<直言!日本と世界の未来>中国建国70周年、発展の原動力は「教育」にあり―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2019年9月29日(日) 9時0分

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建国70周年を迎えた中国の発展には国民の教育熱の高さが大きく寄与していると思う。私はかつて毎年のように、中国の大学で講演を行ってきたが、当時強く感じたのは、中国人の高い学習意欲と教育に対する情熱だった。写真は東京で開催された記念祝賀会。

2019年10月1日、中国は建国70周年を迎え、北京では大規模なパレードが行われるという。中国の発展は1978年にトウ小平が主導した改革開放政策によるところが大きい。国内総生産(GDP)は改革開放後の40年で224倍になり、世界経済に占めるGDP比はわずか1.8%から15.2%に拡大。1人当たりの可処分所得も152倍に達した。国際通貨基金(IMF)によると、2014年に、実態に近い購買力平価(PPP)方式で米国を追い抜き世界1位に躍り出た。世界銀行は名目GDPでも十年以内に米中が拮抗すると予想。消費市場としても実質世界一で、貿易総額は199倍に達し、多くの国にとって貿易相手国のトップを占めている。

中国国民の勤勉さと教育熱の高さも発展に大きく寄与していると思う。私は1990年~2000年代初頭に毎年のように、中国の大学で講演を行ってきたが、当時強く感じたのは、中国人の高い学習意欲と教育に対する情熱だった。最近の中国の大学は、国家の発展に向け、研究・教育体制の充実はもちろん、国内外を問わず産業界との連携とベンチャー企業の育成に大変積極的だ。こうした環境の中、中国では優秀な人材が多数輩出され、中国における大学生数は、驚異的なペースで増加した。中国教育部(省)によると、大学生数は3800万人を突破しているという。

一方、日本の大学生数は約300万人程度で、絶対数で圧倒的に中国が勝っている。しかも日本は少子化のため18歳人口が激減しており、大学生数が今後さらに減少していくのは確実である。

我々は、中国で今後さらに増加するであろう高度な知的労働力こそ、中国の本当の強さであることを認識すべきである。日本企業は中国のこうした知的人材の存在を十分念頭に置きながら、中国との新たな関係を築いていく必要がある。絶対数で中国の足元にも及ばない日本がグローバル競争に臨むには、生産性を高め、高付加価値化で勝負するしかない。日本が国際競争力を維持していくには、日本でしか作れないモノや領域を常に開拓する必要がある。そして、技術的に絶えず世界で先行することが大切である。

情報家電、燃料電池、AI(人工知能ロボット、ソフトコンテンツなどを日本が世界に誇れる先端的産業群として強化すべきだ。ナノテク、バイオ、IT(情報技術)、環境などの技術革新は日本の強みである。今後の課題は、日本の優位な技術分野を戦略的に拡充し、日本発のグローバルビジネスモデルとして早期に育て上げていくことだ。

その戦略のコアになるのが「人材」であり、人材をつくり、育てるのが「教育」だ。国際競争力の基盤をつくる「教育」への情熱こそが、日本が競争力を回復する鍵である。日本も産官学連携の下、国家レベルで人学改革や人材育成を進めなければ、中国に後れを取ることは確実だ。国も企業も「人づくり」を急がねばならない時期に来ている。

<直言篇99>

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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