東アジア今日は何の日:9月26日~中国が初めて開発した大型旅客機Y-10が初飛行(1980年)

如月隼人    2019年9月26日(木) 5時20分

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上海飛機製造廠が開発した中国初の大型ジェット旅客機のY-10が1980年9月26日に初飛行を行った。しかし結局は実用化されず、開発計画は放棄された。写真は中国商用飛機敷地内に保存されていた同機。

上海飛機製造廠が開発した中国初の大型ジェット旅客機のY-10(運-10)が1980年9月26日に初飛行を行った。同機は飛行試験を繰り返したが結局は実用化されず、開発計画は放棄された。

Y-10は一般的に米ボーイング社のB707旅客機の技術を分析して同様の機体を作る、いわゆるリバース・エンジニアリングによる開発だったとされる。製造されたのは2機だけだった。また、ボーイング707の初飛行が1957年だったことを考えれば、Y-10は実用化に成功していたとしても、すでに「時代遅れ」になってしまった可能性が高い。

Y-10の開発が決定したのは1970年だった。1975年には設計図が完成。76年には静力学的な試験をするための1号機が完成した。地上で安全性確認などのための各種の試験を行ったという。

実際の飛行試験用に作られた2号機の初飛行は1980年9月26日だった。1号機の完成からかなり長い期間を置いていることから、各種の手直しが施されたと想像できる。

Y-10の2号機はその後、130回以上の離着陸を実施し、飛行時間は170時間を超えた。訪れた都市も北京、ハルビン(黒龍江省)、ウルムチ(新疆ウイグル自治区)、鄭州(河南省)、合肥(安徽省)、広州(広東省)、昆明(雲南省)、成都(四川省)、ラサ(チベット自治区)と広範囲に及んだ。特にラサは、高地にあり空気が薄いために飛行機の乗り入れには問題が出がちな場所だ。Y-10は中国製の飛行機として初めて、ラサに乗り入れた。

しかし、試験などを通じてY-10の問題点も明らかになってきた。まず、Y-10の当初設計では金属疲労などを重視して、部品を「頑丈」に作っていた。そのためもあり、飛行機全体として、「お手本」としたB707の重量を大幅に超過した。その後、米国の関連規則を参考に、部品を軽量化した。ところが、今度は飛行機各部の金属疲労が急速に進行した。にもかかわらず、Y-10の重量はまだB707を超過していたという。

飛行時間が100時間を過ぎたあたりで、隔壁に亀裂が生じた。民間航空用の旅客機としての安全確保は困難と考えられた。軍用機または輸送機に転用することも考えられたが、政府は1986年に、開発のための予算を計上しないことを決定し、同機の開発は打ち切られた。

Y-10はまた、国家の指導者が外遊する際の「専用機」とすることが想定されていた。そのため航続距離は8000キロメートルという基準が設けられていたが、そのために乗客数を大きく減らさざるをえないことになったという。しかも、米連邦航空局(FAA)の型式承認を取得するのは「とても無理」と分かった。ということは、首脳専用機として使おうとしても、少なくとも西側先進国への乗り入れは絶望的だ。民間航空機としても国際線には就航させられない。

残る道は国内線への就航だが、乗客数が少ないために採算性は悪く、中国国内線ならば3000キロメートル程度を飛行する能力があれば十分なので、8000キロメートルという長大な航続距離も「全く無駄」ということになる。Y-10の開発は安全性の改良に目算が立たず、仮に改良できたとしても使い道が見いだせない「にっちもさっちもいかない」状態で放棄されたと言うしかない。

なお、Y-10の1号機にはエンジンが取り付けられず、2号機には国産のWS-8(渦扇8)ターボファンエンジンが取り付けられた。WS-8は米プラット・アンド・ホイットニーのJT3Dエンジンを「手本」に開発されたとされる。WS-8は研究と改良を重ねながら12基が製造されたが、Y-10の開発打ち切りにともない、やはり開発が中止された。

【1980年のその他の出来事】

・中華人民共和国がIMFに加盟(4月)

・中国が大陸間弾道ミサイルの発射実験に初成功(5月)

・米テレビ局CNNが開局(6月)

・モスクワ五輪が開催、日米など67カ国がボイコット(7月)

・アジア人初の宇宙飛行士が誕生、ベトナム人ファム・トゥアン飛行士(7月)

・中国首相が華国鋒から趙紫陽に交代(9月)

・イラン・イラク戦争が勃発(9月)

・米国大統領選でレーガンが現職のカーターを破り当選(11月)

・ジョン・レノンが銃殺される(12月)

■筆者プロフィール:如月隼人

1958年生まれ、東京出身。東京大学教養学部基礎科学科卒。日本では数学とその他の科学分野を勉強し、その後は北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。中国については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結局は得」が信条。硬軟取り混ぜて幅広く情報を発信。

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