<直言!日本と世界の未来>米・イラン「戦争回避」に安堵=今こそ日本の出番―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2020年1月12日(日) 7時0分

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新年早々米国とイランがあわや軍事衝突かとのニュースに衝撃を受けたが、その後両国ともに自制的に対応したため、ほっとした。まだまだ油断ならないが「戦争は望んでいない」とのトランプ米大統領の言葉を信じたい。

新年早々米国とイランがあわや軍事衝突かとのニュースに衝撃を受けたが、その後両国ともに自制的に対応したため、ほっとした。まだまだ油断ならないが「戦争は望んでいない」とのトランプ米大統領の言葉を信じたい。

米軍がイラクの首都バグダッドで、イランの精鋭部隊・革命防衛隊の実力者ソレイマニ司令官らを空爆によって殺害。イラン側は直後にミサイルで報復したため制御不能の混乱に陥る恐れもあった。

その後、トランプ大統領がさらなる報復攻撃について触れない抑制的な演説をしたことで、全面的な軍事衝突という最悪の事態は回避された格好だ。トランプ氏はイランの核兵器開発断念を目指し追加の経済制裁の発動を表明。イランが報復に出れば「大規模な反撃をする」と警告。イランは駐イラク米軍に対するミサイル発射に踏み切ったが、米軍への人的被害はなく「敢えてピンポイントを外した」との見方が広がった。

 

それだけに、イランのミサイル攻撃への直接の非難を避けたトランプ氏の演説は、自制的なもので、強硬姿勢を転換したとの印象を与えた。トランプ氏は演説で「イランがその行動を改めない限り、制裁は続く」と強調。イランが制裁に屈し、核合意に代わる包括的なディール(取引)に応じるまで最大の圧力をかけ続けるとも強調。緊張が完全に解消されたわけではなく、全面衝突のリスクは今も存在する。

当初、軍事衝突の懸念から世界の原油価格や金相場が急騰、米国ダウ平均株価や東証株価が大幅に下落した。その後米イランの緊張が緩和したため、反発に転じ、経済人としてほっとした。いずれにせよ「泥沼戦争」につながり、世界経済に大きな打撃を与える軍事衝突だけは回避すべきである。

米国が同盟国や国連への通告なしに実施したソレイマニ司令官殺害に対し、各国から戦争勃発への憂慮が相次いだというが、当然だろう。国際社会には、トランプ政権が18年に核合意を一方的に離脱して以降、「危機をあおっているのは米国だ」との見方も広がっているようだ。トランプ氏はジョンソン英首相らと電話協議を重ね「中東戦略への関与」を呼びかけたというが、欧州や日本など同盟国との信頼構築と協調も課題となろう。

それにしても、ウクライナの旅客機がイラン軍のミサイルによって撃墜され、乗客乗員176人が死亡した事件は衝撃的だ。一般市民が巻き込まれた最大悲劇であり言葉を失った。

こうした中、安倍晋三首相はサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、オマーンの中東3カ国を訪問。安倍首相は中東訪問の目的に関して「地域の緊張緩和と情勢の安定化に重要な役割を果たす3カ国と意見交換し、エネルギーの安定的な確保や船舶の航行の安全確保に向け協力を要請する」と語った。「事態のさらなるエスカレーションを避けるための日本による外交努力の一環」とも強調したという。米国と中東に地歩を築く日本がこういう時こそ仲介役を果たせないだろうか。今こそ安倍晋三首相の出番と考える。

<直言篇108>

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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