度で首脳会談を成功させ、中国とも2回目の首脳会談を行った。おれも世界という大向こうを相手に結構やれるじゃないかと自信過剰に陥り、南なんかの力を借りずにおれの北だけの力でトランプの米と強気で渡り合えるんじゃないかという錯覚。アメリカさん、あんたの過剰の要求には応じられませんよ、というメッセージを出せと北の外交畑の専門家キム・ケガンとチェ・ソンヒの2人に命令したのではないのだろうか。幼稚な考えかもしれないけれど、こうでも考えない限り、あの5月10日(だったと記憶するが)の上記2人の発言は、あまりにもそれまでの流れとは異質のものだった。

トランプが彼ら2人の発言(暴言)をうけて、会談は御破算にするとツイッターに書いた。するとその翌日、北の金正恩委員長はまた180度の変化を見せて、会談はなんとかやってくださいという態度に出てきた。「世界情勢をなんだと思ってるのだ。国内と同じようにおのれの考えでなんでもやれるとでも考えているのか」そう思った人は多かったはずだ。

いい流れのなかでの北のあの2人の暴言。トランプはしかし、政治家としてはかなり優れものではないのかと、改めて思わされている。断固たる態度を見せたからだ。

これまでの米の大統領(たとえばオバマやクリントン)だったら、北のあの過激な発言があったとき、断固とした態度で「会談はなしだ」と言えただろうか。たぶん北に譲歩するような態度でなんとか北をあやすようなメッセージを出したに違いない。トランプは違った。「会談はなしだ」と高らかに宣言した。トランプの確固たる決意に怖気づくように、北は尻尾を下げ、クンクンしながらすいませんでしたと言ってきたのだ。北の最大かつ最初の外交的大失態と記録されよう。

トランプはさらに、ホワイトハウス内の強硬派であるボルトンとペンスを背後に押しやり、柔軟派であるポンペオ国務長官を前面に立てて難局の正面突破を図っている。それがうまく功を奏し、6月5日現在のところはいくばくの不安はあるものの、シンガポールで米朝首脳会談は予定通り開かれるムードである。

いくら大統領とはいえ、ボルトンとペンスを力が発揮できないような立場に押しやることなど、普通にはできないことだと思う。彼らの背後には軍事産業をはじめありとあらゆる背後勢力がくっついているからだ。

ノーベル賞ほしさのパフォーマンスだと、トランプのことをこき下ろす向きもあるにはあるけど、これまでの流れからして、彼がノーベル賞をもらったとしても十分その価値はあると筆者には思われる。北(朝鮮半島)から核をなくし、化学兵器をなくし、戦争の終わりを宣言する、現在の宇宙船・地球号においてこれくらい重要なことはほかにない。これから1週間、米朝首脳会談まであらぬ方向から水がさされないことを祈る。

■筆者プロフィール:木口政樹

イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。三星(サムスン)人力開発院日本語科教授を経て白石大学校教授(2002年~現在)。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。

■筆者プロフィール:木口 政樹

イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県・米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。元三星(サムスン)人力開発院日本語科教授、元白石大学校教授。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。著書に『おしょうしな韓国』、『アンニョンお隣さん』など。まぐまぐ大賞2016でコラム部門4位に選ばれた。

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