「もったいないと思いませんか?」=日本人の先生の言葉の本当の意味―中国人学生

日本僑報社    2018年9月30日(日) 14時0分

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中国の学生が大学で日本語を学ぶ理由はさまざま。中には希望する学科に入ることがかなわず、仕方なく学んでいる人もいる。長春師範大学で日本語を学ぶ劉思曼さんもそんな一人だった。資料写真。

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中国の学生が大学で日本語を学ぶ理由はさまざま。中には希望する学科に入ることがかなわず、仕方なく学んでいる人もいる。長春師範大学で日本語を学ぶ劉思曼さんもそんな一人だったが、日本人の教師との交流で心境に変化が生じ、語学以上に大事なことも学んだようだ。以下は、劉さんの作文。

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「私は何をしてもダメなんだ」。小さい頃から、体育も、勉強も、周りの子どもと比べてダメだと言われ続けてきた。そんな私は、できるだけ何も試さないように生きていた。何もしなければ、何も失うことはない。

そう考えていたある日、私の学校に新しく日本人の先生が来た。初めての授業で、先生は簡単に自己紹介をした後、「皆さんは、どうして日本語を勉強しようと思ったんですか」と、ありがちな質問をした。「日本のアニメが好きだから」「親戚が日本にいて、私も将来日本で生活したいから」など、様々な答えが次々と出る中、私は「特に理由はありません。日本語にも、日本文化にも別に興味がないです。ただ学校の割り当てに従って日本語学科に入っただけです」と答えた。

すると、先生は「でもそれもいいかも知れませんね」と言って、優しく微笑んだ。そして「もし日本語学科に割り当てられていなかったら、日本語に触れることもなく、日本語の良さや面白さに気付くこともなかったかも知れませんね。そして、それに気付かず、ただ何となく日本語を勉強して卒業してしまうのは、もったいないことだと思いませんか」と話を続けた。

このとき、私は「日本語を勉強しないことはもったいないことで、確かに損かもしれないが、大した事じゃない。外国語の才能もないし、別にそんなことに気付かなくってもいいだろう」と思っていた。

何カ月か過ぎたある日、新入生向きの朗読大会が開催されることになった。私は参加したくなかったが、先生が勝手に決めて、私は参加することになった。強制だった。舞台の上で恥をかくのも嫌だったので、私は先生と一緒に一生懸命練習をしたが、朗読大会当日、緊張してしまったこともあって、結果はあまり良くなかった。

大会の次の日、きっと先生をがっかりさせただろうし、先生に会うのが嫌で、私は先生の授業を休んだ。すると、先生から電話がかかってきた。「ごめんね。朗読大会で結果を出せなかったのは、すべて私のせいだから、あまり気にしないでね。あなたの能力を引き出せなかった私の責任だから」と、電話の中で先生は言った。意外だった。私は咎められるとばかり思っていて、まさか先生が謝るとは思ってもいなかった。そこまで私の力を信じてくれていることに驚いた。

私はこれまで、誰も自分を認めてくれないと思っていて、自信がなかった。そんな私は、自分を信じたいという気持ちが他の人より強かっただろう。しかし、私は何をしてきただろうか。自信がないためにできるだけ問題を避け、すべて人に任せて、ただひとり閉じこもっていただけだった。これでは、ダメな自分を見ることもないが、同じように自分の良さや良くなる可能性に気付くこともできない。

先生が初めての授業で言ってくれたように、確かに私は「もったいない」ことをしてきたのかもしれない。授業で先生が「もったいない」と言ったとき、私は単に日本語の良さや面白さに気付かないことだと思っていたけど、そうではなくて、自分の可能性に気付かず止まったままでいるのはもったいないということなのだ。先生が私たちの学校にいたのは1年だけだった。先生と話をする機会はあまり多くはなかったが、あれから1年が経った今でも、私は先生が教えてくれたことを宝物にして生きている。(編集/北田

※本文は、第十三回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「日本人に伝えたい中国の新しい魅力」(段躍中編、日本僑報社、2017年)より、劉思曼さん(長春師範大学)の作品「勿体無いこと」を編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。

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