香港映画「激戦」ダンテ・ラム監督に聞く「困難を乗り越える人間を描きたい」

Record China    2013年10月31日(木) 17時23分

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23日、東京国際映画祭で香港映画「激戦」が上映された。映画祭に合わせて来日したダンテ・ラム監督は「人がいかに困難を乗り越えるか。私の人生観に関連している」と語った。作品写真:(c)Bona Entertainment Company Limited

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2013年10月23日、第26回東京国際映画祭(10月17〜25日)ワールド・フォーカス部門で、香港映画「激戦」が上映された。総合格闘技(MMA)をテーマに、心に傷を負った男2人の奮闘と再起を描く。映画祭に合わせて来日したダンテ・ラム(林超賢)監督は「人がいかに困難を乗り越えるか。私の人生観に関連している」と語った。

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物語の舞台はマカオ。かつてチャンピオンとして無敵を誇ったファイ(ニック・チョン=張家輝)は、落ちぶれて借金取りに追われる日々を送る。富豪の息子チー(エディ・ポン=彭于晏)は、父の会社が倒産。格闘技で賞金を稼ぐため、ファイにコーチを頼み込む。やがて2人はタッグを組み、一発逆転の大勝負に打って出る。

ニック・チョン、エディ・ポンが厳しいトレーニングを経て、見事な肉体とアクションを見せる。「ビースト・ストーカー 証人」(08)、「コンシェンス 裏切りの炎」(10)、「密告・者」(10)、「ブラッド・ウェポン」(12)など骨太な物語が得意な監督が、その手腕をいかんなく発揮した作品だ。

──主演のニック・チョンは、監督の「ビースト・ストーカー 証人」で、見違えるような演技を見せた。何が転機になったと思うか。

彼とは2001年に知り合い、コメディー映画(「走投有路」)を撮った。とても楽しかったが、あんな厳粛な芝居で喜劇に出る俳優は初めてで、とても驚いた。その後もたびたびやり取りがあり、「証人」に至った。

彼はどこかでチャンスを待っていたのではないか。しっかりした演技、それまでと違う自分を見せたかったのでは。自分の殻を打ち破り、コメディー専門のイメージを変えたかったのだろう。「証人」では、ためにためたものを一気に爆発させたようだった。「証人」が転機に見えるのは、そのせいかもしれない。

──以後続けて起用している理由は。

彼と私は物の考え方がよく似ている。長い付き合いで、監督と俳優として互いを信じている。文字や言葉で表せない信頼だ。だから私は「彼にはこれができるはず」と考えるだけでいい。逆に彼は私の作品に出ることで、それまでと違う効果を期待している。私にとって彼も、想像以上のことを見せてくれる俳優だ。だから起用を続けている。

──監督の作品は男と男の物語だったり、失敗を背負った人間が主人公であることが多い。なぜか。

私の人生観に関連している。人は誰でも失敗や困難、問題を経験する。しかもそれらは常に身の回りで起きる。人生で前に進むためには、困難をいかに克服するかが大切だ。人が困難を打ち破る状況が大好きなんだ。だから結果的に物語がそうなるのだと思う。

──脚本家のジャック・ンとは、どんな形で物語を作っていくのか。

だいたい私がアイデアを思いつき、彼に話して書いてもらうことが多い。彼は学校を出た直後から私と一緒に働いている。非常に重要なパートナーだ。感覚や情景などさまざまなことを話し合う。「ブラッド・ウェポン」(12)以降は私も書きたくなり、自分で書くことも増えた。

──監督の作品は社会派の側面を持ちつつ、娯楽作品として楽しめる。香港映画界を取り巻く環境は変わり続けているが、「こういう映画は撮りたくない」と考えることはあるか。

テーマは自分で考えるものだ。人から与えられたテーマは撮れない。あくまで自分が思いついた話で映画を作る。どんな方向性であれ、人から押し付けられたものは撮れない。「中国でも、香港でも、日本でも売りたい」と考えて撮るのでは、結局混乱するだけだ。中国なら中国だけ考えればいい。次の(香港で起きた警官殺害事件が題材の)「魔警(原題)」は、中国当局の検閲をパスしないかもしれないが、まずは作ってみる。通らないなら仕方がない。

市場を先に考えるのではなく、自分の感性に従い、冷静に物語を作っている。あくまで自分が何を見せたいかが重要だ。商業的に撮るのもいいし、中国に合わせて撮るのもいいが、自分の発想でなければ意味がない。いい映画に地域性はなく、どこの国の人が見ても面白いものだ。

──監督自身が好きな映画監督や作品は。

リンゴ・ラム(林嶺東)監督の作品。好きでよく見てきた。中国の検閲制度がなければ、僕の方がもっと激しい作品を撮るかもしれないね(笑)。(文/遠海安)

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