日本僑報社 2019年8月24日(土) 12時20分
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日本と中国で売られているペットボトルの水。その違いに気づいた人はいるだろうか。中南財経政法大学の劉錦さんは、日本のペットボトルの水に「一口分の思いやり」を感じたようだ。
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日本と中国で売られているペットボトルの水。その違いに気づいた人はいるだろうか。中南財経政法大学の劉錦さんは、日本のペットボトルの水に「一口分の思いやり」を感じたようだ。以下は劉さんの作文。
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「中国の水って、気前がいいのね」
ペットボトルのふたをそっと開けながら、多恵さんが私に言った。多恵さんは中村先生の妹さんで、ゴールデンウィークを利用して、武漢にやって来た。多恵さんが前回武漢に来たのは2012年で、6年ぶりとなる。武漢のあまりの発展ぶりに、目を丸くして驚く多恵さんに、先生は「6年前は建設中だった地下鉄が今では5路線、空港も新しくオープンしたんだよ。武漢もなかなかすごいでしょう」と、中国人以上に誇らしげだった。
今回、多恵さんとはずいぶん話す機会があった。先生は自分はもう15年も中国にいて、いろいろな面が中華風になってきているだろうから、「純」日本人である多恵さんの細かい所作をしっかり見ておくように私たちに言った。確かに多恵さんの行動は、私たちが礼儀正しいと認識している日本人そのもので、ごみの捨て方に始まり、食事の仕方や往来での声の出し方などマナーの教科書通りだった。
ある日、私は多恵さんと買い物に出かけた。途中でのどが渇き、コンビニに寄って水を買うことにした。いつも飲んでいるメーカーの水を選んで、私はごく普通にふたを開け、ごくごくと水を飲んだ。多恵さんのほうを振り返ると、まだふたも開けずにじっとペットボトルを見つめている。水道水ではないのだから、さすがに日本と同じだろうと思い、どうしたのかと声をかけると、多恵さんは不思議なことを言った。
「中国の水って、気前がいいのね。だって飲み口のところまでいっぱい入っているんだもん」。えっ?毎日飲んでいるのに気にしたこともなかった。そこで、二人でもう一度コンビニに入って、売られている水がペットボトルのどこまで入っているか一つずつ確かめてみた。
驚いたことに、ほとんどの中国企業の水が飲み口近くまで入っていた。今まで気にも留めたことがなかったが、水の他にも飲み口近くまで入っている飲み物が結構多かった。日本のはどうなっているのかと、多恵さんに聞くと、ちょうど日本で買った水が一本あるからと言われ、ホテルに帰って比べてみることにした。
さて、比べてみると、日本の水は中国のよりちょうど一口分ぐらい少なかった。この一口の差はいったい何だろう。そういえば、多恵さんはペットボトルのふたを開けている時、ずいぶん注意深く開けていた。「あの、さっき、ふたを開ける時、開けにくかったですか?」と聞いてみると、多恵さんは「ええ、飲み口まで満々に入っていると、やっぱり開ける時にこぼれやすいよね」と答えた。そうか、この一口分が日本の心遣いなんだ。飲む人がそれを心遣いと気づかないほどさりげなく、でも確実に効果を発揮している。
「日本の思いやりってすごい」と多恵さんに言うと、多恵さんはおもしろいことを言った。「私は逆のことを考えていたのよ。中国の料理や飲み物って、いつも少し多めじゃない?これが中国の人の温かいおもてなしなんだなって思ったの。今回、皆さんにはずいぶんお世話になったけど、この一歩ぐっとこちらに来てくれる距離感って、礼儀や敬語を考えちゃう日本ではなかなか感じられないものなのよ」。
私と多恵さんは同じ水のペットボトルを見ながら、全く逆のことを考えていたのだ。「へえ、中国と日本ってまるで凸凹だね。でもこれって、うまくいったら最強のコンビじゃない?」。そう言った多恵さんは、数日後、たくさんの笑顔を残して、日本へ帰っていった。日本の一歩引いた心遣い。私はこれからペットボトルの水を飲む時、このさりげない優しさを周りの人に伝えていきたい。
「ねえねえ、日本の水って、ほんの一口思いやりが入っているんだよ」(編集/北田)
※本文は、第十四回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「中国の若者が見つけた日本の新しい魅力」(段躍中編、日本僑報社、2018年)より、劉錦さん(中南財経政法大学)の作品「ひとくち分の思いやり」を編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。
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