<コラム>金正恩委員長の新年辞から見えて来た、北朝鮮の課題

北岡 裕    2019年1月15日(火) 18時30分

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元旦といえば、故郷に帰ってのんびりと過ごす。家族とおせち料理を食べ、届いた年賀状を読んだり、初詣や福袋を買いに行く。そんな方が多いと思います。ところが北朝鮮に関心ある人々は少し違います。写真は筆者提供。

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あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。さて元旦といえば、故郷に帰ってのんびりと過ごす。家族とおせち料理を食べ、届いた年賀状を読んだり、初詣や福袋を買いに行く。そんな方が多いと思います。

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ところが北朝鮮に関心ある人々は少し違います。朝からそわそわとしています。毎年元旦に発表される、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の新年の辞、ここで何が語られるか発表されるのを待っているのです。私の場合は、韓国・聯合ニュースのアプリからスマートフォンに上がってくる速報を見ています。

そこまで慌てなくても仕事始めから数日もすれば、朝鮮総連の機関紙「朝鮮新報」に新年辞の日本語訳が載ります。ホームページから閲覧が可能です。

この新年辞は、いわゆる所信表明演説といえます。昨年1年はどんな1年だったか。そして今年をどういう1年にするかということを金委員長自ら語ります。

2018年の新年辞では「南朝鮮(韓国)で遠からず開かれる冬季オリンピック競技大会について言うなら、(中略)大会が成功裏に開催されることを心から願っている。こうした見地から、われわれは代表団の派遣を含めて必要な措置を講じる用意がある」と平昌冬季五輪への参加の意志について述べていました。その後五輪参加だけでなく、中国、韓国、米国との相次ぐ首脳会談など、金委員長自らトップ外交を展開した激動の1年でした。

さて2019年はどうでしょうか。今年は執務室から座って語りかけるように演説する金委員長の姿が印象的でした。演説前に執務室に入る映像も流されていました。昨年はかけていたメガネを外しスーツ姿、人民が必ずつけているバッチもつけていませんでした。新年辞で語られた内容の中から、電力問題について書いておこうと思います。ニュースでは対外関係に注目が集まりがちですが、新年辞を読むと国内事情や課題も見えてきます。

今年の新年辞では「今年、社会主義経済建設で提起される最も重要かつ差し迫った課題の1つは、電力の生産を画期的に増やすことである」と、電力と石炭火力発電の重要性について触れています。北朝鮮では水力発電と火力発電が中心ですが、冬季、水力発電は低温により発電力が大きく低下します。

最近訪朝した複数の人から、平壌で停電がほぼなかったと聞きました。特に毎年訪れている方は行く度に電力事情の改善を感じると言います。しかし地方都市はどうでしょうか。2015年に訪朝した際、沙里院(サリウォン)市の住宅には住民個人が設置した太陽光パネルが並び、14年に完成したばかりの衛星科学者住宅地区の住宅には中国製の充電器が置いてあり、厳しい電力事情がうかがえました。一方で北朝鮮に対する経済制裁を日本は行っていますが、高性能の充電器や太陽光パネルは“売れる”商品ではないか。とも感じました。厳しい経済制裁の中での電力の安定供給は現在の北朝鮮が抱える大きな課題と言えるでしょう。この課題をどう克服するのか。来年の新年辞でどう総括するのか。注目です。

■筆者プロフィール:北岡 裕

1976年生まれ、現在東京在住。韓国留学後、2004、10、13、15、16年と訪朝。一般財団法人霞山会HPと広報誌「Think Asia」、週刊誌週刊金曜日、SPA!などにコラムを多数執筆。朝鮮総連の機関紙「朝鮮新報」でコラム「Strangers in Pyongyang」を連載。異例の日本人の連載は在日朝鮮人社会でも笑いと話題を呼ぶ。一般社団法人「内外情勢調査会」での講演や大学での特別講師、トークライブの経験も。過去5回の訪朝経験と北朝鮮音楽への関心を軸に、現地の人との会話や笑えるエピソードを中心に今までとは違う北朝鮮像を伝えることに日々奮闘している。著書に「新聞・テレビが伝えなかった北朝鮮」(角川書店・共著)。

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