人民網日本語版 2020年3月9日(月) 15時50分
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中国の上層部で再三手配が行われ、さらには資本市場で熱心な投資が行われるなど、このところ最も世論から注目されている概念の一つは「新インフラ整備」といっていいだろう。
中国の上層部で再三手配が行われ、さらには資本市場で熱心な投資が行われるなど、このところ最も世論から注目されている概念の一つは「新インフラ整備」といっていいだろう。アナリストはおしなべて、経済の下振れリスクの相殺や経済モデル転換・高度化の推進などの面で新インフラ整備が重要な役割を果たすことを期待している。
新インフラ整備とは何か?なぜ政府から極めて重視されているのか?
先ごろ、中共中央政治局常務委員会が会議を開き、現在の新型コロナウイルス感染による肺炎予防・抑制と経済・社会の安定運営のための重点活動について検討した。会議では、公共衛生サービスや緊急物資保障分野にさらに力を入れ、5Gネットワークやデータセンターなど新型インフラ建設を加速することが強調された。
これについて中泰証券アナリストの馮勝氏は、「このところ、中国の上層部は新インフラ整備を非常に重視しており、何度も会議を開いて手配を行っている。新インフラ整備を重視するのは、新型肺炎が中国経済に比較的大きな影響を与えている中、新インフラ整備の加速は成長と雇用の安定に役立つからというところが大きい」との見方を示した。
馮勝氏は、「従来のインフラ整備とは異なり、新インフラ整備は主に科学技術に立脚している。従来のインフラ整備は主に鉄道や道路、橋、水利工事など大規模建設を指しているが、新インフラ整備というのは科学技術に立脚したインフラ建設で、主に5G基地局建設や超高圧送電線、都市間高速鉄道や都市鉄道交通、新エネルギー車充電ポール、ビッグデータセンター、人工知能(AI)、インダストリアルインターネットの七大分野が含まれる」と指摘している。
新インフラ整備はどこが「新しい」のか?
恒大研究院院長の任沢平氏は、「『新インフラ整備』には時代が色濃く反映されている。20年前の中国経済の『新インフラ整備』が鉄道や道路、橋だとすれば、今後20年に中国の経済・社会の繁栄と発展を支える『新インフラ整備』は5GやAI、データセンター、インターネットなど科学技術イノベーション分野のインフラと、教育や医療、社会保険など民生消費高度化分野のインフラになるだろう」と指摘した。
「従来のインフラ整備」とは一部地域、特に人口の流出している地域においてはすでに過剰となっており、さらに投資すれば民衆を酷使し、財貨を浪費することになる。当然ながら、人口が流入する都市圏や都市群では、長期的にみれば道路や橋の建設の余地は依然として大きく、そうしなければ経済・社会の発展を制約し、交通渋滞や環境汚染などの深刻な問題を引き起こしてしまう。一方「新インフラ整備」は今後の発展を考えた際に不足する点だ。上記の分野は短期的な有効需求の刺激と長期的な有効供給の増加の両面に配慮した最適な結合点であり、中国経済が「中所得国の罠」を回避し、質の高い発展と革新的発展へと邁進するための重要な国家的プロジェクトとなる。「新インフラ整備」は新型コロナウイルス感染拡大と経済の下振れ圧力に対応するための有効な政策手段であるだけでなく、さらには中米貿易摩擦を背景とした大国間競争と改革・革新の切り札であり、中華民族の偉大な復興という国運をかけた戦いにおいて勝敗の決め手となる。
新インフラ整備をすれば「成長安定」の重任を担えるのか?
