日本僑報社 2019年10月13日(日) 18時0分
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日本と中国は世界的に見れば文化が似ていると言われる。しかし、似ているからこそ異なる部分には大きな落差を感じるのではないか。大連外国語大学の王冕さんは、日中の親子関係の違いに大きな衝撃を受けたようだ。資料写真。
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日本と中国は世界的に見れば文化が似ていると言われる。しかし、似ているからこそ異なる部分には大きな落差を感じるのではないか。大連外国語大学の王冕さんは、日中の親子関係の違いに大きな衝撃を受けたようだ。以下は王さんの作文。
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「あなたは将来いい大学院に入って、名門大学の理系の男の子と結婚しなさい。中国の学歴社会ではそうするのが一番なのよ」
あなたがもし、親からこんな風に言われたとしたら、どんな気持ちになりますか。私はこれまでの人生で、このような話を何度も聞かされました。そして、私が専攻する日本語も親が選んでくれたものです。日本語を勉強しはじめ、やがて日本文化に触れたり日本人と交流するにつれて、あることに気付くようになりました。それは、日中の親子関係の差です。
親子の絆とは一体何でしょうか?大連にある大学で勉強している私は毎週末、近くの実家に帰れるのでみんなから羨ましがられます。しかし、実は私は家に帰るのが嫌なのです。父は大学の教授で、母は裁判官です。今までこの優秀な両親に育ててもらい、とても感謝しています。しかし、愛情はもう十分なのです。友達と映画へ行くと言えばその友達の名前ではなく、大学名を聞かれ、反抗すれば「あなたはまだ子どもだ」と言われます。親子の絆とはこんなにも息苦しく感じるものでしょうか?
私は、自分の将来が見えません。それはどうしてだろうかと長い間悩んだ末に、ふと気付きました。それは、私自身が無意識に自分の将来を親の決断に委ねていたからです。昔から料理と家事が好きな私は将来、平凡だけど本当に好きな人と結婚して専業主婦になりたい。しかし中国で専業主婦というのは、教養がなく自立できない女性が仕方なく夫の世話をするというイメージが残っており、専業主婦という夢はなかなか口に出せませんでした。
そんな時、先年話題になった「逃げ恥」(「逃げるは恥だが役に立つ」)というドラマが私の意識を変えました。主人公のみくりは、専業主婦を立派な職業として捉え、自立した女性が胸を張ってする仕事だと訴えました。さらに私が感動したのは、彼女が両親とも対等な立場で話していた姿です。親が子どもを子ども扱いせず対等に接する姿を見て、私は心底羨ましく感じました。日本の親にとって、子どもは自分の所有物ではなく、一人の個人なのです。
留学生と話していても、彼らは仕事や結婚相手も自分で選べ、自分の未来を作ることができます。つまり、私の場合は、「上からのプレッシャー」でしたが、日本の親は「下からの支え」だったのです。
この一見平凡な気づきは、日本人の知らない日本の新しい魅力だと思います。そしていつか私もみくりや普通の日本人のように、自分の未来を自由に選択したいという思いがふつふつと湧き上がってきました。これまでの私は親の意見に反対しながらも結局従ってきたのは、勇気を出して一歩を踏み出すよりも親に従ったほうが楽だったからかもしれません。このことに気づいた私は少しずつ自分の本心を話すようになりました。
前学期の期末試験で、夢についてのスピーチをする課題がありました。その時、私はどんな夢を発表するか迷っていました。いつもの癖で親の言葉が頭に浮かび、なかなか書き出せませんでした。当日になり、勇気を出して教室の前に立った私は思い切って「私の夢は……専業主婦になることです!」と言いました。その時、笑い声などなく、みんなは温かい笑顔で私を見ていました。非常に励まされた私は、生まれて初めて大きな声で自分の本音を話しました。
「灯台下暗し」という言葉があるように、魅力とは、当人にはわからないもので、他者が発見するものではないでしょうか。日本では当たり前の親子関係も中国から見ると、魅力に満ちています。日本での当たり前と中国での当たり前は全く違うのです。そんな日本の意外な魅力を発見できるのは、もしかすると外国人である私達かもしれません。このようにして、私たちはお互いの国の新しい魅力を発見してゆけると思います。(編集/北田)
※本文は、第十四回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「中国の若者が見つけた日本の新しい魅力」(段躍中編、日本僑報社、2018年)より、王冕さん(大連外国語大学)の作品「キズナのキズ」を編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。
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