高野悠介 2021年1月18日(月) 20時20分
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中国の5Gはこの1年、基地局建設、スマホの生産・販売とも大きく前進した。今や世界の最先端にあるのは間違いない。写真はファーウェイのマスコット。
中国の5Gはこの1年、基地局建設、スマホの生産・販売とも大きく前進した。今や世界の最先端にあるのは間違いない。これまでの経緯を振り返り、2021年、さらにその先はどうなるのだろうか。産業データ分析サイト「前瞻経済学人」の記事を参考に見通してみよう。
■スマホの急速な普及…ユーザー数8.7億人
・中国メーカー、スマホ時代をリード。ただし2016年以降、市場は頭打ちに。
スマホ時代は2007年、米国のiPhone(3G)発売で幕を明けた。日本、中国の発売は2008年だった。それからまだ13年しか経っていない。その間、中国DXの進化は革命的だった。
スマホの急速な普及に貢献したのは、シャオミ(小米)である。2010年に設立、わずか3年後には世界的スマホメーカーとなっていた。オンラインに特化した販売方法で、高性能、低価格の機種を提供、スマホ市場拡大に貢献した。産業データ分析サイト「前瞻経済学人」によれば、2012年以降の携帯全体とスマホの出荷量は、次の通り。
中国では2013年に3Gスマホのピークが来ている。2016年は4Gのピークであり、これは世界市場のピーク14億7300万台とも重なる。販売はここでピークアウトしたが、中国スマホユーザー数は、下記のように拡大を続けた。
2017年…7億1700万人、2018年…7億8300万人、2019年…8億5100万人、
2020年(予想)…8億7400万人
■シェアの変遷…トップ5社で97%
・群雄割拠から5社体制へ。世界シェアトップのサムスン電子も脱落。
シェアの変遷を見て行こう。現在の中国市場は“華米OV+苹果”が支配している。華為(ファーウェイ)、シャオミ、OPPO、VIVO、アップルを指し、この5社で、97%(2020年Q1~Q3)を占める。この比率は毎年上昇した。2015年と2020年Q1~Q3のシェアを比較してみよう。
ファーウェイ 14.6% / 43.2%
シャオミ 15.1% / 11.3%
アップル 13.6% / 8.1%
OPPO 8.2% / 16.7%
VIVO 8.2% / 17.6%
その他 40.3% / 3.1%
その他の中には、世界トップシェアのサムスン電子や、国内のレノボ、酷派(coolpad)魅族(Meiz)などが含まれている。2016年のピークアウトに伴い、これらのブランドは市場からほぼ消えてしまい、群雄割拠から寡占化へ進んだ。この間、最も勢力を伸ばしたののは、ファーウェイだった。
ファーウェイは2018年12月、孟晩舟副会長がカナダで逮捕されたことにより、国民の応援を背に受け、2019年に12ポイントも伸ばした。
■2020年5G順調に発展…基地局68万カ所
・2020年、5Gスマホの販売シェアは50%を突破した。
これらスマホの普及が中国DXの基礎インフラとなった。中国では、電信三大運営商(中国移動、中国電信、中国聯通)が競って基地局を建設した。そして通信機器でこれを支えたのはファーウェイだった。この状況は5Gでも変わっていない。
2019年末、13万カ所だった5G基地局は、防疫体制下の2020年3月に19.8万カ所、5月に26万カ所、2020年末には65万カ所を超えた。2021年以降3年間、80万、110万、85万カ所の建設が見込まれている。
検査機関・中国質量認証中心は2019年4月に、最初の5Gスマホ機種の認定を行った。それが、2019年末には79型に増えた。1年後の2020年12月には、申請中を含め440型となっている。出荷台数とシェアは下記の通り。
2019年7月 7万2000台 0.2%
2019年12月 541万4000台 17.8%
2020年6月 1751万3000台 61.2%
2020年11月 2013万6000台 68.1%
5Gは2020年6月、50%を超えた。
■2021年のシェア争い…ファーウェイ次第?
・ファーウェイはシェアダウン確実、シャオミと栄耀が焦点か。
中国はすでに5G用チップ世界最大の市場となった。「前瞻経済学人」は、中国半導体メーカーの課題について、5G用チップ7nm(ナノメートル)の量産と、6mn、5mnの研究開発を挙げている。
2019年の5Gスマホシェアは、ファーウェイが73.6%を占めた。それが2020年第3四半期には56.6%に下がった。
2020年8月、米国の制裁は新段階に入った。中国の半導体メーカーすら供給を止めてしまい、半導体の調達に苦心しんでいる。11月には、売り上げの3割を占めるサブブランド、栄耀(Honor)を売却せざるを得なかった。同じ11月、ファーウェイは、上海に米国の技術に依存しない半導体工場を建設すると伝えられた。しかし、これはスマホ用7nmではない。日中とも今後についての観測記事は盛んだ。それらによれば、スマホからの撤退も考えられ、少なくともシェアダウンは間違いない。
このスキをついてVIVO、OPPO、シャオミがシェアを拡大している。中でもシャオミは、フラッグシップモデル「小米11」3999元(6万4000円)が好評で、このところ株価も上昇していた。しかし、1月上旬、栄耀が米国クアルコムの供給を受けるというニュースが伝わると、一気に7%急落した。シャオミと栄耀は競合すると見られているのだ。ファーウェイの動向、分離した栄耀、シャオミの争い、アップルの参入が焦点となる。2021年は、シェアが大きく動く乱戦となりそうだ。今後5年間の傾向が、はっきりつかめそうである。
■筆者プロフィール:高野悠介
1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。
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