中国ビジネス「時流自在」21■これからの中国ビジネス(7)日本製品ボイコット収束へ

Record China    2013年1月18日(金) 5時10分

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昨年9月の反日デモに始まった日本製品に対するボイコット運動も、昨年末から今年にかけて現地では収まりを見せ始めているようだ。写真は日本車。

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昨年9月の反日デモに始まった日本製品に対するボイコット運動も、昨年末から今年にかけて現地では収まりを見せ始めているようだ。

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もっとも組織的な攻撃を受けたと言われる日本車販売では、ホンダは今年1月から通常の一日2交替の生産体制(広州工場)に、武漢工場はすでに昨年末から以前の2交替の常態に戻っている。広東省における東風日産の販売は100%回復、全国規模では80%まで回復と報道され、トヨタの世界販売は過去2年連続で過去最高を記録し、中国での打撃はあったものの、アメリカの景気回復もあって2012年通年で前年比22%の伸びを示した。

しかし中国全体をみれば、乗用車・バス・トラックすべての自動車販売の年間実績が1900万台超と世界最大の自動車販売市場となった中国で、今年の予想も2000万台を見込む中、日本車の販売実績は前年比2割減程度にとどまっており、昨年後半からの中国景気後退に9月以降の反日運動もあいまって、実際には依然としてまだ厳しい状況にあるが、各社とも現実をしっかり把握して、生産・販売ともに堅実な対策をとっている。

習近平氏、「改革開放継続」を強調 

北京オリンピック直後に始まったリーマンショックに続き、上海万博後には欧州信用危機も発生して世界経済が停滞する中、中国経済も輸出減少の影響を受け、以前のような成長力を失いつつあるように見える。こうした中、就任したばかりの習近平総書記は昨年12月11日に広東省を視察し、「改革開放政策は今後も停滞・後退させない」と声明、天安門事件後の中国投資ブームを引き起こしたトウ小平の広東視察大号令を彷彿とさせた。

胡錦濤国家主席も2012年末に「2013年も12年と同様、中国が力強く、持続可能なバランスのとれた世界経済の成長を促す取り組みを強化していく」と演説している。

中国と日本を頻繁に往復している日本人ビジネスマンたちの話を聞いても、この年末年始は飛行機もホテルも満員、飲食品はじめ日本製品が一般の店頭に並び始め、昨年前半の雰囲気に戻っていると言う。日本製品の店頭販売に対する嫌がらせはあっても、中国政府の許認可関係、企業誘致面で反日の悪影響は聞こえてこない。

昨年の党大会で指導部は5年間での所得倍増計画を明確に示し、今年もすでに北京(+11.1%)や浙江省(+12.9%)などで二桁の最低賃金引き上げが政府から通達された。

 

人民元についても引き続き国際化(香港などオフショアマーケット拡大と自由化)、為替レート上昇が続く見込みであり、年明けから進んでいる円安もあいまって、これまでの「中国でコストダウン製造、海外市場に輸出販売」型中国ビジネスは急速に立地条件が悪化しつつある。今後は従来の低コスト生産目的企業の日本復帰あるいは第三国移転が進む一方で、中国は「市場としての魅力」がますます増していくものと思われる。

元高・円安が中国向け輸出に更にドライブをかけ、80年代から30年続いてきた日本の政府開発援助と民間事業投資の生産体制が永年の苦難を乗り越え、ようやく軌道に乗り始め、いまや「国内販売シフト」により刈り取りの時期に入っている。この機会を傍観し、徒に手をこまねく必要もないだろう。

他方で、急速な経済成長を遂げた中国は、環境保護、人体への安全性、品質規格の政府規制、あるいはバブル投機資金流入を防ぐための外貨管理規制が非常に厳しくなってきており、東日本大震災の放射能事故、反日デモ以降は通関、新規投資にもこれらの影響が色濃く出始めている。

▽焦らず、慌てず、諦めず 

このような環境変化の中で、反日デモ後の中国市場において、以下のような日系企業の賢明な対策が見え始めてきた。

(1)中国工場での製造、国内販売が主力に

⇒従来のコストダウン・輸出型はタイ、ミャンマー、ベトナム等第三国へ移転

あるいは生産性の高い日本に回帰

(2)日系「中国ブランド」の開発、欧米メーカーを含めたOEM生産、部品生産市場など、「中国製品」として製造・販売

(3)広大な中国大陸に適した「インターネット販売市場」が急成長、有望

「焦らず、慌てず、諦めず」、展望を持って柔軟に臨むことが中国ビジネス成功の道である。円安を背景として、世界でも非常にコストパフォーマンス、生産性の高い日本への製造業の復帰により、日本のデフレ解消とともに、雇用・景気の回復の効果も見込まれるだろう。あるいは、日系企業がミャンマーやラオス・カンボジアなどでも製造し、シンガポール、香港を経由して中国市場向けに輸出する戦略も考えられる。

中国生産がすでに定着し中国で販路開拓を推進している日系企業では全国販売網の拡大構築とともに、低価格・高品質・中国消費者向け中国ブランド・モデルの開発が進み、今後の中国市場では外資・内資の区別のない激しい市場競争とともに価格デフレ(値下げ競争)も始まる可能性が考えられる。

しかし、何といっても経済より政治が優先され、様々な戦略的外交が展開される中国である。昨年から引きずっている尖閣リスクはいまだに大きな未知数であり、南方週末紙の社説書換に端を発する言論の自由を求める声も内外で高まっている。

各日系企業とも現場の危機管理対策については最優先で万全を期す必要があるだろう。

(<時流自在>は筧武雄・チャイナ・インフォメーション21代表によるコラム記事)

<筧武雄氏プロフィール>

一橋大学経済学部卒北京大学留学、横浜銀行北京事務所初代駐在員、同行アジアデスク長、海外経済協力基金(OECF)派遣出向などを経てチャイナ・インフォメーション21を設立。横浜国立大学経済学部非常勤講師、神奈川県産業貿易振興協会国際ビジネスアドバイザーなど多くの役職を経て、現在も横浜市企業経営支援財団グローバルビジネスエキスパートなど、日本企業を支援する中国ビジネスコンサルタントとして活躍中。

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