〈一帯一路実践談10〉2014年残念!ニヤ遺跡「世界遺産」次段階へ

小島康誉    2020年3月28日(土) 16時0分

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キジル千仏洞修復保存協力につづき、1988年「日中共同ニヤ遺跡学術調査」を開始。日中両国の専門家多数の尽力をえた。写真はキジル千仏洞など「世界遺産」決定を宣言する議長。

一帯一路」の重要地帯である新疆ウイグル自治区で実践してきた世界的文化遺産保護研究などを連載中。キジル千仏洞修復保存協力につづき、1988年「日中共同ニヤ遺跡学術調査」を開始。日中両国の専門家多数の尽力をえた。

その専門分野は文化財管理・国際協力学・考古学・仏教学・西域文献学・東西交渉史・建築学・地理地質学・木質科学・仏教美術史・染織学・撮影・測量などである。1997年まで9次にわたる現地調査を敢行し、多大な成果をあげた。専門的で恐縮であるが…

●仏塔・寺院・墓地・住居・生産工房・城壁状土塁・家畜小屋・果樹園・貯水池・並木など約250カ所の遺構を発見し、GPSで登録し、遺構分布図を作成した。

●大型GPSを活用し、周辺地形図を作成、遺跡全容を明らかにした。

●遺跡北40kmに約3000年前の遺構遺物を発見し、生活拠点の南下を明らかにした。

●関連都市の住居を測量調査し、遺跡住居構造を明らかにした。

●いくつかの住居群や生産工房を測量調査発掘し、生活状況や都市構造を明らかにした。

●寺院を発掘調査し、壁画などを検出し、西域仏教解明の手がかりをえた。

●王族の墓地を発見発掘し、国宝級遺物多数を検出し、精絶国が当時の中原王朝と政治経済文化面で密接な関係があったことを明らかにした。

●住居の柱材などをC14法により測定し、遺跡年代確定の大きな手がかりをえた。

●カローシュティー・漢文木簡・化石をふくむ大量の貴重遺物を検出し、新しい知見をえた。

●カローシュティー・漢文木簡を解読し、新しい知見をえた。

●これらの結果、西域36国「精絶国」の全容を明らかにした。

(佛教大学での国際シンポジウム)

これら成果は報告書や国際シンポジウムなどで発表し続けている。報告書A4判全3巻は日中両文に英文サマリー、厚さ12cm・重さ7kgにも。佛教大学・ウルムチ環球賓館・北京大学での国際シンポでは熱心な発表と討議が行われた。

2014年、キジル千仏洞は「本連載6」で記したように世界遺産となったが、ニヤ遺跡は不運にも次段階へ。2006年、国家文物局などはトルファンで「シルクロード」申請予備会議を開催。中国の他にカザフスタン・キルギス・タジキスタン・ウズベキスタンなども参加し、国をまたぐ共同申請活動が開始された。2007年、国家文物局が6省区48カ所の申請を決定。新疆ではキジル千仏洞・ニヤ遺跡はじめ楼蘭遺跡など12遺跡。

(「世界遺産」へ保護柵など保存工事すすむニヤ遺跡の一角)

2011年、タジキスタン・ウズベキスタン側の準備遅れで申請延期と分離申請を決定。規模も縮小、天山山脈周辺に絞られ、ニヤ遺跡や楼蘭などは次段階へ繰り越された。「一帯一路」歴史交流実例である「ニヤ遺跡」の追加登録に向け、各種準備が行われている。なお筆者は2015年、広大な遺跡の保護強化のため巡視用小型沙漠車“POLARIS”を寄贈した。

■筆者プロフィール:小島康誉

1942年名古屋市生まれ。佛教大学卒。浄土宗僧侶、日中理解実践家。66年宝石専門店を起業し上場企業に育て上げ、96年創業30周年を機に退任。1982年より中国新疆を150回以上訪問し、世界的文化遺産保護研究・人材育成など国際協力を多数実践。佛教大学客員教授を歴任し現在、佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表、新疆ウイグル自治区政府文化顧問。編著『新疆世界文化遺産図鑑』『中国新疆36年国際協力実録』など。日本「外務大臣表彰」・中国文化部「文化交流貢献賞」・中国人民対外友好協会「人民友好使者」ほか受賞多数。

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