<直言!日本と世界の未来>米中は、人類共通の敵「新型コロナウイリス」退治へ連携すべきだ―立石信雄

立石信雄    2020年3月29日(日) 5時20分

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新型コロナウイルスの蔓延は日本を含む世界中に広がり、鬱陶しい日々が続いている。こうした中、日米欧と中国など主要20カ国・地域(G20)の首脳によるテレビ会議は心強い結果をもたらし、大いに励まされた。

新型コロナウイルスの蔓延は日本を含む世界中に広がり、鬱陶しい日々が続いている。こうした中、日米欧と中国など主要20カ国・地域(G20)の首脳によるテレビ会議は心強い結果をもたらし、大いに励まされた。

G20首脳は「共通の脅威と闘う」との共同声明を発表し、治療薬の開発資金を協調して増額する一方、総額550兆円超の巨額の経済対策で景気への打撃を抑える方針でも一致したという。その直前に開かれた先進国7カ国首脳電話会議では、米国と以外の国との温度差が露わになり共同声明を発表できなかっただけに今回G20の成果は際立ったと思う。

国際社会をリードすべき米国の感染者は中国を上回って最多となり、世界経済が一段と冷え込む恐れがある。危機克服には幅広い協力が欠かせない。米国に次ぐ経済大国の中国も含め世界の主要国が足並みをそろえたことは大きな意義があると考える。

もともとG20首脳会議は2008年のリーマン・ショック時に米国の呼びかけで始まった。会議後に中国が大規模な財政出動に踏み切り、米中が連携して危機を乗り切った実績がある。

ところが自国ファースト政策を掲げるトランプ米大統領が2016年に就任して中国との貿易戦争を展開。政治体制や経済力の異なる国が集まっているG20も空洞化が進んだ。

 

米中の不信は根深く、今回のG20会議前にトランプ大統領は一時、中国人排斥を助長しかねない「中国ウイルス」との呼称を使用した。中国は反発し外務省報道官は中国に感染症を持ち込んだのは米軍との陰謀論に言及した。大統領選を控えたトランプ氏は、景気悪化と株価急落に危機感を募らせ、矛先を中国に向けたのかもしれない。中国も自国の責任を追及する国際世論が形成されるのを警戒したとみられる。

急速な感染拡大により世界各国とも国民の不安が高まっている。排外的な強硬姿勢を示せば国内向けのアピールになり国民の支持が浮揚するとの思惑もあるようだ。このような強硬姿勢は世界の分断を煽り、世界経済の崩壊を導きかねない危険な行為である。

米中は世界をリードする大国としてコロナ危機に共に立ち向かい、国際秩序を安定させる責任がある。トランプ氏はG20会議後、中国の習近平国家主席と個別に電話協議し、連携を確認したという。G20声明を踏まえ、関係の立て直しを図ることが急務だ。経済危機をしのぐというのなら、互いに掛け合った高関税を撤廃すべきだ。

 

中国の孔鉉佑・駐日大使の日本記者クラブでの記者会見(3月27日)内容も心強いものだった。「中国本土では既に蔓延を食い止め、経済活動を整然と再開、正常化を図っている」と指摘したという。新型コロナウイリス感染が欧州各国や米国など世界全体に感染が拡大しているため、「ニーズのある国・地域に専門家を派遣し、感染症対策の交流を進めている」と全面的に協力したいとの考えを示した。

日本の自治体や企業が当初中国にマスクなどを送った支援にも触れ「両国の国民感情は好転し、絆が強くなった」と謝意を示した。その上で、中国政府による様々な対日支援に言及。日本で品不足が続くマスクに関し「中国メーカーが生産能力を回復させ、日本に輸出するよう調整を急いでいる」と明かしたという。

G20会議では安倍晋三首相も協調の重要性を主張したとされる。米中に「人類共通の敵」ウイリス退治に最優先で取り組むよう粘り強く働きかけていく必要があると考える。

<直言篇115>

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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