注意すべきは、現在中国の新インフラ整備規模はまだ小さすぎ、新インフラ整備への投資増加だけでは、経済に対し大きな牽引的役割は起こすことは難しく、新インフラ整備と従来のインフラ整備への投資を合理的に統一計画すべきだと注意を喚起するアナリストもいる点だ。国泰君安研究所チーフグローバルエコノミストの花長春氏は、「中国の新インフラ整備は、発展の将来性はあるが、現在の規模は依然として小さすぎ、成長安定効果は小さいと予想される」と指摘する。
花氏の分析によると、中国政府のインフラ整備投資のうち、現在はまだ新インフラ整備投資に関する統計はないが、PPP(Public Private Partnership)として登録されている細分化プロジェクトからうかがい知ることとは可能だという。現在進行中のPPPプロジェクトの総投資規模はおよそ17兆6千億元(1元は約15.24円)で、そのうち従来のインフラ整備が主要部分を占める。一方、「新インフラ整備」プロジェクトをすべて計算に入れても、その割合は15%未満で、規模は3兆元に及ばず、現在の中国の経済規模から見てその牽引効果は限定的だ。中国は「従来のインフラ整備+新インフラ整備」という両輪駆動の形で、経済回復とモデル転換・高度化を推進していくと予想される。
これについて海通証券チーフエコノミストの姜超亦氏も同様の見方を示している。姜超氏はさらに一歩進んで、「新型インフラは従来のインフラ整備の拡張というところが大きく、成長安定とイノベーション促進という二重の任務に配慮している。AIやインダストリアルインターネット、モノのインターネット(IoT)など新型インフラ建設は、通信やコンピューター、エレクトロニクスなど関連業界の製品需要を牽引するだろう。こうした新型インフラは製造業のモデル転換と高度化のカギであり、同時により多くの新規需要を喚起することもできる」と指摘する。
証券会社は七大新インフラ整備をどう見ているか?
5G
【東方証券】国内の5G構築の進度は市場の予想を上回ることが見込まれる。現在、三大通信事業者は年間で基地局を55万基建設する計画だが、年間の建設進度は計画より早まる可能性がある。
超高圧送電線
【銀河証券】2018年9月に国家エネルギー局が通達した「一部送変電重点プロジェクト計画建設作業の推進加速に関する通知」によると、計12本の超高圧工事が計画されている。1本の超高圧送電線で約200億元の投資が必要として推算すると、年内に新たに許認可される7本の超高圧送電線は約1500億元の市場成長余地をもたらすかもしれない。
都市鉄道交通
【中銀国際】2019年末、全国計40都市で都市間鉄道路線が開通し、営業が開始された距離は累計6730.27キロに達した。現在、中国マクロ経済の下振れ圧力が強まっている中で、都市間鉄道インフラ整備投資は経済安定の利器の一つであり、今後も力を入れることが見込まれる。2020年の年間営業開始距離は1千キロを突破することが期待される。
EV用充電ポール
【新時代証券】新エネルギー車の保有台数は2千万台で、車両と充電ポールの比率を1対1として推計すると、必要となる充電ポール数は約1880万基という計算になる。交流ポールと直流ポールの価格差が大きいため、充電ポールの平均価格を1台あたり1万5千元として計算すると、対応する充電設備市場の余地は約2800億元となる。車両1台あたりの年間電気消費量を2千kwhとして推算すると、充電・サービス市場は約400億元規模となるだろう。
ビッグデータセンター
【平安証券】データセンターは明らかにトラフィック急増の恩恵を受けており、業界の景気は好調だ。地域別でみると、北京・上海・深センは政策的な制限があるため成長の余地に限りがあるが、周辺の省・直轄市のデータセンター新規設立や拡張に対する投資ニーズは明らかに高まっている。また、環境が適し、電気代が安く、土地資源が十分にある西北部や西南部などでは、データセンター数の面でも比較的大きな成長のポテンシャルがある。
AI
【新時代証券】AIは技術・ビジネスシーンでの応用ニーズが高まっており、産業規模が引き続き成長するだろう。産業研究院の展望予測によると、2020年の中国のAI市場規模は45%成長し、世界市場規模の成長レベルをはるかに上回ることが予想される。
インダストリアルインターネット
【平安証券】インダストリアルインターネットは基幹ネットワーク、プラットフォーム、安全保障体系で構成され、そのうちプラットフォームが核心となる。「5G+インダストリアルインターネット」が投資の重点になると予想される。
【平安証券アナリストの閻磊氏】中長期的に見て、中国企業が「クラウド化・デジタル化する趨勢を押しとどめることはできず、今回の感染拡大を経て、その進度はさらに加速するだろう。5Gやインダストリアルインターネット、クラウドコンピューティングはデジタル経済の主要インフラであり、技術と資金が許す範囲内で、適度に先行投資をすることは可能だ。インフラを通じて応用の繁栄を牽引し、エコシステムが健全化した後に引き続きインフラ建設への投資を牽引し、良性のクローズドループを作り上げる。特に現在の大国による科学技術競争という背景のもとで、新インフラ整備分野に力を入れることは、先進国との発展格差を縮めるうえでプラスになる」としている。(編集AK)
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