黄 文葦 2019年2月11日(月) 9時0分
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日本に暮らす外国人の多くは、「日本人の質問」でぱっと自分が「外国人」であることを思い出させられる体験があるだろう。写真は横浜中華街。
日本文学研究者のドナルド・キーンさんが著書「日本人の質問」の中、「いつお国へ帰りますか」「刺身は食べますか」など日本人の定番の質問を挙げている。戸惑い、時にはうんざりしてきたという。ドナルド・キーンさんはそれらの質問から日本人の精神構造と文化を分析している。
日本に暮らす外国人の多くは、「日本人の質問」でぱっと自分が「外国人」であることを思い出させられる体験があるだろう。私の日本で20年近く暮らしており、「外国人」という生き方を存分味わってきた。私もいくつか面白くて考えさせられる「日本人の質問」を取り上げたいと思う。
例えば、「黄さん、この辺りでどこの中華料理がうまいですか?紹介してください」「黄さん、よく餃子を作りますか?」「え~!黄さん冷たい水が飲めるの?中国人はいつも温かいお湯を飲むじゃないか」「太極拳できますか?え、できないですか?中国人は皆できると思っていた。私は太極拳を勉強しましたよ。体にいいから」などなど。
私は日本での暮らしが長いからか、普段外であまり中華料理を食べない。家でも「無国籍風料理」が主流である。中国の南方の出身なので餃子が好きだが、餃子を作る習慣はない。冷たい水にもずいぶん慣れてきた。水道水もそのまま飲む。太極拳の質問が一番かわいいと思った。なぜ太極拳を勉強しないのかと、真剣に考えさせられた。中国人として中国人らしいことが1つや2つあればいいと思う。
戸惑ったこともあった。フリージャーナリストの立場から日本のマスコミのあり方を批判すると、「中国のマスコミには言論の自由がないのに、なぜ日本のマスコミを批判するの」と言われた。このような声にどうこたえるのか。中国人だけれど、中国人を代表する、ましてや中国政府を代表する立場ではない。中国人である前に、私は人間である。最近、「地球星人」という言葉がお気に入りである。フリージャーナリストという身分を大事にしている。
最も感動させられた日本人の話も紹介したい。日本人が中国人に対し「情けない行動」をしたと報道が流れた際、知り合いの日本人から「同じ日本人として申し訳ない」と言われた。
これらの日本人の質問や言葉に好意と単純さを覚えた。申し訳ないが、さらに言えば、さまざまな「日本人の質問」を深く考えると、日本人が自身と外国人の間にはっきり一線を画していることが垣間見える。「外国人だから日本人とは違う」という先入観がある程度かたまってしまうのかもしれない。マスコミが伝える外国人のイメージが固定化するせいか、大衆はステレオタイプがなりがちである。
言うまでもなく日本はすでに「移民大国」になっている。世界第4位の外国人労働者受け入れ国だそうだ。4月から施行される改正入管法により、農業や介護などの14業種で外国人労働者の受け入れが始まる。政府は今後5年間で最大約35万人を受け入れるという。
さて、大勢の外国人を受け入れるための環境と心の準備は整っているのだろうか。心の底に抵抗感があるかどうか、と自問してはいかがだろうか。
最近、ネットのニュースで「労働人口が減少する一方、外国人とAIがライバルに」という言葉を見かけた。外国人をAIと同類することに違和感を覚えた。外国人は日本で仕事するだけではないので、人間として生活する上での感情と行動を考慮すべきである。
昨年末に観た人気刑事ドラマ「相棒」の内容を克明に覚えている。「外国人を無差別に襲撃する自転車集団が街に出没し、ある政治家が支持を得るため、外国人受け入れに反旗を翻す」という内容なのだが、このドラマの物語から現実が遠ざかっていくように祈念したい。
外の人が内に温かく迎えられるために、内の人が常に外国人が自分と同じく人間であるというシンプルな考え方を持ったほうがよろしいだろう。もちろん、外国人も自身が日本では特別な存在ではないと思われるように努力しなければならない。
■筆者プロフィール:黄 文葦
在日中国人作家。日中の大学でマスコミを専攻し、両国のマスコミに従事。十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。2000年の来日以降、中国語と日本語の言語で執筆すること及び両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。Facebookはこちら「黄文葦の日中楽話」の登録はこちらから
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