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<コラム>ニィーハオー きれいな日本

石川希理    2020年1月6日(月) 20時50分

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現在の日本は「世界で一番きれいな国」といわれる。嬉しい誇らしいことだ。確かに道路周辺などにゴミの散乱は見られない。概ね街中も田舎も、なるほどゴミは落ちていない。

ニィーハオー きれいな日本。

「わ、わわわ」と驚いたことがある。海外にエコノミークラスで出かけた。ビジネスに乗りたいが費用は倍以上だからね(悲)。欧米諸国の乗客も多い。到着するとビジネスクラスが先に降りる。我々はその後である。仕切りのカーテンが開けられてビジネスクラスの椅子の間を通った。

「なんじゃとて!? こりゃ!?」

まあ、コップも、新聞・雑誌も、イヤホーンも、食べかけのおやつの袋も、そこら中に散乱している。豪華なビジネスクラスの椅子の上だけではない。床にも「わざとぶちまけたのか?」という感じである。中国人ではない。欧米人の旅客である。中国人のことが話題になる場合が多いが、どうも日本人を除いて世界中はこういう感覚なのだろうか。

前に本稿の『自分の背中を見よ』で、日本も昔は中国の公害と同じ有様だった、と書いた。でも、現在の日本は「世界で一番きれいな国」といわれる。うれしい誇らしいことだ。確かに道路周辺などにゴミの散乱は見られない。概ね街中も田舎も、なるほどゴミは落ちていない。でもまあ、回りに住宅や商店のないバス停などは、煙草の吸い殻が酷い。

厳しく見るとそうなのだが、自虐的すぎるかも知れない。

ゴミの収集も細かい分別で邪魔くさい。が、資源ゴミなどは回収され再利用されるから、資源のない日本にはありがたい制度ではある。希少金属、レアメタルなども、「都市鉱山」という名前をつけられて、家電やスマホ、パソコンなどから取り出される。ちりも積もればで、これが馬鹿にならない資源になるらしい。これはつまり整理整頓、片付けでもある。

欧米や中国などでは、自宅内はともかく、共用の空間ではそういう観念が育っていない。狭い島国、譲り合い、恥という文化があるにしても、日本人は潔癖だ。その一因は「教育」だろう。

私は中学勤務していた。便所掃除に当たった先生が、裸足で(夏です)トイレに入り、率先して便器を磨いているのを見た。「掃除は心を磨く」と言われてきた。もっとも生意気盛り、第二反抗期の14歳くらいになると、お互いに見栄をはって掃除をしなくなる。家庭では手伝いを率先していても、学校の中では「いい子・真面目・堅物」と見られたくない。だから低きに流れる。掃除についていないと、トイレなどはホースで水を、トイレットペーパーが濡れるのも構わずぶっかけてしまう。酷い場合はやり直しもさせるが、毎日、毎日、半時間以上もトイレ掃除につきあうわけにもいかない。と、学校での惨憺たる場面だが、大きな目で見るとクラス掃除も、廊下も階段も、総て児童・生徒がしている。中国や欧米では、掃除をする人を雇っているから、まあ日本の学校の「そうじ」は驚くべき光景なのだ。

自分の使ったところは、外でもきちんと後始末する。この掃除教育。いま世界中から脚光が当たっている。中東の国でも取り入れたらしい。自分の使ったところと書いたが、もちろん直接関係のない共用部分もである。片付けて、きれいにする。自ずと、ものを大切にし、場所を大切にし、総てのものが全員の大切なものだという感覚が起きるのではないか。ただ、こういう日本人の態度は基本的に存在していたとしても、半世紀前から総てそうだったわけではない。ゴミの分別などはここ2、30年のことではないか。

まあ、それにしても、「掃除は心を磨く」のである。ほら、きちんと片付けて掃除すれば「すっきり」するでしょう。邪魔くさい、しんどい、サボりたいという動物本能を、大脳皮質や前頭葉の理性がコントロールして、心のゴミがとれているのです。中国の旅行者のことが話題になるけれど、それで日本のことを慢心しても仕方がない。あなたは「掃除で人間」になるのです。

■筆者プロフィール:石川希理

1947年神戸市生まれ。団塊世代の高齢者。板宿小学校・飛松中学校・星陵高校・神戸学院大学・仏教大学卒です。同窓生いるかな?小説・童話の創作と、善く死ぬために仏教の勉強と瞑想を10年ほどしています。明石市と西脇市の文芸祭りの選者(それぞれ随筆と児童文学)をさせていただいています。孫の保育園への迎えは次世代への奉仕です。時折友人達などとお酒を飲むのが楽しみです。自宅ではほんの時折禁酒(笑)。中学教員から県や市の教育行政職、大学の準教授・非常勤講師などをしてきました。児童文学のアンソロジー単行本数冊。小説の自家版文庫本など。「童話絵本の読み方とか、子どもへの与え方」「自分史の書き方」「人権問題」「瞑想・仏教」などの講演会をしてきました。

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