富士山が世界「文化」遺産になった理由―日本人担当者

Record China    2013年7月4日(木) 18時30分

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3日、日本が誇る聖なる山・富士山が世界文化遺産に登録され、現在多くのメディアがこのニュースについて次々と報道している。写真は富士山を世界遺産に申請した静岡県世界遺産推進課の小野聡学術調査班長。

2013年7月3日、日本が誇る聖なる山・富士山が世界文化遺産に登録され、現在多くのメディアがこのニュースについて次々と報道している。しかし、多くの人々はある一つの疑問が浮かんだに違いない。それは、日本が誇る最高峰・富士山はなぜ世界自然遺産に申請されなかったのかということだ。これに対し、人民網は2日に富士山を世界遺産に申請した当事者でもある専門家、静岡県世界遺産推進課の小野聡学術調査班長に独占インタビューを行った。富士山を世界遺産に申請する経緯や、富士山の保護対策について聞いた。

2005年に静岡県と山梨県で、世界遺産登録のための専門部門が設立され、富士山を世界文化遺産に登録させる共同プロジェクトが発足した。2006年に静岡県と政府が世界文化遺産推進課を設立したことで、小野氏が同プロジェクトに関わり、学術調査の分野を担当することになる。この8年間近くの間に、中国の泰山を含む数多くの世界遺産を視察し、富士山の世界遺産登録に関わってきた小野氏はその経緯を最も良く知る専門家だ。富士山の世界遺産登録の結果が発表される前夜、小野氏は今回の結果を非常に重く受け止めていた。世界遺産の登録が成功した現在、小野氏に浮かれた様子は全く見られない。小野氏は「まだ多くのやるべき仕事がある。世界遺産の登録が成功した後、個人的にも特別にお祝いするイベントなど行っていない」と語る。

富士山が世界遺産に登録されたと聞くと、多くの人は世界自然遺産だと思うだろう。しかし実はかなり早い時期に、ある自然保護団体が富士山を自然遺産として申請することを政府に提案していたが、採用されず、その後比較論証を行った結果、最終的に文化遺産として申請することになった。小野氏はこれについて、「富士山を世界自然遺産に申請するには、いくつか問題があった。まず、世界中で富士山のような円錐状の成層火山は決して少なくなく、その中には火山活動がより頻繁で、より代表的な特徴を備えるものも多かった。その次に、自然遺産の条件の一つに自然本来の姿を保っていること、あまり多くの人間活動がなされていないことがあったが、富士山に登る人の数は非常に多く、周辺に旅行施設も比較的多い。このほか、登山活動には大量のゴミが発生する。これもまた、富士山が世界自然遺産に適さない主な原因だった。しかし、文化面においては、富士山は非常に独特な価値を持っていた。富士山が頻繁に噴火していた古の時代から、日本人は富士山を聖山として見ており、出産などにかかわる日本独特の山岳信仰(富士信仰)が育まれた。太古から人々は、神の庇護を得るために富士山周辺を訪れたり、あるいは富士山に登拝していた。最終的に人と自然が信仰や芸術を通して共生する独特の現象を形成した」と説明する。

小野氏は「富士山は決して単なる山ではない。富士山には、数多くの見えない価値が備わっている」と語る。富士山は日本人の信仰や日本の芸術創作の源泉であり、これこそが富士山が独特な存在である理由だという。小野氏は、富士山が世界文化遺産に登録される最大の意義は、世界に向けて富士山の独特な価値を訴求すると同時に、世界に向けて日本文化をアピールできることだと考えている。

申請に当たっては、国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会に富士山の文化価値をいかにアピールするかということ以外に、富士山周辺の住民たちの支持をいかに得るかということも難題となった。周辺の住民は富士山の文化遺産登録に対して、誇りや地元経済へのメリットを感じる一方、登山者が増えることで地元住民の生活に支障が出たり、富士山の自然環境が損なわれたりするのではないかとの懸念を抱いている。この相反する矛盾した気持ちは、実質的にいかに旅行資源の開発と保護の問題を処理するかにつながっている。これは、すべての国が直面する問題でもある。

小野氏は「現地の住民にとって、富士山は頭を上げれば見える身近なものであり、世界遺産に登録されたからといってなんら特別な感情は生じない。しかし、より切実に感じる変化は旅行者の増加によって交通渋滞や喧騒がもたらされることだ。この理由から、より多くの旅行者が来る事を期待している人はそんなに多くはなかった。住民の理解を得るために、申請前と申請後の2つの段階において、コミュニケーションを取って調整しなければならなかった。申請前は、富士山の文化価値について説明し、現地の住民の富士山に対する新たな知識をもたらし、住民の富士山に対する関心や富士山の文化継承への理解を呼び起こした。申請後は、旅行者の増加に対応するために、さまざまな緩和措置を取った。例えば、バスを投入して、登山をする旅行者にバスを利用するよう提唱し、自家用車の利用率を低下させ、混雑を避けるなどだ。これにより、観光客の増加に対する地元住民の不安を和らげた。

世界文化遺産の登録に成功したばかりの富士山は、今月1日から開山の季節を迎え、多くの日本人や外国人旅行者たちが富士山登山に訪れている。先月28日、静岡県と山梨県は7月下旬から富士山登山者に1人当たり1000円の登山費を徴収することを決定した。この措置は旅行者がもたらすストレスを緩和するためと見られている。これに対し小野氏は「登山費を徴収する目的は、登山客抑制のためではなく、旅行者に富士山の環境保護の意識を高めさせるためのもの。両県の関連部門はどの程度の人数が適切なのかを判断し、さらにそれに対応する措置を制定するために、年内に富士山の登山者人数についての統計と分析を行う予定だ」と説明した。

小野氏は最後に富士山の魅力について、「日本最高峰の富士山は標高3776メートルで、周辺の非常に遠い場所からでもその景観を楽しむことができる。別の観光地を訪れた観光客も遠くから富士山を眺め見ることができる。それと同時に、富士山に登って、日本の文化信仰を体験することもできる。富士山にはこのように非常に多くの見どころがある。しかし、それぞれの人の視点は異なる。旅行者は自分の体験を通して、富士山の異なる魅力を発見してほしい」とアピールした。(提供/人民網日本語版・翻訳/MZ・編集/武藤)

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