呂 厳 2019年4月29日(月) 9時0分
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東山魁夷の絵画展に行ったことをきっかけに、私は彼の著書を次々と買い求めるようになった。
昨年、東山魁夷の絵画展に行ったことをきっかけに、私は彼の著書を次々と買い求めるようになった。うち1957年に新潮社から出版された「わが遍歴の山河」には東山一族が戦争中に体験した困窮や離別が記されている。まさにこの悲しみの歳月が東山に自然と誠実に向かい合うことを学ばせ、彼独特の風格を形作ったのだ。この本は東山について知る上で最適の1冊と言える。
同著は絶版となっており、私はずっと入手できないでいた。ところが、思いがけずネット通販のアマゾンで売られているのを発見。しかも8000~1万円はしそうなその本に付けられた値段はたったの1円で、私は即座に購入を決めた。売主は北海道の古書店だ。郵送料は400円前後だったと思う。注文から数日もたたないうちに、ビニールの緩衝材で丁寧にくるまれた本が手元に届いた。ページはすでに変色していたが、保存状態は良い。
それからというもの、私の頭には「この古書店はどうやって利益を得ているのだろう」という考えが繰り返し浮かんだ。いくら考えても答えは出なかったが、メディア業界のある先輩の話を聞いてようやくモヤモヤが消えた。
同氏は「日本の古書店経営者の多くは本を愛する人だ」と語り、「彼らが毎日の生活の中で最大の楽しみとしているのは本棚のほこりを払って、本の臭いを味わうこと。そして1冊、1冊のために次の行き先を見つけることが最大の慰めだ。理解者が見つかれば、無償であっても喜んで送ってくれるだろう」と教えてくれた。
この説明を聞き終えてすっきりとした私に突如込み上げてきたのは、「次回、北海道に行く時は必ずこの店を訪ねてみよう」という思いだ。
■筆者プロフィール:呂 厳
4人家族の長男として文化大革命終了直前の中国江蘇省に生まれる。大学卒業まで日本と全く縁のない生活を過ごす。23歳の時に急な事情で来日し、日本の大学院を出たあと、そのまま日本企業に就職。メインはコンサルティング業だが、さまざまな業者の中国事業展開のコーディネートも行っている。1年のうち半分は中国に滞在するほど、日本と中国を行き来している。興味は映画鑑賞。好きな日本映画は小津安二郎監督の『晩春』、今村昌平監督の『楢山節考』など。
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