「日中関係には冷却期間が必要」=宮本雄二元駐中国大使―中国メディア

Record China    2012年11月28日(水) 16時37分

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27日、人民網はこのほど、日中外交の当面の難局について、「知中派」のベテラン外交官として知られる宮本雄二氏に書面インタビューを行った。写真は宮本雄二氏。

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2012年11月27日、人民網はこのほど、日中外交の当面の難局について、「知中派」のベテラン外交官として知られる宮本雄二氏に書面インタビューを行った。宮本氏は、2006〜10年の間に駐中国大使を勤めた。その間、小泉純一郎元首相の数回にわたる靖国神社参拝によって損なわれていた日中関係の修復に積極的に立ち回り、安倍晋三元首相による「氷を砕く旅」の実現に尽力した。胡錦濤(フー・ジンタオ)国家主席の訪日の際には、「戦略的互恵関係の包括的推進に関する日中共同声明」の締結など重要な外交活動にも参与した。現在は日中友好会館副会長を担当している。

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質問1、日本は中国に対し、経済・貿易・金融の分野では中国との協力を重視し、政治・軍事・地政学的戦略などの面では中国を脅威とみなす「軍経分離」の政策をとっているとの見方があるが、これをどうみるか。こうした政策は両国のさらなる協力の妨げとなるか?

宮本氏、「日本が、そのような政策をとった事実はない。しかし経済と軍事安全保障は異なるロジックで運用されており、その矛盾を人類は克服できていない。すなわち、グローバル経済の深化は、領域を超えて人、モノ、カネが行き合う、相互依存の、ウィン・ウィンの世界をつくりだした。だから協調し、協力し合わなければならない。これが経済のロジックだ。他方、軍事安全保障の世界は、孫子の「兵者詭道也」に代表されるように、相手に対する不信感を前提にして、相手は自分が弱ければ攻めてくる、勝つか負けるかの、相互排斥の二者択一的な、経済とは全く異なる世界観を持っている。この2つの世界観の矛盾対立は、別に日本だけではなく、世界中どこにでもある。この経済と軍事という、場合によっては矛盾対立する2つの重要な要素を合理的に統合して、国家の基本政策はつくられなければならない。日本の基本政策は、日中戦略的互恵関係の構築である。日中戦略的互恵関係の強化にマイナスの要素を如何にして減らし、プラスを如何にして増やしていくか。軍事安全保障分野において、そのためになされるべき日中の共同作業は極めて多い」と指摘した。

質問2、日中両国を取り巻く問題や相手国の状況について、両国メディアの報道に問題はないか。報道のあり方について何かアドバイスは?

宮本氏、「大いに問題がある。日本では、中国は大国となるや傲慢となり、軍事力を急速に強化し、ついにその力を背景に、これまで長い間日本が実効支配をしてきた尖閣諸島を取りもどしに来た、と多くの人が見ている。だから実効支配を強化する日本政府の立場に対し国民の大きな支持を与えている。中国では、日本は日米同盟を背景に、ついにこれまでの方針を変えて力で実効支配を強化しようとしており、歴史を反省しない軍国主義への危険な動きである、と多くの国民が見ている。だから中国国民も中国政府の対抗措置を支持している。私に言わせれば、お互いの相手国に対する見方は、ともに間違っている。そういう見方に導いた責任の多くを、双方のマスコミは負わなければならない。双方のマスコミは、個々の現象に目を奪われるのではなく、多くの観点を踏まえて、総合的、客観的、理性的に掘り下げた報道に心がけてほしい」と述べたした。

質問3、一衣帯水の隣国である日本と中国は、文化的に多くの共通点があるが、国民間の心の距離はなかなか縮まらず、相互理解が不足している。その要因は何だと考えるか。どのように両国の民間交流を深めるべきか?

宮本氏、「現在、日中双方において、自分の中で相手に対するイメージを作りあげ、そのつくりあげたイメージに対し、お互いに腹を立てている状況にある。このイメージは、断片的な報道やネット上の『お話』に影響されてできる。そして多くの報道や『お話』は、個々の人の好みや、その時の心理状況で取捨選択され、その人が『聞きたいもの』だけが残る。つまり客観的な真実とは大きく食い違う宿命にある。私は、日中両国民同士の融和は、抽象的、一般的な日本人論、中国人論ではなく、個々の1人1人の『物語』が相手に届くことにより実現できると考えている。そこには、戦争よりも平和を願い、家族のため、明日のために懸命に学び、働き、不幸に嘆き、幸せに歓喜し、少しでも良い明日を迎えたいと願っている普通の日本人と中国人が見えてくるだろう。そういう人同士で、どうして友人に成れないことがあろうか。必ず心は通い合うものだ」と話した。

質問4、終戦からはや67年。両国の若者は戦争体験のない世代になっている。こうした若い世代に何を期待するか?

宮本氏、「日本では、歴史学は確実に進歩している。多くの学術材料が発見され、近代史もさらに精緻なものとなっている。日本には多種多様な歴史書があるが、主流の、1級の歴史家の書いた近代史を読んで、私には何の違和感もない。日本の中国侵略の歴史も正面から取り上げている。こういう科学的な重厚な歴史書こそが、後代まで生きのびる。日本の若者は、こういう歴史書を読まなければならない。なぜなら歴史から学べない民族は滅びるからである。中国の若者は、戦後日本が、本当に変化したことを学んでほしい。宣伝でそういうのではなく、私は、1人の知識分子として、心底、そう思い、確信しているからだ。過去のことを学んだ日本の若者と、戦後日本のことを学んだ中国の若者との間には、必ず良い交流ができる。お互いに先入観をまず取り除こう。そしてリセットされた状態で、相手をもう一回眺めてみようではないか」と語った。

質問5、今年は日中国交正常化40周年を迎え、両国関係は非常に厳しい情勢に直面しているが、両国関係の現状をどのように認識しているか。両国関係を正常な発展の軌道に戻すために必要なことは何か?

宮本氏、「日中関係に何が起ろうと、いくつかの事実を変えることはできない。日本と中国は、永遠に引っ越しできない隣国であり、大国同士である。中国の台頭も未来永劫続かないし、日本の低迷も未来永劫続くものでもない。予見しうる将来、両国は大国であり、アジアのみならず世界全体の将来に責任を負わなければならない。それが経済のグローバル化が実現した時代における両国の宿命なのだ。「和則両利、闘則倶傷」(注:和すれば両方に利あり、闘えばともに傷つく)は、日中関係の哲理だ。そもそも日中が相争えば、アジアの時代やアジアの平和と発展を語ることさえできない。だから我々は「日中戦略的互恵関係」の構築に同意している。そしてこれを進めていくべきだ」と話した。

さらに宮本氏は、「まず両国は、相手を読み間違えた可能性があるのであるから、これ以上相手を刺激する行為をすべきではなく、冷却期間を置くべきだ。そしてその間に外交的処理をしなければならない。日中両国の国民に理解してもらう必要があるのは、外交の本質は妥協にあるという点である。1つの争点だけではなく、その争点と関係する多くの要素を総合的に判断して、妥協案ができる。1つの争点だけに着目すると“譲歩”したように見える。相手も相手国民からそう見られる。それが外交の宿命なのだ。より多くの国民が、外交というのはそういうものであり、しかし大局に立てば、国家として正しい判断をしていることを理解してほしいと思う」と述べた。(提供/人民網日本語版・翻訳/YX・編集/内山

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