<羅針盤>AI時代に気をつけたいこと=マニュアル化は、創造性に乏しいデジタル人間生む?―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2019年2月24日(日) 6時40分

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世は挙げてAI(人口知能)がもてはやされており、かなりの職種ではAIが人間にとって替わるとも言われている。既に多くの分野で単純なマニュアル化が進み、人間ならではの臨機応変かつ柔軟な対応が希薄になっていると感じることが多い。

世は挙げてAI(人口知能)がもてはやされており、かなりの職種ではAIが人間にとって替わるとも言われている。既に多くの分野で単純なマニュアル化が進み、人間ならではの臨機応変かつ柔軟な対応が希薄になっていると感じることが多い。

京都のあるコーヒーショップに入ったときのこと。広くて閑散としていたので適当なところに座ろうとしたら若いウエートレスが、「おはようございます。お一人ですか。どうぞこちらへ」とずっと奥にある2人席に案内してくれた。「ここでないとだめなの」と尋ねると、「申し訳ありません。お1人ですから」には私も口あんぐり。

 

新幹線が東京駅に着いた。気にもしていなかったが、2分ほど遅れていたらしい。「本日はJR新幹線をご利用下さいましてありがとうございました。列車は定刻より2分遅れて到着いたしました。お忙しいなかご迷惑をおかけして申しわけありません。心よりおわび申し上げます」とのアナウンス。2分のことで心よりおわびなら一時間遅れならどんな表現のおわびになるのかなどと考えてしまった。

 

何と律義な車掌さんだと感心するのだが、どう考えても2分の遅れと心よりおわび申し上げますの組み合わせがピンとこない。ウエートレスも車掌さんもマニュアルどおり何の疑間もなく案内し、読んでいるのである。物事には自然と許容されてしかるべき範囲があり、臨機応変さも必要である。

この話を友人にしたら「君、まるでぼやき漫才だよ」と笑われた。「ああ僕も年をとったのかなあ………」と思ったが、それにしても臨機応変を許さぬほどにマニュアルでしばられた行動には、何の潤いも温かさも感じられない。

ある労働事務所が企業の人事担当者を対象に若い社員の特徴をアンケートで調査していた。「言われたことを言われたとおりにはするが、そこから出ようとしない」が70%を占め1位だった。これも学校での「これは良い、これは悪い」という“イチ・ゼロ”だけを教えて個性や創造性のないデジタル人間に育ててしまった結果の延長ではなかろうか。

“イチ・ゼロ”の世界――。コンピュータやAIが得意とする分野であろう。マニュアルに縛られることなく、人間特有の機微や感性を失わないようにしたいものである。

<羅針盤篇35>

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。公益財団法人・藤原歌劇団・日本オペラ振興会常務理事。エッセイスト。

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