2013年7月9日午前、日本メディアの報道によると、東京電力福島第1原子力発電所の事故の際、現場で収束作業の指揮を執った吉田昌郎元所長が食道がんのため58歳の若さで他界した。中国でも、「福島の勇士」として知られる吉田氏の訃報を多くのメディアが報じた。環球時報（電子版）が伝えた。

2011年3月に発生した原発事故で、所長だった吉田氏は当時の菅直人首相や東電の反対を押し切り、現場スタッフに最大限の自己救済作業を進めさせ、核爆発の阻止に貢献した。このこともあり、吉田氏と現場スタッフらは海外メディアから「福島の勇士」と呼ばれるようになった。

同年の12月に食道がんと診断された際にも現場にとどまると主張。さらに、手術前には「福島の被災者を放射能から守れるのなら、私の死にも価値がある」と話していた。ところが、2012年に脳出血の緊急手術を受けて以来、吉田氏は療養生活を続けていた。

東電は吉田氏のがんは被ばくと直接的な関係はないと説明しているが、「最前線で陣頭指揮を執っていた吉田氏が、被ばくの影響を受けなかったなどありえない」というのが世論だ。

このほか、2012年の入院期間中、吉田氏は「原発事故での体験を後世に残したい」と語っていたが、病状が思わしくなく願いはかなわなかった。吉田氏は、本を出版できたらその収入を被災地に寄付したいと語っていたという。（翻訳・編集/内山）