〈一帯一路実践談9〉1995年ついに発見!国宝中の国宝「五星」錦

小島康誉    2020年3月21日(土) 16時30分

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1995年10月、大発見があった。調査開始7年後のことである。遺跡北西部へ向かっていた隊員が露出した棺の一部を発見。写真は王族墓地発掘現場、中央が筆者。

1982年以来「一帯一路」の重要地帯である新疆ウイグル自治区を150回以上訪問し、実践してきた世界的文化遺産保護研究などを連載中。キジル千仏洞修復保存協力につづき、1988年「日中共同ニヤ遺跡学術調査」を開始。多くの研究機関の研究者を組織し、着々と実績を上げた。日中協力の結果である。

着々と実績を上げたと書けば、簡単と思われるだろうが、大沙漠での調査は簡単ではない。周辺を含む東西約7km・南北約25kmという広大な遺跡範囲の分布調査。徒歩やラクダでひとつひとつ探した遺構250余をGPS登録。次に撮影と測量。それらの実績により1994年、国家文物局より「発掘許可書」をえた。中国全土で外国人第1号である。極めて異例のことと言われている。同年秋の調査より発掘を開始した。

1995年10月、大発見があった。調査開始7年後のことである。遺跡北西部へ向かっていた隊員が露出した棺の一部を発見。これまでもいくつもの墓地は発見していたが、それらとは明らかに異なっていた。中国側学術隊長の王炳華新疆文物考古研究所長の指揮のもと測量と発掘を行った。開棺の日が来た。わずかに開いた隙間から覗き込んだ于志勇隊員が叫んだ。「わぁすごい、王 侯 合 昏 千 秋 萬 歳…まだある」と文字を読み上げた。日中全員が「万歳!」と拳を突き上げた。別の棺には「五星出東方利中国」錦が副葬されていた。「精絶国」王族墓地であり、男女合葬ミイラなど多数を検出した。

(「五星出東方利中国」錦)

その夜のベースキャンプは異常な興奮に包まれた。中国側隊長の岳峰新疆文化庁文物処長につづいて乾杯を促された日本側隊長の筆者は「1988年、日中共同ニヤ調査を開始して以来、今日が最良の日だ、日中双方全員の共同努力のおかげだ、乾杯!」と普段は飲まない白酒を何杯も一気飲みした。

「五星出東方利中国」錦発見は中央へ速報され、「特別」評価を受けた。11月、現地調査につづき新疆文物考古研究所で「開棺調査」を実施。国家文物局から急遽派遣された「錦」専門家も参加した。12月には北京で、王族墓地の発見・発掘に関する記者発表が国家文物局と新疆文化庁により行われ、張局長・吾甫尓新疆政府副主席・王新疆文化庁書記・岳峰・筆者らが参加した。人民日報・CCTV・日経・NHKなど内外で大きく報道された。

(重大発見と報じる「人民日報」など)

これらは「1995年中国十大考古新発見」「20世紀中国考古大発見100」に選ばれた。2002年1月、「五星出東方利中国」錦は国家文物局により中国の膨大な全文物から「出国展覧禁止文物」64点のひとつに選出された。「国宝中の国宝になった」と言われている。

■筆者プロフィール:小島康誉

1942年名古屋市生まれ。佛教大学卒。浄土宗僧侶、日中理解実践家。66年宝石専門店を起業し上場企業に育て上げ、96年創業30周年を機に退任。1982年より中国新疆を150回以上訪問し、世界的文化遺産保護研究・人材育成など国際協力を多数実践。佛教大学客員教授を歴任し現在、佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表、新疆ウイグル自治区政府文化顧問。編著『新疆世界文化遺産図鑑』『中国新疆36年国際協力実録』など。日本「外務大臣表彰」・中国文化部「文化交流貢献賞」・中国人民対外友好協会「人民友好使者」ほか受賞多数。

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