<日本人が見た中国>ケンカの後でも一緒に晩飯を…日中関係のあるべき形

Record China    2012年12月26日(水) 18時46分

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尖閣問題の日本国有化に端を発した今回の日中問題が、すでに3カ月以上尾を引いている。中国で活動する日本人の役者として、9〜11月の3カ月間は厳しいものがあった。日中友好関連行事の延期、ドラマの出演契約白紙と散々だった。資料写真。

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尖閣問題の日本国有化に端を発した今回の日中問題が、すでに3カ月以上尾を引いている。中国で活動する日本人の役者として、現在はおかげさまで次作の準備に入っているものの、9〜11月の3カ月間は厳しいものがあった。日中友好関連行事の延期、ドラマの出演契約白紙と散々だった。

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当時、中国の所属事務所のスタッフが私にこう言った。「今回の件で我々はある意味、“無実の被害者”かもしれないな。この国で活動している全ての日本人がそうなのかもしれない」。自分が本当の無実の被害者なのかどうかはわからない。しかし、今回の件で僕のように憤りを感じている人は沢山いるだろう。また僕以上に悔しい思いをしている人も沢山いるだろう。

最近、日中両方で“相手への依存脱却”といったようなことが議論されている。しかし、地理的には永遠に隣国同士である両国が交流を絶って、何のプラスがあるのか?ここまで事を荒立てない方法はあったのではないか?常々そう思う。自国の国益を前提とした隣国・諸外国との自由で円滑な経済・貿易関係や民間交流は経済回復にとっても必須条件のはずだ。2012年11月までの統計では、世界の対中投資額が3%強減ったにも関わらず、日本からの対中投資額は10%以上も増加したそうだ。尖閣問題があっても、この数値である。

以上のことを踏まえたうえで、偏狭なナショナリズムを煽(あお)る一部の右傾した政治家や、ネガティブキャンペーンばかり展開するメディアに左右されず、両国民がグローバルな思考を持つこと、そしてそのような思考を兼ね備えている国家リーダーを支持することが大切だと思う。

真の友好国とは何なのだろう?この40年にわたってこれを唱え続け、両国間で尽力された人物がたくさんいた。しかし、国交正常化40周年である今年、このような事態となった。今後、個人的には日中友好という言葉をあまり使いたくない。形だけの“日中友好”など意味がない。親友同士でも時には意見の衝突があるし、つかみ合いのケンカもある。でも、お互いが再び歩み寄って問題を解決する。そして親友として絆を深めていくものだ。

これからの日中関係は、極端かもしれないが「つかみ合いのケンカをした後、一緒に晩飯をして酒を飲み交わすような関係」にならないといけないように思う。背中合わせになって目も合わせず、沈黙を続けるような状況になってはいけないと思う。日中の国民同士が真のパートナーシップを築けることを信じたい。

中国には少なくとも約14万人の日本人が住んでいると言われ、日本には約46万人の中国人が住んでいると言われる。だから、“無実の被害者”などといって状況をただ悲観視していたくはない。ある意味、アンチ平和的な発言をする人、無作為に世間を煽るような論評をする者こそが、国籍を問わず悲しき被害者なのかもしれない。12月21日午前、中国では国営テレビが全国ネットで、丹羽前駐中大使が出席した昼食会の模様を報道していた。日中に関する話題が前向きに報道されているのを見てちょっぴりうれしくなった。お互い相手の前向きな思いを発信していく、正にこれが元の軌道に戻る最善の方法かもしれない。

矢野浩二(やの・こうじ)

バーテンダー、俳優の運転手兼付き人を経てTVドラマのエキストラに。2000年、中国ドラマ「永遠の恋人(原題:永恒恋人)」に出演し、翌年に渡中。中国現地のドラマや映画に多数出演するほか、トップ人気のバラエティー番組「天天向上」レギュラーを務める。現在、中国で最も有名な日本人俳優。2011年、中国共産党機関紙・人民日報傘下の「環球時報」主催「2010 Awards of the year」で最優秀外国人俳優賞を日本人として初受賞。中国での活動10年となる同年10月、自叙伝「大陸俳優 中国に愛された男」(ヨシモトブックス)を出版。

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