人民網日本語版 2019年6月13日(木) 21時20分
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家電はダイソン以外は使わない。桜は日本でなければ行かない。パンは全粒粉でないものには手を出さない…物質的な条件が改善されるのにともなって、人々は洗練された生活をますます熱望するようになっている。写真はダイソンのドライヤー。
家電はダイソン以外は使わない。桜は日本でなければ行かない。パンは全粒粉でないものには手を出さない。服はデザイナーズブランドしか着ない…物質的な条件が改善されるのにともなって、人々は洗練された生活をますます熱望するようになっている。しかし現代の若者の一部には自分の状況を省みず、「質の高い生活」という言葉に彩られた後払い消費、高額の消費を追い求めすぎる傾向があり、あらゆる場面に広がる洗練を追求してサイフの残高がマイナスになっている。人民網が伝えた。
■人前では「いい感じ」、人のいないところでは「すごいことに」
南京出身の青年・徐飛(シュー・フェイ)さん(28)は文化メディア業界で働いており、最近、購入から1年にもならない国産車を「バージョンアップ」し、30万元(約480万円)するアウディを分割払いで購入した。格好の良い見かけの裏側では、クレジットカードに6ケタに達する返済が控えている。頭金は何とか両親から出してもらえたものの、徐さんの7000元(約11万円)足らずの月収では、衣食など必要な費用を除くと、毎月の最低返済額にも届かず、困窮状態に陥っていることは明らかだ。それでも、「自分はなんと言っても文化的人間なので、買い換えないであんなボロ車に乗っていたら、評判が落ちてしまう」という。
王玲(ワン・リン)さん(30)は江蘇省北部の地方都市出身で、今は蘇州市の対外貿易会社で働いている。月収は6000元(約9万6000円)近い。品よくみせるため、同僚とよく会社近くの日本料理店で60-70元(約960-1120円)のビジネスランチを食べ、午後になるとスターバックスのコーヒーを頼んだり、手作りケーキを注文したりする。計算すると、仕事のある日は昼食と午後のお茶だけで100元(約1600円)以上使っている。「家賃は2500元(約4万円)。ほかに日用品、友人とのつきあい、プレゼントなどもあって、収入が支出に追いつかない。その場しのぎの連続で、現在7万元(約112万円)ほど借金がある」という。
それでも王さんは、「あまり気にしていない。カードを使うと、お金がなくなるという感覚をそれほど強く感じない。それにSNSにベストショットを発信できるなら、お金がなくなる痛みは完全に相殺される」と話す。
こうしたケースは身の回りのあちこちで目にすることができる。江蘇省南部の都市で働く女性の周潔(ジョウ・ジエ)さんは、SNSでは白い服がひらひらとして「仙女」のようなイメージだ。アバンギャルドな芝居や野外音楽イベントにもよく顔を出す。周さんの借りている部屋を訪れると、30平方メートルほどの単身者用アパートには、汚れた服や靴がちらかっていた。普段の食事は炭酸飲料とインスタントラーメンだという。
周さんは「洗練された人という『キャラ設定』には、毎月5000元(約8万円)の収入ではどうやっても足りない。人前では『いい感じ』だけれど、人のいないところでは『すごいことに』なっている」と笑う。
■メンツがお金をしのぐという気まずさ
格調高い優雅なSNSの世界から抜け出ると、そこには厳しい現実の世界が目の前に広がっている。
ネット金融サービスの融360が行った消費調査によると、中国の90後(1990年代生まれ)はクレジット市場で49.31%もの割合を占め、アジア地域の同年代で比較すると1位だという。おまけにそのうちの28.57%が消費者ローンを利用して、別の借金の返済に充てているという。
また、現代の若者の多くは、人と群れることができないのは人とうまくいかないということであり、変な人という意識を抱いている。そこで「群れていることを偽装する」状態に陥り、そのために大金をはたく人が出てくる。
河南省から蘇州に出稼ぎに来た周超(ジョウ・チャオ)さん(26)は、「洗練されている同僚たちを見ると、自分もそういう風に偽装しなければ、仲間に入れてもらえなくなる。同僚には蘇州出身で、家が豊かという人が多い。頑張って自分を装わなければ、すぐに排除されて、惨めなことになる」と話す。
華東師範大学で心理学を教える陳黙(チェン・モー)教授(上海市心理協会基礎教育専業委員会事務局長)は、「『洗練を装う』ことはこの世代の若者の心の中にある孤独と関係している。今の若い世代は、特に90後は一人っ子が多く、生まれながらに孤独感を抱えてこの世界にやって来た人たちだ。そこでこの層は心の中の感情を満たすため、自分の思い通りにやってみたいと強く願う」と説明する。
■洗練は高額消費では実現できない
暮らしの中に特別感があるのは悪いことではないが、現実とかけ離れた「洗練の偽装」のために、大変なことになり、さらには「隠れ貧困」に陥ったなら、得るものより失うものの方が大きい。
心理学の専門家は、「新しい価値判断ができるようになるには、物質が内面の質より重要という見方を改めなければならない。物質は一時的なものに過ぎないが、内面の質は一生のものになる、私たちは一時の虚栄心のために無理をして自分を装う必要はない。同時に、客観的に自分を評価し、自分の能力とレベルを正確に認識するべきで、功を焦ったり、消費能力を超えたものを無理に手に入れようとしたりする必要はない」と述べる。
実際、真実と洗練は矛盾するものではない。
中国社会科学院社会学研究所の李銀河(リー・インホー)研究員はかつて、「洗練された暮らしのためにはまず冷静であること、無知でないこと、すなわち自分が存在することを意識することが必要だ。次に落ち着いていること、不安定でないことが必要だ。さらに喜びがあること、苦痛でないことが必要だ。そこで洗練は高額消費によって達成できるものではなく、自分の存在と価値を意識することであり、一種の厳しい要求であり、すぐには達成できない生き方であるといえる」と述べている。
作家の林徽因(リン・フイイン)はかつて生活が苦しく放浪の日々を過ごし、ぼろぼろの狭い家に住んでいたが、中古品ショップで古い家具や古い書物を買い求める暮らしを続け、自分で簡単な書棚も作った。木の腰掛けにきれいな布を敷き、素焼きの壺に野の花をいっぱい飾った。
若い者はもがき努力して、未来のために真に洗練された暮らしを作り出すべきだ。今の年齢では、アイロンをかけた白いシャツを着て、スニーカーを履き、笑顔で毎日を過ごせば、夢があり洗練されているといえる。
私たちは何のために努力しなければならないのか。欲しいものがとても高価だったり、行きたい場所がとても遠かったり、好きな人がとても優秀だったりしたら…星空を見上げつつ、しっかり大地を踏みしめることだ。(提供/人民網日本語版・編集/KS)
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