<コラム>日産自動車をつくる鄭州市に残る、戦前最後の日本領事館跡を訪ねて

工藤 和直    2018年8月31日(金) 10時40分

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河南省都鄭州市にある二里岡遺跡は、商(殷)王朝の初期の中心地と考えられており、商(殷)後期の甲骨文占卜に記された建国者「天乙(湯王)」の亳という都市になる。写真は筆者提供。

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中国では、西安(かつての長安)・北京・南京・洛陽の4つの歴史的な首都を「四大古都」と呼ぶ慣わしがあった。ところが、歴史学者らの主張によって1920年代に開封(北宋の都)、1930年代には杭州(かつての南宋の都、臨安)がこれに加えられて、「六大古都」の呼称が生まれた。1988年、地理学者の譚其驤は商(殷)の都の跡である殷墟を評価してその所在地である安陽を追加するように提案した。また2004年、中国古都学会は、商(殷)の時代以降3600年の歴史を持つことから、河南省鄭州を追加した。その結果、今日では以上の8都市(西安・北京・南京・洛陽・開封・杭州・安陽・鄭州)を「八大古都」と呼称している。

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河南省都鄭州市にある二里岡遺跡は、商(殷)王朝の初期の中心地と考えられており、商(殷)後期の甲骨文占卜に記された建国者「天乙(湯王)」の亳という都市になる。二里岡文化は商王朝の初期段階ととらえている。一方、欧米の考古学者らは、安陽市で発見された商(殷)後期の殷墟とは異なり、二里岡からほとんど文字資料が出土していないため、二里岡を商王朝初期と結びつけることに慎重である。二里岡遺跡のほとんどは現代の鄭州市街の下にあるため発掘が困難である。湯王は当初都を亳(現在の商丘)としたが、あとに鄭州に遷都した。紀元前1600年頃なので、3600年も前である。

鄭州の商代の遺跡は周囲約7キロメートルの城壁に囲まれた都城で、三重構造であった。現存の内城は北東部がややつぶれた長方形であり、(写真1)のように北壁1690メートル、西壁1700メートル、南壁1870メートル、東壁1740メートルである。東と南壁がほぼ完全に保存されており、東壁部を見ると高さは5メートル、幅は10~17メートルとばらつきがある。城壁上部は散歩も可能である。南東部には高さ10メートル以上の土壁がある。外城は円形で内城から0.5~1.5キロメートル離れている。この城郭スタイルは奉天(瀋陽)城でも見られ、「天円地方」の世界観に結びつき、内城の東北部に宮城がある三重構造だ。東大街が東部城壁を交わる公園に、商代亳都都城遺跡の石碑があった(写真1)。

約80年前に建設された「鄭州日本領事館跡」は鄭州駅から東南700メートル程にある。駅前の福寿街から敦睦路を南に下り、東西馬路の交差点を左折する。交差点の周囲は商業ビルが乱立している。東馬路もほとんど市場の中にある。ここに、戦前に中国内で最後に建設された日本領事館がある。1929年からの中国政府との交渉の結果、1931年2月に漢口(武漢)総領事館の管轄のもと、駅前の福寿街109号に初代領事「田中庄太郎」が開設したが、9月18日の満州事変により領事館を一時停止、その後1935年秋に再度漢口から派遣された領事館員によって設立準備、1936年1月に現在の東馬路80号に正式開館したものである。しかし、1937年7月に起こった盧溝橋事件のため8月9日には一端閉館となり、領事館員他が鄭州を去った。1年半余りしか使われなかった日本領事館であった(写真2)。

日本人租界地でないこの中原の地に領事館を開館した背景は資料が乏しいので詳細不明であるが、明らかに中国大陸内部への進行を意図したものであろう。領事館前はいつも買い物客で混雑している。玄関右横に石碑(日本領事館旧跡:写真3)があり、裏にはもうひとつ領事館付属の建屋があった。この鄭州市では日産自動車を作る鄭州日産汽車が1995年から操業している。

■筆者プロフィール:工藤 和直

1953年、宮崎市生まれ。2004年1月より中国江蘇省蘇州市で蘇州住電装有限公司董事総経理として新会社を立上げ、2008年からは住友電装株式会社執行役員兼務。蘇州日商倶楽部(商工会)会長として、日中友好にも貢献してきた。

■筆者プロフィール:工藤 和直

1953年、宮崎市生まれ。1977年九州大学大学院工学研究科修了。韓国で電子技術を教えていたことが認められ、2001年2月、韓国電子産業振興会より電子産業大賞受賞。2004年1月より中国江蘇省蘇州市で蘇州住電装有限公司董事総経理として新会社を立上げ、2008年からは住友電装株式会社執行役員兼務。2013年には蘇州日商倶楽部(商工会)会長として、蘇州市ある日系2500社、約1万人の邦人と共に、日中友好にも貢献してきた。2015年からは最高顧問として中国関係会社を指導する傍ら、現在も中国関係会社で駐在13年半の経験を生かして活躍中。中国や日本で「チャイナリスク下でのビジネスの進め方」など多方面で講演会を行い、「蘇州たより」「蘇州たより2」などの著作がある。

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