洲良はるき 2019年4月17日(水) 23時30分
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以前にも書いたが中国の最新J-20ステルス戦闘機は、しばしば推力不足が指摘されている。写真はJ-20。
先月、中国のポータルサイト捜狐は、「中国はWS-15エンジンでアメリカに追いつけるか?アメリカのエンジンはモンスターだ」というタイトルの記事を掲載していた。
WS-15エンジンというのは中国が開発中の次世代航空機用エンジンだ。以前にも書いたが中国の最新J-20ステルス戦闘機は、しばしば推力不足が指摘されている。
捜狐は次のように書いている。「WS-15エンジンが運用されることになれば、中国の現在の状況は変わるか?WS-15エンジンは世界レベルの好敵手となれるか?正直に言うと、中国のエンジンと世界最高のエンジンではその差は歴然である」
捜狐の記事では比較対象にF-35ステルス戦闘機に採用されているF135エンジンを取り上げている。しかし、アメリカだって現状にとどまっているわけではない。
今年の2月27日にはアメリカの航空機用エンジンメーカーであるGE(ゼネラルエレクトリック・アヴィエーション)社が、戦闘機用の次世代エンジンであるXA100の詳細な設計が完了したと発表している。GE社はエンジンのテストをしてデータを集め、さらにエンジン生産のための技術的リスクを軽減する完熟作業へと進むことになる。
GE社のXA100エンジンの競合相手としては、アメリカのP&W(プラット・アンド・ホイットニー)社のXA101エンジンがある。2社のエンジンが審査され、勝利したほうが量産化されることになるだろう。
新型エンジン開発計画にはフェイズ1とフェイズ2があり、今回GE社が設計を終了したとしているのはフェーズ1のものだ。フェーズ1のエンジンはF-35ステルス戦闘機に換装できる大きさで設計されている。現在、F-35ステルス戦闘機はF135エンジンを採用しているが、この組み合わせには熱管理に課題があることが知られていた。
英字軍事雑誌『エアーインターナショナル』(2019年4月号)は、「新型エンジンでおそらく熱管理性能が極めて劇的に向上する」「必要に迫られてフェイズ1の競合では、GE社とP&W社に熱管理の改善が要求された」と、書いている。「米空軍は2025年以降にF-35のエンジンを換装する可能性を詳細に考慮している」ともしており、この新エンジンがF-35に採用される可能性は高いといえるだろう。
GE社の公式ホームページには、このエンジンはF135よりも10パーセント以上推力が増大し、25パーセントまで燃料消費率が向上するとしている。推力も向上しているものの、このエンジンは燃費が重視されている。これまで推力だけをみて戦闘機用エンジンの技術的レベルを比較するようなこともあったが、今後は、あまり意味がなくなるかもしれない。
フェイズ1の競合で敗北した側もエンジンの開発をやめることはない。すでにGEとP&Wの両社と2018年にフェイズ2の契約がなされており、両社はF-35とは別の将来の戦闘機に採用されるさまざまな推力・重量・寸法のエンジンについての研究開発をすすめる。
現在のところフェーズ2エンジンの詳細については明らかにされていない。GE・アヴィエーション社のゼネラルマネージャー(最新戦闘エンジン担当)であるデイビッド・トゥィーディ氏によると、新しいフェイズ2の研究開発は現段階では機密扱いであり、詳しく語れないのだという。
アメリカが開発したF-117ステルス戦闘機は、開発されて実際に部隊で運用されはじめても存在が公開されることはなかった。現在のアメリカが新型ステルス長距離爆撃機B-21の研究開発をしていることは知られているが、秘密主義を強めており、これまでの類似の開発で一般に公開されていたようなこともほとんど公開されていない。これは中国やロシアが技術を盗んだり、早い段階から対策を講じたりすることを警戒してだとされている。
■筆者プロフィール:洲良はるき
大阪在住のアマチュア軍事研究家。翻訳家やライターとして活動する一方で、ブログやツイッターで英語・中国語の軍事関係の報道や論文・レポートなどの紹介と解説をしている。月刊『軍事研究』に最新型ステルス爆撃機「B-21レイダー」の記事を投稿。これまで主に取り扱ってきたのは最新軍用航空機関連。twitterはこちら
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