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<コラム>中国の一大計画、「雄安新区」、4度目視察で見た現地の課題

秋澤 文芳    2018年9月27日(木) 9時20分

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書籍までもが出版され、中国の一大計画である「雄安新区」がやっと始動した。今年2回目、2017年から含め4度目の視察となった。写真は雄安新区。

【北京・天津・河北地区の超目玉「雄安新区」は本当に深セン規模になり得るのか】

書籍までもが出版され、中国の一大計画である「雄安新区」がやっと始動した。今年2回目、2017年から含め4度目の視察となった。

現地メディア関係も急に慌ただしくなってきた。今月9月に入り、新たに同地区に関する出版本も改定されて党そして政府も本腰を入れてきた感じだ。まだまだ何年先になるかわからない新区の具体的な計画実現に向け、現在も造成に向けて急いでいる北京市南部地区の「北京新空港」の南方には早くも高鉄(高速鉄道)の駅設置に向け、交通網の整備に関した動きまでも始まっている。

【北京東部地区より車で雄安新区へ、河北省で車進入禁止!】

北京の東端(石景山区)に前泊し、翌早朝に友人の車に乗って雄安新区方面へ。ウキウキしながらまさにドライブ気分で出発した。しかし、河北省へ入ったと思ったらなんと「進入禁止!」に。河北省も北京同様に、当日の車の番号規制に抵触!ということになってしまい、省と市の境でやむなくストップ。実は、乗っていた車は北京「市内」では走行禁止であったが、市郊外地区在住者のため、その地区は運転・走行は例外的に可能だった。ただ、隣の省の「河北」も該当車両番号は規制にかかるということでやむなく車は北京へ引き返すこととなった。

それにしても、北京も河北も(おそらく隣接の天津も)まさに行政は一体となり、車の規制に取り組んでいるということだった。

【道端のバス停で降ろされ1人寂しく路線バス、列車で雄安地区へ向かったが…】

公共機関のみを利用しての1人旅は何とも不便である。北京・天津・河北の真ん中へたどり着くには時間もかかる。途中、列車、路線バス3回も乗り継ぎ第1の目的地、安新県へ到着した。その後、もう一つの地区・雄県が目的地でもある。この地区の状況は今までも3回ほど触れてきたが、周辺には何もない。ただ広大な農村と、そして広大な湖沼「白洋淀湖(琵琶湖の半分の面積)」があるだけだ。人口は3地区合わせても約100万人である。

北京、天津からは距離にして100キロ余り。河北省の省都・石家庄や保定市も同程度の距離がある。交通は全く不便である。産業や観光としての見どころもない。そのような地区に、あらたに1千万都市が出現するのだろうか、というのが庶民の見方でもある。党や政府の後押しでITや産業・文教都市づくりを目指すという構想である。北京(の南方)からは「リニア」で結び15分ということで地理的にも便利になるということである。

しかし1980年代の深センを取り巻く状況と今とでは明らかに置かれている環境が異なる。当時、深センは小さな漁村だったが、表側には香港という自由貿易港があり、裏庭側のさらに奥にはこれまた自由な広州、周辺にはITや商業が発達してきた中堅都市がいくつも点在する。今では「海外」から広東省へ年間5000万~9000万の人々の往来がある。明らかに異なることは、深センには「自由」と人々の往来があることだ。

果たして「雄安新区」地区にはそのような自由さがあるのだろうか。政府との折衝・調整が常におこなわれることは今後も予測される。北京・天津からの人の流れはその先の河北省南部へは行きにくい。深センとは明らかに地形も異なる。もちろん、北京の郊外に、深センのような「自由な新区」が誕生すれば全世界からの人の往来が見込まれ、住宅や商業施設も必要となる。

もう一つ大きな心配事がある。先に述べた「大自然の湖」の存在だ。湖を挟んで「安新県」と「雄県」が存在するが、町の開発が進むにつれ、自然が破壊され、環境汚染が始まり、多くの魚にも影響を及ぼす事態となる。その周辺にはいまも「漁民」も存在する。「千年の大計」のもとに、今後数年にわたり巨大な投資も行われる。中国内各地で今でも傾向として現れている「鬼城(ゴーストタウン)」になることだけは避けたいものだ。

■筆者プロフィール:秋澤 文芳

東京(豊洲)在住。日本旅行業協会を経て2010年より北京第二外国語学院大学旅游科学学院研究生として現在も在籍。東京都日中友好協会副理事長・経済ビジネス委員会委員長。日中観光文化研究所、観光文化ツーリズム等の代表として旅游・訪日インバウンドやコンサル業務に取組む。

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